【モエチャッカファイア / 弌誠】 Hitの理由分析レポート 〜TikTok今週の1曲 〜TikTok今週の1曲 [No.10 - 24/11-3]
こんにちは!山本です。
今回は「モエチャッカファイア / 弌誠」のレポートになります。
本楽曲のヒットはかなり勉強になる要素が多く、
音楽×SNS領域で生きている人は絶対に見た方が良い内容です。
ぜひ最後までご覧になって下さい!
「モエチャッカファイア / 弌誠」はUGCの伸び方が特殊
超低音ラップが特徴的な本楽曲ですが、実はUGC数(User Generated
Contentの略)は約3.5万と普段本レポートシリーズでお届けする楽曲に比べるとそこまで大きな数字ではありません。
※ここでいうUGCはTikTok内でその音楽を使った他のクリエイターが作った動画のことを指します。
しかし本楽曲、リリースから2ヶ月経った今になって急速に伸びており、その理由を見ていくと、TikTokで曲をバズらせるための重要な視点が数多く隠されており、TikTokバズ楽曲を理解する上で避けては通れない事例です。
まず分析に入る前に前提の共有をさせていただきます。
こちらいつもと異なる内容となりますので、普段本レポートシリーズを読んでいただいている方も注意して見ていただけたら幸いです。
まず一言に「TikTokでバズった楽曲」と言っても3パターンあり、
が存在します。
このうち②は不特定多数のユーザーに楽曲が使用されることから10億再生行くことも珍しくなく、普段紹介する楽曲もこのバズパターンが多いです。
しかし今回本楽曲が該当するのは③で、我々がレポートで取り扱うのは初めての事例です。
実は本楽曲が最初にバズったのはYouTubeで、リリースから2ヶ月で本家MVは1000万再生を突破。
UGCが急速に後伸びした理由はこれだったわけですが、重要なのは必ずしもYouTubeでバズったからといってTikTokでもヒットするわけではないということ。
ですので今回はYouTubeでの先行ヒットを前提としつつ「なぜTikTokでも問題なく広がったのか?」という視点を軸に話を進めていければと思います。
なぜUGCが増えたのか?
以下を満たしていたというのが大きな結論になります。
幅広い界隈で使われる文脈
界隈および視聴者の欲求を満たすサウンド
TikTokでのエンゲージメントを高める曲構成
過去の事例を活かした上位互換リメイク
これらの4つを順に解説していきます。
1、幅広い界隈で使われる文脈 (バズの拡大経路)
まずUGCが増えたということはリリースから今に至るまでその拡大経路が明確に存在し、幅広い界隈を渡ってもなおその流れが途切れなかったということです。
つまり、その経路と各フェーズでのバズ理由を分析することがヒット背景を紐解く第一歩になります。
ここで「YouTubeで既に認知を取っていたから伸びた」という側面もそれなりにあるとは思いますが、YouTubeでフルMVを見た視聴者がわざわざ短尺のTikTokに足を運ぶ割合は、再生数に対してそれほど多くないように思います。(慣習的にプラットフォームを跨いで検索や試聴をするユーザーは非常に少ないです)
また両者PHでは文化も客層も違います。
ですので後押しはあったがTikTokで伸びる理由もあった、と解釈するのが正しいでしょう。
実際UGCの数値感も通常と大きく異なることなく伸びているため、ここはいつも通りTikTok上でのバズ理由を分析していきましょう。
弊社では通常UGC拡大の様子を【イノベーター理論】を用いて分析しております。イノベーター理論とはサービス等の市場での普及率を示すマーケティング理論の一つです。
詳しくはこちらのサイトの解説が分かりやすかったので拝見ください。
今回もそれに倣い拡大経路の順を以下の3つに区分してリサーチいたしました。
それぞれの区切りはリリースからの投稿期間で判断します。
ざっくり以下の通りの認識で今回は分析します。
(1) イノベーター (一番最初に広まったきっかけ)
→今回はリリースから約30日以内に投稿されたもの
(2) アーリーイノベーター (初期段階で拡散されたきっかけ)
→今回は約30-45日以内に投稿されたもの
(3) アーリーマジョリティ (早期段階でさらに拡散されたきっかけ)
