見出し画像

【サクラキミワタシ】 Hitの理由分析レポート 〜 YouTube 今週の1曲 [No.13 - 24/12-2]

こんにちは!
今週はYouTube MVの分析回です。

今回は紅白出場も決まり勢いに乗るtuki.の「サクラキミワタシ」を分析していきます。


本楽曲を分析する理由

「晩餐歌」で一躍有名になったtuki.
そんな彼女の楽曲の中でもう一つ大台の1000万再生を超えている楽曲がこの「サクラキミワタシ」です。
さらに本楽曲はSpotify再生数が約2000万回に到達しており、YouTubeのヒットだけに留まらない大成功を収めています。

一体その成功の秘訣はどこにあったのか、その理由を掘り下げていきたいと思います。

バズの拡大経路

(1)視聴者層の仮説

まずは分析の軸を探るべく、その視聴者層から把握していきましょう。YouTubeのコメント欄から推測すると大きく分けて二つ。

メイン:今甘酸っぱい青春を送っている中高生

サブ:その恋愛模様を見て共感や想い出に浸る大人 (20代〜かなり上の年代まで幅広い)

基本的に上記2つの層に対し「恋愛の共感・感情移入」を得られることが人気の核となっています。
※メインターゲットが中高生であることは、コメント文面と公式Xフォロワープロフィールからの推測です。

再生数の増加順としては、リリースから1ヶ月後の2月初旬でYouTube再生数200万回を達成し、そこから現在まで右肩上がりに伸びています。

アップ日から1ヶ月以内の再生数の推移

また、着目したいのはSpotifyでの再生数。
リリースから2ヶ月後の3月初旬まではYouTubeとほぼ同じ数値感で伸び、それ以降はYouTubeを追い越すスピードで伸びています。
基本的にSpotifyの方かYouTubeと比べリピート再生をされ易い傾向があるため、YouTubeで出会いSpotifyに飛んだユーザーなどが(その順序は不同だが)曲のファンになりSpotifyで繰り返し再生した、と推察されます。

つまりバズの拡大経路として、楽曲のメッセージ (恋愛の共感) を伝えるYouTube上での演出が秀逸だったからYouTube再生数およびストリーミングサービスに波及したとも言えるし、ストリーミングサービスで刺さった音楽性・メッセージ性が、YouTubeに帰ってきた時に上手く表現されていたからYouTubeでも伸び続けた、という両側面があると考えられそうです。

いずれにせよYouTubeでの仕掛けが秀逸だったことに変わりはなく、そのコアはメッセージ性と演出にあると言えます。
というわけで、今回はそこを中心に分析していきたいと思います。


サムネイル分析

今回はサムネイルを3つの視点から分析いたします。

  1. 絵柄や世界観というフィルター

  2. 何が描かれている?という具体要素

  3. 視認性の担保

これらが重要であることは視聴者がサムネイルをパッとみた時に認識する順番で考えるとわかりやすいです。

(1)絵柄と世界観(スクリーニング)

平均1秒以下でサムネイルを認識し視聴の有無を決めていると言われている状況において、細かい情報は抜きにして「どういう系の動画か」という直感的な印象は非常に重要になります。

例えばMVサムネイルで例えるなら、

・実写映像 → 「王道のJPOPアーティスト?」
・萌えイラスト → 「VTuberとかそういう二次元系かな?」
・綺麗な風景画 → 「作業用BGMや垂れ流し系のコンテンツかな?」

などなど、人によって多少捉え方は異なるかもしれませんが、絵柄を初めとしたぱっと見で与える印象がまず最初に視聴者をふるいにかける部分であることは間違いありません。
これを筆者は「フィルター」と呼んでいます。

そして「サクラキミワタシ」のフィルターはリアルアニメ調です。

このリアルアニメ調という選択には2つのポジティブな効果があったと考えます。

・メインターゲットである中高生にリーチしやすい
・リアル調とのバランスが上の年齢層にも受け入れられ、マスが広がった

例えば先日公開されたMARO17のCMではMAPPA制作のアニメが使われていたり

大成建設のCMでは新海誠監督率いるコミックス・ウェーブ・フィルム制作のアニメが使われている事はご承知の通りかと思いますが、

あえて誤解を恐れずに表現するなら、リアルテイストのアニメーションは昨今の若者にとって物語表現を嗜む1つとして浸透していると言えます。
これらの事から、質の高い『リアルテイストアニメ調キャラ』がサムネイルの中央に鎮座する様子は「質の高い物語表現の予感」をさせるよう機能していたと言えます。

