スポーツバー物語⑧-スポーツバーから見たサッカーW杯(日本戦)-
前回は〝優しいフーリガン〟のお話をお伝えしました。今回はいよいよ日本戦です。とにかく、えらいこっちゃ!でした。
サポーターの特徴を分析
いよいよ、待ちに待った日本戦です。
チャレンジカップなどの前哨戦を経験しているので、サポーター特性はすでに分析済みです。
・試合前はお酒は飲まない
・試合中も飲まない
・試合が終わったら「飲みに行こう」と去っ ていく
です。
なので、関西スポーツバー協会各店が協議して、「統一入場料ワンドリンク制」にしました。
消防法で入場者上限数も決まっているので、日本戦は、完全予約制です。
机と椅子も要りません、全て撤去して全員立ち見です。
テレビ局も毎試合取材に来ました。
狭い店内に常に2〜3局入り、熱狂の様子を撮影していくのでした。
「集団レントゲン撮影状態」とは
試合中はオンファイアー、凄まじい雰囲気でした。
何十人というサポーターが代表ユニフォームを纏い、応援に合わせて拳を振り上げず〜っと縦に揺れます。
得点しようものなら、耳をつんざくほどの歓喜!誰それかまわず抱き合います。
逆に失点しようものなら、この世のものとは思えないようなおぞましいため息が共鳴。
日常とは程遠いカオスが90分間、世界を支配していました。
私は、日本代表選手が相手陣内へドリブルで攻め上がり、シュートへ繋がる瞬間がたまらなく好きでした。
今まで狂喜乱舞していた全員の息が止まる瞬間「集団レントゲン撮影状態」は、スポーツ独特の「血が激る」一瞬を醸し出すのでした。
汗まみれになって誰かを応援する
私は思いました、(こんなイベントが毎週あればいいのに)と。
もちろん、お店の売上もあります。
でも、普段の生活で知らない人とハイタッチをしたり、声が出るほど落胆したり、汗まみれになって誰かを応援することなんか、そうそうあることではありません。
お店を出たらまたいつもの日常ですが、お客様の入店前と入店後の表情は明らかに違っていました。
日本代表が勝っても負けても、目は輝き、晴れ晴れとした表情でした。
お店を出られる際に、目に涙を溜めて「楽しかった、ありがとう」と握手を求められることもありました。
最初は困惑していましたが、「この人の人生に少し影響を与えることができた」と考えたら嫌な気分にはなりませんでした。
嵐は過ぎ去った、その時
大会は無事終了し、嵐のような日々は過ぎ去りました。
実は、日本代表の試合内容、全く覚えていません。
いつものフーリガンもいつの間にかいなくなっていました。
日本代表と共にW杯を戦い抜いた疲労と、一気に空気の抜けたような身体をボーッと休ませている時、ふと思ったんです。
「これが、これがスポーツの力か」
今回は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。エピソードはまだまだ書き足らないほどたくさんありました。でもそのほとんどが、うまく文章では表現できないような経験ばかりでした。なのでひとまずサッカーは終わりにさせていただいて、次回は「プロ野球編」へ行きたいと思います。ご期待ください!