→今回は約45日以降に投稿されたもの
(1)イノベーター
まず今回のイノベーターは本家であり、再生数は合計で約300万回になります。
これらの動画が最初に回った理由は大きく2つと考えています。
①過去にヒットした楽曲をうまく踏襲していたため0→1の興味が作りやすかった
→こちらは2章の音楽的特徴のセクションで詳しく解説しますが、実はこの曲、ベースのサウンドが過去にバズった「真的没喝多 /B2$ KOALA」(中国語ラップで有名) や「ヴィエ/バーバパパ」とかなり似ており、これが第一のフックになった可能性が高いです。
既聴感はTikTokで冒頭スワイプを突破するのに非常に重要な視点です。
これは動画のコメント欄からもわかります。
②多様な技術力を見せる楽曲構成が飽きない視聴体験を生んでいた
→ こちらは3章 楽曲構成のセクションで細かくお伝えしますが、本家動画 (引用2つ目) を見ていただけると分かる通り、ラップパート→ボーカルパート→高速ベースと短時間に様々な魅力で殴られるような構成になっています。
つまり、①の全体サウンドを冒頭フックにしつつ、②の複数の見せ方へと素早く切り替わっていく構成が視聴維持および再生数の伸びに繋がったと考えます。
(2)アーリーアダプター
その後、アーリーアダプターとして複数の界隈で拡大が始まります。
①クリエイター・アート系女子
【この界隈に使われた理由】
まずこの界隈が取り上げる動機として、自分の世界観に合っているかどうかが重要なポイントです。
他の女子界隈と変わらず可愛さを見せたいという共通した欲求はあるものの、よりファッショナブルな雰囲気を重視します。
とりわけ彼女はサイケデリック・レトロ・ポップを組み合わせた世界観を重視しており、特にこのサイケデリックという世界観は幻覚を連想させる特徴的なもので、彼女もその視聴者もこの独特でダークな文化圏で生きていることから、本楽曲にも好感を抱くのは必然だったと考えられます。
【動画が伸びた理由】
彼女のアカウントでは、視聴者が好む世界観の動画になっているかどうかが再生数に寄与する大きなポイントの1つで、本楽曲はその方向性とマッチしていたと考えられます。
そもそも彼女のような青髪女子の動画を見る層は二次元オタクサブカル界隈がメインです。
ですので、その人たちが好む世界観の動画を作る方が彼女のアカウントではバズる可能性が高く、
実際に楽曲パフォーマンス系の動画では、以下のような少し闇要素が入っていると変化球としてウケが良いというのがパターンの1つとして見受けられます。
これらを踏まえると、彼女のアカウントでバズる世界観と今回の楽曲の方向性が合致していて伸びたと考えることができそうです。
②歌い手・声優・VTuber界隈
続いて歌い手・声優・VTuber界隈でUGCが波及し始めます。
【この界隈に使われた理由】
この界隈は自分の声や演技力をアピールしながら認知を取りたいという欲求があり、流行りの楽曲にそれらを絡められる要素が強いほど取り上げる動機になり得ます。
その点本楽曲はイケボを強調できる「超低音」、技術力を証明できる「ラップ」など様々なアピールをできる場所が用意されていたため、早めの段階でUGCが拡大しました。
【動画が伸びた理由】
視聴者目線だと、この界隈は「イケボを聴きたい」「声による刺激的なパフォーマンスを見たい」と言った欲求が強く、その点からも前述のような様々な見せ方をできる本楽曲は高い視聴満足度に繋がったと考えます。
(3)アーリーアマジョリティ
ここからまた別の界隈でもUGCが広がり始めます。
①サブカル発TopTikToker (むめいさん)
界隈ではなく特定の動画にはなりますが、620万再生と間違いなく大きな影響を及ぼしたため言及させていただきます。
TopTikTokerの特徴として、彼女らは自身のブランディングを向上できるかどうかで楽曲の使用を判断する傾向にあります。
そして基本的に彼女らが追求しているのは「可愛いをどう見せるか」
その点本楽曲はその文脈が秀逸だったと考えます。
その文脈とは「可愛いさを仕方なく見せる」文脈。
・「ようこそお越しなさったご主人様」「萌 萌 萌 萌」