例えば萌えイラスト寄りになり過ぎてしまうと人を選ぶことになってしまいますので「フィルター」としても良い役割だったと言えます。
逆にいうとアニメ調テイストで物語を楽しむ文化に親しみのある層の中では最大再生数を狙えるようなサムネだったといえます。

(2)何が描かれている?(期待感)

(1)では反応する視聴者をスクリーニングした方法について分析しましたが、続いてはサムネから本編動画に対してどんな期待感を付与させていたかの分析です。
それでは画像に写っている要素をまずは整理しましょう。

・制服姿の女の子
・桜吹雪
・幸せや切なさ、様々な捉え方ができる笑顔

この3要素があることで「卒業、別れ、恋」などこの曲の大まかなテーマを瞬時に推測でき、それを期待する視聴者がこのサムネイルをクリックすることになります。
※逆を言えば、この時点でそういったテーマに興味のない層は弾かれるということです。

これらの映像が見れる!という期待感の感情付与が動画の視聴維持率UPにつながっていたと言えます。

(3)視認性の担保

②の要素をより確実に伝える工夫がここになります。

・淡い色の空背景 (によって女の子が目立つ)
・女の子以外に余計なオブジェクトがない

これにより「サクラキミワタシ」の表現する世界観を伝えるための無駄が削ぎ落とされ、本来視聴するはずだった人を取りこぼすというマイナスを減らすことができます。


つまり”恋愛の共感”という「サクラキミワタシ」の一番核となる部分を伝えたいサムネイルにおいて、

・リアルアニメ調というメインターゲットの学生 + マスに受け入れられやすいフィルター
・「卒業・恋愛」といったテーマを端的に伝える要素
・それらを見逃しにくくする無駄のない構図

この3つの選択が狙うターゲットの正確性とクリック率を高める有効な仕掛けになっていたと考えます。

【補足】
バズの拡大経路とクリック率の関係性について少し深掘りすると、前章で解説したように「サクラキミワタシ」のメインターゲットは中高生です。

なのでまずはこの「卒業、別れ、恋」というわかりやすさを最優先にすることで、リリース時期 (卒業シーズン直前) と相まって中高生目線で「今にぴったりの曲だ」という反応が取れ、初動のクリック率を高めていたと考えられます。

そして狙ったターゲット内での評価が高く、そこを軸にして堅実にマスが広がったことにより、次第にシーズンやトレンド関係なくサブターゲットである幅広い大人層にリーチします。

彼らはここまで解説してきた作品のテイストやテーマに共感・期待をしてクリックするわけですが、一言で言うならそれは「ノスタルジー」という感情だと思います。

その感情を引き起こす仕掛けはこの章で解説してきた通りになりますが、いずれにしても「卒業・恋愛というテーマを瞬時に伝え、かつ幅広い層に受け入れられる形で作られた秀逸なサムネ」というのが「サクラキミワタシ」のサムネイルの結論と言えるでしょう。


MV分析

サムネイルで楽曲の内容を魅力的に見せた後、その期待に沿った中身であればあるほど視聴維持率は高くなり、YouTube再生数も向上していきます。
そしてその中身のメインとなるのは楽曲で言えばMVなわけですが、「サクラキミワタシ」はここでも非常に面白い仕掛けが施されていました。
本セクションではその秘密について見ていきましょう。


前章での分析を踏まえると、視聴者は「何かしら感動的な恋愛物語が見られる」と思ってMVを視聴することが想定できます。
さらに「バズの拡大経路」でお伝えしたように「サクラキミワタシ」はストリーミングサービスからYouTubeに流入した層も一定数存在し、その層も満足させるMVだったからこそ、ここまで再生数が伸びたと考えられます。

というわけで、

・サムネイルの期待回収
・原曲にマッチした演出

この両側面を考慮しながら分析をしていきます。

[冒頭 : 期待の回収]

