「スポーツバー物語」④ー仲間そして9.11ー
2001年9月1日、いよいよ「KEITA’S BAR SPORTS」はオープンしました。バーのキャッチコピーは、「スポーツの感動を多くの人と共有し、コミュニケーションを広げよう!」でしたが、オープン当初〝多くの人〟は集まりませんでした。
人生そんなに甘くはないよ
人生には、自分がイメージしていたこととは違ったことが起こりうることがあります。
お店を開くまではワクワクの毎日。
(毎日満席で人手が足らなかったらどうしよう)(メディアの取材なんかもくるかな)なんて妄想します。
しかし、人生そんなに甘いもんじゃありません。
よく考えれば、簡単にお客様がお店を見つけて飲みに行こうとはなりません。
お客様がいない時間は、アルバイトも暇を持て余し、ビラ配りの毎日です。
そのうち、オープン当初のワクワクドキドキが、不安と焦りに変わります。
(このままお店が潰れたらどうしよう)
(家賃だけを払い続けなければならないんだろうか)そんな時に話を聞いてくれたのは、他ならぬ〝ご近所さん〟でした。
近隣のバーの店長さんたちが挨拶代わりに飲みにきてくれました。
「おお!スポーツバーってこんな感じなんですね。」から専門的な「お酒はキリン系ですね。」「京橋はこんなことに気をつけたほうがいいですよ。」までいろいろアドバイスをいただきました。
そのうち、お互い行き来し合うようになり、お客さまも一緒に連れてきてくれたり、お互いのお店のフライヤー(チラシ)を置きあったりして交流を深めていきました。
「大変だっ!テレビつけてっ!」
ただ、正直、一般のお客様、いわゆる〝スポーツを観ながらお酒を飲んで盛り上がる〟お客様は少なく、私の不安は一向に減りませんでした。
そんな時です、初めてお店が満席になる出来事が起こりました。
2001年9月11日、オープンして11日目のことです。
正確には12日でしたが、他のお店のマスターが「見てる?」と飛び込んできました。
私は何のことかわからず、「どうしました?」と聞き返しました。
「テレビ!テレビ!」と言うので、すぐにチャンネルを地上波に合わせました。
そこには、アメリカの貿易センタービルがモクモクと煙を上げる映像と、慌ただしいレポートが飛び込んできました。
BS、CSとどのチャンネルも同じニュースです。
そう、アメリカ同時多発テロが起きた瞬間でした。
「大画面!大画面!」と、メインの大画面にCNNのニュース、モニターにはBSや日本の地上波を同時に流しました。
映画のワンシーンを観ているよう
そのうち、2人、3人と近所のお店のマスターたちが集まってきて、それぞれが、「ケイタさんのお店で大画面!」と、従業員や知り合いを呼び寄せ、あっという間に満席になりました。
時間を忘れて、あ〜だこ〜だ言っているうちに、空も白けてきました。
OBP(京橋の大阪ビジネスパーク)にもカラスが飛び始めます。
その時、何とリアルタイムで、2機目がビルに激突!さらに、夜もすっかり明けた頃、ツインビルの1棟が崩壊しました。
大画面で映し出された映画のワンシーンのような映像と、一瞬の静寂後のどよめきを今でも忘れません。
それほどショッキングな出来事でした。
こうして、スポーツではなく、社会的な出来事でお店は初めて満席になりました。
皮肉にも、スポーツ以外で「LIVEの共有がお客様の一体感を生んだ」体験することになりました。
ただ私の心には、引き続き
「スポーツの感動を多くの人と共有し、コミュニケーションを広げよう!」を実現できるのか不安が残りました。
今回はここまでです。
これからお店をオープンする予定のある方にアドバイスです。オープンするまでに労力を使いすぎると、そこからのモチベーションが持ちません。これからお店をオープンする人は、「オープンはスタートに過ぎない」と言うことを頭に入れておいてほしいと思います。さて、ケイタズバーはいつになったらスポーツで満席になるのでしょうか?次回をお楽しみに!