など歌詞だけを見れば可愛い要素が強く、ましてやメイドを連想させる楽曲となるとその見せ方はかなりどストレートなものになり、それだけでは敬遠される傾向にあります。
しかしそこで、
・「こんなんで誰が喜ぶのか」
という歌詞があることで「メイド服という可愛さを見せる状況は作りつつも、自分自身は仕方なくやっている」という、
言ってしまえば「ぶりっ子する口実」をこの曲は作ってくれているのです。
その中でもむめいさんはサブカル界隈出身ということもあり、よりこの楽曲の世界観と自身のブランディングが合っていると判断した可能性が高いです。
【動画が伸びた理由】
また基本的に視聴者も彼女を「男性であれば目の保養、女性であれば保養 + 憧れ」にして見ていることが多いです。その点本楽曲は可愛いの中に病みやダーク系の要素が混じり、彼女の表現する「可愛い」に普段とは違った色が見られ、これがまた満足度および再生数の伸びに繋がったと考えています。
②推し動画界隈
ミリオン超える動画が多数。
この界隈は純粋に自分の好みのコンテンツを投稿するBGMとして今流行りの楽曲を使用することが多いため、この界隈に広がっていることはある意味TikTok全体で流行っている感が生まれやすいという特徴があると思います。
取り上げる理由はその楽曲が今流行っているから。視聴者側も「流行っているBGMがフックになって見てしまう」「そもそもそのコンテンツが好き」など、あまり楽曲の本質的な分析にはならないため形としての紹介とさせていただきます。
③ 流行敏感女子界隈
【この界隈に使われた理由】
彼女らは日々さらに有名になることを狙って再生数を獲得したいという欲求があるため、とにかくトレンドには素早く飛びつく傾向にあります。その点今回はTopTikTokerが先行的に取り上げ、間違いなくトレンドになる可能性が高かったため彼女らが使いたくなるのは自然な流れだったと言えるでしょう。
【動画が伸びた理由】
この界隈の視聴者も「可愛い」を求めます。その点「萌 萌 萌」「up pull pull (あっぷっぷ)」などクリエイター側が可愛さを自然とアピールできるポイントが散りばめられており、これが視聴満足度および再生数に繋がったと考えます。
④ショートドラマ界隈
意外にもこの界隈にUGCが波及します。
この界隈で楽曲を取り上げる動機は「ストーリーで与えたい感情を音楽で際立てられるか」であり、その点本楽曲は「ちょい怖」な動画で使用されているケースが多いです。
2章で詳しく解説しますが、本楽曲の持つ特徴的なベースサウンドがこの物語に沿った「不気味さ」や「ダーク感」を演出していて、使用される決め手になった可能性が高いです。
⑤イケメン男子界隈
【この界隈に使われた理由】
彼らは自分の「かっこいい」を見せたいわけですが、その点本楽曲は超低音ラップ、特徴的なベースサウンドが作り出すダークな印象が彼らの求める世界観とマッチしていたため取り上げられたと考えられます。
さらにその「かっこいい」の中に「可愛い」要素を混ぜるとギャップとしてファン化に繋がるため、サウンドだけでなく歌詞の内容もUGCする更なる動機になっていたと言えます。
【動画が伸びた理由】
本人が使った理由と同様に、視聴者も「かっこいい」や「イケメンによる可愛い」を摂取したい女性ファンが多く、演者のかっこよさが際立つダークな曲調 + 可愛いポイントを出せる歌詞の混ざったUGCは再生数の伸びに繋がったと言えるでしょう。
このように幅広い界隈にUGCが拡大した本楽曲ですが、執筆現在ではUGC3.5万と、再生数の割に特別大きく波及しているわけではありません。
筆者の見解としては、本楽曲は非常に大きなUGC拡大とはならないが、特定の相性の良い界隈では確実に使用される可能性が高いと思っています。
その理由として以下の2つが挙げられます。
① 大多数に刺さるフィルターではなかった
→ クリエイターが選曲する際に最も重要視するのは「フィルター」です。
つまり、その曲を使った時に自身がどのように見えるのかという印象。
これは文脈や音楽ジャンルよりも強固で、より直感的な音楽の印象で判断す
る傾向にあります。
そしてTikTokで大きなバズを生みやすいフィルターは「面白い」や「可愛い」です。なぜならTikTokトレンドの決定権を握る女性クリエイターの多くに無難に刺さるのがこれらだからです。