①男の子と対面し、第二ボタンを渡される夕焼けのシーン

卒業と恋愛が絡む話だということが瞬時に認識できる冒頭です。
これにより「何かしら感動的な恋愛物語が見られる」と思ってクリックした視聴者の期待は当たり、冒頭の離脱を防ぐことができます。

また、先行的に曲の内容を知っていた層に対しても「第二ボタン」などの歌詞をピッタリ表現したムービーが流れることで「あんなに感動した曲をピッタリの映像と共に見れる!」という新たな視聴体験への期待につながります。

[1番サビまで : 結論の提示と背景の小出し]

②女の子が誰もいない学校を一人歩き回る

誰もいない空間で一人物思いに浸るような描写 + 過去形の歌詞から、男の子は既にいなくなり、女の子が何らかの後悔や悲しさを抱いていることが伝わります。

これは「結論の提示」です。
冒頭で恋愛物語であることが分かった後、視聴者には「どういう物語か?」という疑問が植え付けられています。

ここに対し「恋は報われなかった」という結論を示すことによってその疑問を回収しつつ、その経緯が描写されていないことから「何があった?」という次の疑問が生まれ、視聴維持に繋がります。

また、Bメロからは「貴方ともっと話したかった」など女の子の切ない気持ちをダイレクトに表現する箇所が増え「待って分かるよ、超切ない…!!」などの共感も生まれ、興味と感情移入の双方で視聴し続けたい動機が生まれます。

【補足】
ストリーミングからの流入層のエンゲージメントを高めた考察についてですが、すでにその楽曲のフルを好む人達が聴きにきているため、歌詞の内容を的確に表現している、つまり演出に減点要素がなければ必然的に維持率は高くなることが想定できます。
ですので、以降細かい言及は避け、YouTube起点で視聴した層への分析を中心にしていきます。

[1番サビ : 強い共感]

③サクラ舞うピンクの世界観。女の子は一人ひたすらピアノを弾き続ける。

「恋しているんだ」という歌詞と共に、一気にサクラ舞うピンク色の世界に。
これは女の子が恋をしていたことがハッキリと伝わる演出です。

また、他の生徒が登場するもその描写はぼやけ、周りの存在など気にせずただピアノを弾き続ける女の子。

この対比的な演出により「他のことなんて目に入らない、ただただ彼への想いが溢れてしまうんだ」という女の子の想いの強さが伝わってきます。

このシーンはBメロから作り上げてきた視聴者の共感を一気に爆発させ、世界観に思い切り引き込む役割を果たしていたと言えるでしょう。

[2番Aメロ : 疑問の回収]

④卒業前の学校生活や男の子と二人の描写。

今までと異なり他の生徒の描写もハッキリとしていることから、卒業前の回想に入ったことが想像できます。
さらに男の子と二人で歩くシーンも登場し、
まさに「何があった?」という視聴者の疑問を回収し始め、これが視聴維持につながります。

[2番Bメロ : 世界観への没入]

⑤再び一人ピアノを弾くシーン。

男の子との過去から再び報われなかった現在に戻ることによってその切なさは増し、「好きな人との思い出を振り返っては悲しみ…」といった感情の不安定さが伝わります。

「恋愛の切なさ」に浸れることがこの曲を聴き入ってしまう視聴者の理由であることを踏まえると、こういったリアルな感情の動きはさらにこの世界に没入できる (=視聴を維持する)秀逸な仕掛けになっていると言えるでしょう。

[2サビ : さらなる感情移入]

⑥楽しい過去の思い出

ここは歌詞との対照性に着目したいです。

・春に散る恋だ
・わかっていたのに

MVは”楽しかった過去の想い出”なのに対し、歌詞は”辛い現在の想い”です。

視覚的には幸せなものが映っているのに、聴覚で入ってくるものはとても切ない。
これが「本当はこういう時間が続いてほしかった…!!」という憧れと報われない現実に対する強いマイナスギャップを表現し、もう一段階視聴者の感情移入度を高めていると考えられます。

[Cメロ:急展開による興味]

⑦男の子との再会?トラブル?