その点本楽曲は、確かに「可愛いを仕方なく見せる」という文脈はあったものの、直感的には「ダーク」や「闇系」などの印象を与えるため、どうしてもフィルターとして爆発的な波及をするには厳しい側面があったと思われます。
② 文脈に共感できる要素が少なかった
→ 先ほど文脈については優秀だったとお話ししましたが、その文脈にも少し弱点はあったかなという印象です。
具体的には「共感できる要素が少なかった」こと。
例えば最近ヒットしている「元彼女のみなさまへ / コレサワ」や「最上級にかわいいの!/ 超ときめき♡宣伝部」などは同じ可愛い文脈でも内容が日常に沿っていて、多くの女性視聴者が共感できるものになっており、それがエンゲージメントやクリエイターの使う動機そのものにもなっていたと思います。
対して本楽曲は可愛いを見せる切り口としては優秀だったものの、馴染みあるシチュエーションではないため共感が得られにくく、視聴者目線でもクリエイター目線でも広がりにくい側面があったと言えます。
ゆえに世界観での訴求が強く、その分サブカル系界隈など熱狂的なファンがいる界隈で確実に波及はするが、大きくマス受けするのは難しいと筆者は踏んでいます。
とはいえ一定の界隈で確実に波及した理由をまとめると、
・「可愛い×ダーク」な世界観 (=サブカル系に刺さる)
・声を使った幅広い訴求 (=低音イケボ、高速ラップ)
の2点が挙げられ、
特にキーとなったのは「可愛い×ダーク」な楽曲の世界観と言えるでしょう。
2、楽曲の音楽的特徴の整理
さて、本楽曲の「可愛い×ダーク」な印象を軸に各界隈の取り上げる動機を満たし、さらにその視聴者が求めるコンテンツともマッチしていたため再生数が伸びていたことが分かりました。
ではその「可愛い×ダーク」という印象は音楽的側面からどのようにして作り上げられたのか?
本セクションではそちらに触れていきます。
結論、以下の3つが軸となっています。
(1)可愛い歌詞
(2)ダークさの核となるベースアレンジ
(3)色気を出すボーカルアレンジ × 可愛いメロディメイク
それぞれ見ていきましょう。
(1)可愛い歌詞
第一章でも解説した通り、ベースに「可愛い」があるから複数の女性クリエイター界隈で使用されたわけですが、本楽曲の可愛いポイントはその歌詞にあります。
・ようこそお越しなさったご主人様
・萌 萌 萌
・up pull pull (あっぷっぷ)
これらが該当しますが、着目すべきはこれらの可愛い歌詞が文脈的に非常にハッキリしている点。
今回であれば明らかに「メイド」の世界観であることから、UGCする際に「メイド服のコスプレをする」姿が自然と想像できます。
つまり可愛いのは大前提ですが、それだけでなくUGCのイメージが明確に浮かんでくる (=文脈がハッキリしている) ことがこの歌詞の大きなポイントです。
これによりクリエイター側が使うべき理由を明確に判断しやすかったためUGC拡大に繋がったと考えられます。
ただ前述した通りそれだけでは訴求がどストレート過ぎて敬遠されてしまうため、ここで鍵になるのが(2)になります。
(2)ダークさの核となるベースアレンジ
(1)の可愛いを中和したダークさ。
これが多くの界隈に使われるポイントとなりました。
そしてその秘密の一つはベースアレンジにあります。
これは第一章(1)イノベーターのセクションでも触れた
“ベースのサウンドが過去にバズった「真的没喝多 /B2$ KOALA」(中国語ラップで有名) や「ヴィエ/バーバパパ」とかなり似ている”
に対する答えにもなるのですが、本楽曲で使用されているベースは
「ロシアンハードベース」
というサウンドになります。
名前の通りロシア発のハードなベースミュージックなのですが、現地ではヤンキー風の音楽として使われており、これが本質的に治安の悪いかっこよさやダークな印象に繋がっていたことが分かります。
「真的没喝多 /B2$ KOALA」や「ヴィエ/バーバパパ」の事例でも同じ印象を受けると思いますので、今後ダーク・不気味などの印象を作りたい際にこの「ロシアンハードベース」という選択肢をストックしておくと良いかもしれません。
(3)色気を出すボーカルアレンジ × 可愛いメロディメイク
ダークさを演出したもう一つの要素としてボーカルアレンジがあります。
端的には
・超低音 × ウィスパー
の組み合わせがその印象を生み出していたというシンプルな結論になります。
さらに可愛い要素として「踊りにハマったメロディメイク」があり、例えば「萌 萌 萌 萌」「up pull pull」でポーズに合わせてビートがハマるように作られています。
この組み合わせは「唱 / Ado」がヒットした理由と似ており、
・低音成分強めで歌う = 色気、ダーク
・踊りの要素 = 可愛い
という点で、本楽曲の音作りの本質も類似している部分があり、これが今回のUGC拡大要因となった「可愛い×ダーク」音作りとしても非常に秀逸だったと考えます。
3、楽曲構成の整理
ここまでのセクションで各界隈でUGCが伸びた文脈的な理由、そしてそれを印象付ける音楽要素をご理解いただけたかと思います。
しかし、幅広い界隈において再生数が安定して伸びるということは、単に楽曲の印象が界隈の世界観とマッチしているだけでは不十分です。
TikTokという短尺動画の中で満足度が得られる作品でなくてはならないため、本セクションではその楽曲構成について触れていきたいと思います。
着目したいのは以下。
(1)期待値を上げる冒頭
こちらはTikTokバズ楽曲の冒頭では定番パターンの一つで、サビ前の期待感を上げるという手法をとっています。
具体的には「鬼ノ宴 / 友成空」や「Talking box / WurtS」のような、
世界観を引き込むなサウンドから入りつつ、サビ前で一度音が弱くなることによってサビに入った瞬間にグッと引き込まれる特徴があります。
また、ショートドラマで使った時にも映えるサウンドメイクの箇所としての柔軟性もあり、非常に優秀だったと考えます。
(2)感情を淀ませないパートの変化
こちらは第一章(1)イノベーターのセクションでも触れた
“ラップパート→ボーカルパート→高速ベースと短時間で様々な魅力で殴られるような構成”
と関連する話になりますが、短時間でのパート変化が本楽曲の再生数に寄与した一つの要素だと考えています。
具体的には
・「ようこそ 〜 隣に座ってせーの」= 超低音ラップ
・「萌 萌 萌」= 繋ぎのブレイク的な役割
・「こんなんで誰が喜ぶのさ〜」 = 歌パート
の流れができていて、前半ではかなり早いテンポ感、後半では通常のボーカルになることで少しゆったりした印象を受けます。
メインで使われている15秒尺の中でこのような大きな印象の変化が起きることで、感情が淀みなく動き視聴維持に繋がった可能性が高いです。
例えば今年の特大ヒット事例でもある「Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts」を見てもわかるように、現在はタイパの時代なので短時間に多くの要素を詰め込んでいる楽曲はトレンドとして強い傾向があります。
4、時代背景における本楽曲の立ち位置
ここまで各界隈でUGCが伸びる文脈的な理由、それを印象付ける音楽要素、TikTokという短尺に適正化された楽曲構成をヒット理由としてお伝えしてきましたが最後に重要な点がもう一つ。
それは「時代の流れにどうハマっていたか」という視点です。
昭和と現在で流行っている楽曲が全く異なるように、時代と共に求められるサウンドは変化していきます。それは数ヶ月〜半年〜1年などの細かなスパンでも同様で、トレンド全体の流れの中でその楽曲がどのような立ち位置でヒットしたのかを知ることは非常に重要です。
本セクションではそれを見ていきましょう。
「数年以内にヒットした楽曲のTikTok適応ver」
結論、これになります。
このようなカッコいいラップ系や低音ベースメインの楽曲はここ数年で何度かヒットを生み出していて恒久的な需要があります。
例えば「真的没喝多 /B2$ KOALA」や「ヴィエ/バーバパパ」ですね。
ですがどちらの楽曲もTikTokでヒットするには惜しい部分もあり、「モエチャッカファイア」はそれをTikTok仕様にチューニングした楽曲だと筆者は捉えています。
具体的に見ていきましょう。
例えば「真的没喝多 /B2$ KOALA」(以下:中国語ラップ) は歌い手界隈ではかなり人気となりましたが、UGC拡大の鍵となる女性クリエイター界隈にはあまり広がりませんでした。