突如男の子を発見したようなシーンから、何かに気づき、急いで走り出すも何やらただならぬ事態になっている様子。そして泣き叫ぶ彼女。

「ただ卒業で別れが来てしまったわけではない?」
「男の子がいないのは事故に遭ったから?」

など様々な想像が掻き立てられるシーンで、これはずっと視聴者の疑問であった「何があった?」に対して衝撃的なヒントを与え、これによりさらに興味を惹きつけられ視聴を続けます。

[抜きサビ : 答えの提示]

⑧男の子との別れのシーン

男の子が笑顔で何かを伝え、女の子は「嫌だ」と言わんばかりに涙します。

単純な別れのシーンとも取れますが、Cメロの急展開の後だと亡くなった男の子が最後にもう一度会いに来た、など様々な可能性が考えられます。

いずれにせよこのシーンは「何があった?」という興味への答えとなる部分。
さらに切ない別れのシーンは感情移入度をMAXにし、視聴者を釘付けにします。

—----------------
【補足】
プラスアルファになりますが、結論の部分に考察の余地を持たせる演出は映像作品としての完成度を高め、考察コメント・リピート再生などの増加に繋がります。
単に1度目の再生の視聴維持率を高めるにとどまらないこの仕掛けは、非常に勉強になる部分です。

[ラスサビ:ポジティブな着地]

⑨色づいた世界でピアノを弾く

最後は今までで最も明るく色鮮やかな世界でピアノを弾き続ける女の子の姿。
そして男の子の姿は消え、女の子の笑顔で物語は幕を閉じます。

この描写は男の子との別れを受け入れ、前を向いて生きていこうとする女の子の儚くも強い意志が感じられます。

一通りの真相を知り終えた状態で、最後にこのような前向きな描写をすることには、視聴者のエンゲージメント増加において以下の意味があると思っています。

「ピークエンドの法則」

これは「人間はある出来事の最も盛り上がった瞬間と最後を記憶に残しやすい」という法則です。
YouTubeで言えば、”核となる部分”と”最後”が面白ければ同じ動画や同じチャンネルの動画を再び見たくなるという使い方をされていることが多いです。

その点「サクラキミワタシ」もただ切ないで終わるのではなく、最後にポジティブ寄りな着地をすることによって心地の良い視聴後感を与え、これが高評価やリピート再生に寄与している可能性は高いです。



このように、視聴維持率を高めて終わるだけでなく、繰り返し見てもらえる仕掛けまで施していたことが「サクラキミワタシ」MVの秀逸さだったと言えるでしょう。


【演出の分析】

ここまでMVという脚本部分メインに分析してきましたが、中身を作る要素はそれだけではありません。
どのようなテイストの映像にするのか、あるいは当然音楽ですのでどういった編曲、歌い方をするのかなど様々なポイントがあります。
本セクションではそれを「演出」と称して、特に再生数や視聴者満足度に影響していたと思われる部分をピックアップして解説していきます。

(1)リアルアニメ調

実写、別テイストの2次元アニメーションなど他の選択肢も考えられる中でなぜ今回のスタイルを選んだのか。
全ては「メインターゲットである中高生に広げつつ、その上で大人含む幅広い層に受け入れてもらうこと」が狙いだったからだと考えています。

「サムネイル分析」の章でお伝えしたように、

・実写ドラマよりアニメの方が時代的に中高生には刺さる
・その上で大人を含むマスに受ける一般寄りのタッチ

この2点が「恋愛という本楽曲のテーマ」を映像化した時に最も刺さるスタイルのポイントとなっていたと考えられます。

(2)ピアノ伴奏

基本的なことではありますが、楽曲が持つ世界観やメッセージに適した楽器をチョイスすることは没入感の向上に繋がり、結果として再生数に寄与します。

言わずもがな、ピアノがメインの編曲は卒業ソングにピッタリのチョイスです。
「旅立ちの日に」をはじめ、ほぼ100%の人間の経験として卒業といえばピアノという文化が根付いているため、これは当然に相性の良い選択でした。

(3)キー : G Major

これは若干こじつけ感もあるので、感想程度に捉えてほしいですが、合唱曲で定番とされ歌い易いGメジャーであった点は親近感を彷彿とさせる要素の一つだったと推察しています。

(4)切なさを表現するボーカルアレンジ

「サクラキミワタシ」は女の子の切ない感情がコアとなって共感を呼んでいますので、その気持ちを代弁するボーカルが完成度および再生数に対して占める比重は当然大きくなります。

ここでは大きく分けて2つの要素が秀逸でした。

・切ない「全体感」を作る喉の使い方

抽象的な表現にはなりますが、声を前に飛ばすのではなく少し後ろに引くような形で発声することによって、爽快さ・真っ直ぐさとは真逆の想いを溜め込むような印象を与え、これが楽曲が与えたい感情と非常にマッチしています。

・切なさを増強する「テクニック」

例えば1番の「時計が巻き戻るなら」の部分など、
この曲では [短い発音 × 細かいビブラート× エッジのかかった止めるような語尾] の組み合わせが多く使われています。
これはリアルな現象でいうと「震え」や「呼吸の浅さ」などに近く、女の子の切ない想いをさらに際立てる効果があるといえます。

さらに1番サビ「わかっていたのに」の「か」や「て」など、一瞬音をくるっとひっくり返すような歌い方を多用していることも、音を真っ直ぐ伸ばすどストレートなニュアンスに比べ、より複雑な心情を表すポイントだったと思います。



このように再生数が取れる音楽作品というのは、楽曲のメッセージを際立てる映像表現、編曲、歌い方のチョイスも非常に重要となってきます。


時代背景における本楽曲の立ち位置

「サクラキミワタシ」の仕掛け分析はここまでで以上となりますが、
ヒット曲を生み出す際には時代との兼ね合いも非常に重要となってきます。

ですので本セクションでは、なぜこの曲が今バズったのか?そこに時代的なトレンドも関係していたのか見ていきたいと思います。

同じく「卒業」や「別れ」をテーマにした楽曲で過去に人気のものを調べてみると、

2005年「3月9日 / レミオロメン」
2009年「遥か / GReeeeN」
20014年「友 〜旅立ちの時〜 / ゆず」

などかなり昔の曲が多く、これは直近の学生にとってもあまり変動がないようです。
例えば2022年の人気卒業ソングランキングは以下。

このことから卒業に焦点を当てた大ヒット曲というのが直近でそもそも乱立していなかったという前提が挙げられます。
これは、視聴者目線で「今の卒業シーンに聴くならこの曲!」という直感に新鮮にハマる楽曲がクリティカルに存在していなかったことを意味し、つまりは「ポジションが空いていた」ということになります。

あくまでそれ自体はヒットの理由にはなりませんが、良い曲を生み出した時にバズりやすい余地があったと言えるでしょう。

そんな中、比較的直近で別れをテーマにした超人気曲は

2021年「ツキミソウ / Novelbright」

などが挙げられますが、こちらは歌詞の内容がかなり詩的で、幅広い人が別々の解釈をして想いに浸れるような楽曲となっています。

例) 記憶をかき分けた先に 滲んだ思い出が待つ

このような歌詞は非常にアーティスティックな魅力を持つ反面、分かりやすい描写とは異なるため、歌詞を聴いてからシーンを想像したり共感するまでのハードルが少々高くなっています。

対して「サクラキミワタシ」はその物語や描写も非常に具体的で、とにかくわかりやすく感情移入できる内容になっており、
深い集中をせずとも、歌詞を聴いた瞬間から多くの人が「想像」や
「共感」しやすい内容
となっています。

例) 第二ボタンをはずしながら言う 『最後だからいいよ』って

本レポートでこの楽曲ヒットのコアは「恋愛の共感」であるとお伝えしていますが、まさにこの「共感」を得るという点においてこの具体的な描写が功を奏していたのではないかと考えられます。

つまり、卒業や別れという恒久的に人気のテーマは軸にしつつも、従来の卒業ソングとは少し異なる具体的な描写により差別化を図り、多くの人を虜にしたのが「サクラキミワタシ」と言えるのではないでしょうか。


バズった結果得られたもの

楽曲ヒットはあくまで単体のもので、むしろ重要なのはヒットよって起こったアーティストへの影響です。
一体どんな影響があったのでしょうか?