そしてその理由は「文脈の欠如」だと考えています。
簡単に言えばラップという歌唱技術を見せやすい要素はあるが、日本語じゃないので何の曲か分かりにくい、ということ。
第一章でも解説した通り、歌い手は自分の技術をアピールできれば良いので言語の意味はそこまで重視しませんが、多くのTikTokクリエイターは「その曲がどういう曲か?」という文脈を重視するため、意味が伝わりにくい他言語でのUGCは伸びにくかった印象です。
つまり「サウンド」や「スタイル」の面では伸びる要素を持っていたのに「文脈」というピースが足りていなかった。
その点本楽曲は過去ヒット曲の要素は踏襲しつつ、よりTikTokerに受け入れられる要素を盛り込んだ成功事例だと考えています。
一方で第一章でも解説したように、
①大多数に刺さるフィルターではなかった
②文脈に共感できる要素が少なかった
といった理由から「一定のラインまで伸びるのは必然だったが、TikTokでの使いにくさもあることからそれ以上を超えるのは難しい」と思っています。
5、バズった結果得られたものまとめ
ではこの楽曲がバズったことで何が得られたのでしょうか?
(1)成果
執筆時現在、公式MVがYouTubeで1600万再生を突破。さらに人気のミュージックビデオランキング1位を獲得。
さらにSpotifyのバイラルチャートでは9位にランクインし、現在200万再生を突破するなどストリーミングサービスにまでしっかりと波及していることがわかります。
新星アーティストでここまでの数字が出ていることは素晴らしく、これからさらに流行っていくのではないでしょうか。
(2)MVの再生数を押し上げるTikTokブースト
この成果に対するTikTokUGCの立ち位置としては、純粋にYouTubeでの先行ヒットをさらに押し上げる形でブーストしたことです。
TikTokで伸びた理由はここまでお伝えした通りですが、純粋にYouTubeのみで伸びるポテンシャルもありながら、TikTokでも波及する力を持っていたのは本楽曲の凄かった部分だと思います。
TikTokで波及する界隈をもっと広げることができたらブーストのレベルもさらに大きくなった、という惜しい部分もありましたが総じて素晴らしい事例でした。
6、再現性のある要素
ここまで本楽曲がヒットした理由とそれによって得られた結果についてお伝えしてきましたが、それを自身で活用するにはどうすれば良いでしょうか?
本セクションでは再現性のある要素として2つお伝えいたします。
(1)既存ヒット曲の弱点を補ってリメイクする
第四章で解説した内容になりますが、例えば中国語ラップは色気やダークさを印象付けるサウンド面や高速ラップといった技術的訴求から一定の界隈で取り上げられる要素は揃っていたものの、別言語であるがゆえ国内TikTokでバズるには「文脈」というピースが欠けている印象でした。
そこに日本語の歌詞をミックスさせたことで既存楽曲の強さはそのままに、さらに「文脈」が付与され、広くUGCが回ったのが本楽曲。
つまり、他界隈(YouTube、サブスク、ライブ、特定の界隈) でヒットした曲にTikTokUGCのヒット要素を付け加えるという視点を持つと、新たな曲を生み出すヒントになりそうです。
(2)相反する世界観を両立させる
(1)で「文脈」という弱点を補いましたが、その文脈の作り方も本楽曲は秀逸でした。
そのポイントが「相反する世界観を両立させる」こと。
今回で言えば歌詞が可愛いのに音楽はダークでしたね。
これにより女性にとっては可愛いを見せる嫌味がなくなり、男性にとってはシンプルにカッコ良い訴求をすることができました。
このように楽曲を構成する複数の要素をあえて相反する文脈でぶつけることによって、幅広い界隈へのリーチを可能にできるかもしれません。
「モエチャッカファイア / 弌誠」の分析は以上となります!
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今回の執筆助手は「スイさん」でした。
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