ストリーミングサービスへの圧倒的な還元

「サクラキミワタシ」はYouTubeの再生回数が約1000万回なのに対し、Spotifyの再生数は約2倍の2000万回再生に到達しています。

これはこの曲のコアが「メッセージ性」にあるからだと推測できます。
自身の人生に投影できる、そんな共感性の高いメッセージだったからこそ、通学時をはじめとした日々の生活の中で流し聴きをするという状況が生まれやすく、YouTubeでのバズ以上にストリーミングサービスに波及したと考えられるでしょう。

メディア出演によるアーティストとしての地位獲得

・日本テレビ系 「with MUSIC」
・CDTV ライブ!ライブ!

「サクラキミワタシ」だけの功績ではないですが、
このようなメディアへの出演も増え、世間がtuki.というアーティストを知る機会がより一層増えたのは間違いないでしょう。


再現性のある要素

このように単体ヒットではなくアーティスト自身にも大きなインパクトを与えた「サクラキミワタシ」
このような成功事例を我々が生み出すにはどうすれば良いのか。
最後にそのポイントをいくつかまとめたのでご覧ください。

・想定するターゲットからのクリック率を的確に高めるサムネイル

今回「サクラキミワタシ」のサムネイルで秀逸だったのは、中高生というメインターゲットから逆算しつつも、マス受けも可能なフィルターを選んだこと。
さらに視聴者スクリーニング後も、そのメッセージを伝える必要最低限の要素を綺麗に揃えて無駄がなかった印象です。
このように「フィルターによるスクリーニング」「伝えるメッセージ」「それを邪魔しない無駄の排除」という3段階で考えると、より再現性高く、欲しいターゲットとそこからのクリック率を高めるサムネイルが作れそうです。


・たった一度の視聴維持率を高めるに止まらないMVの仕掛け

今回でいえば2つの要素が挙げられます。

1つは物語のコアである「なぜ男の子と別れてしまったのか?」という問いに対して考察の余地を持たせた結論表現にしたこと。

もう1つは完全な切ないだけで終わらず、ポジティブ寄りの感情に着地したこと。

前者は様々な想像を掻き立てることによるコメントの増加、そして前者後者ともに「良い作品だった」と感じられる視聴後感を演出することで高評価やリピート再生の増加につながっていました。

冒頭での期待回収、新たな疑問の提示、徐々に強まる共感や興味など維持率を高める施策が素晴らしいのはもちろんですが、こういった細部までの狙いがヒットを生み出す作品を作り上げていることがわかります。


・楽曲のメッセージを魅力的にする演出の選択

今回ならイラストの選択もそうですし、楽器・歌い方のチョイスも全てが「恋愛の切なさ」を演出するという一点に着地していました。
ですので自身で制作する際にも
「この曲が伝える1つのメッセージは何なのか?」

「それを演出するにはどの選択肢が適しているのか?」

という思考順序にすると魅力的な作品に仕上げることができそうです。


・恒久的な需要にアプローチの変化を

今回でいえば大枠のテーマは「卒業・別れ」という昔から非常に大きな需要のあるもので、その人気のコアは「共感」でした。
そこに「男女二人の切ない恋物語」という具体的な描写でアプローチしたのが「サクラキミワタシ」

これは詩的な内容が多かった従来の卒業ソングの流れにおいて、結果的に良い差別化になっていたと考えられます。

つまり、ヒット曲を生み出す際に
・恒久的な需要があるものをテーマにする
・そのテーマが人気であるコアを見つける
・そのコアに対して従来の楽曲とは別のアプローチを考える

このような流れを踏むとより再現性高くヒット曲を生み出せるかもしれません。

【お仕事大募集中!】

  • 作編曲のご依頼

  • SNS運用代行のご相談

  • 楽曲PR施策代行のご相談

がある方はこちらまでメールください!
↓↓
info@keitarocomp.com

今後も毎週新しい曲を分析しますので、
よければ僕のツイッターをフォローしてチェックしておいてください!
↓↓
https://twitter.com/keitaro_VSEO

前回のnoteはこちら!
↓↓

今回の執筆助手は「スイさん」でした。
ありがとうございました!
スイさんのアカウントはこちら!
↓↓

https://twitter.com/sui_10171


いいなと思ったら応援しよう!