【愛とU】Hitの理由分析レポート〜TikTok今週の1曲 [No.12 - 24/12-1]
こんにちは。山本です!
今週も分析やっていきましょう!
今回は「愛とU/Mega Shinnosuke」の分析です。
1.バズの拡大経路
今回もまず拡大のフェーズごとにどんな動画がUGCとして生まれていったのかみていきましょう。
(1).イノベーター
今回のイノベータは振り付けを考案したmiaさんの動画であると考えられる。
2024年7月16日に投稿されたmiaさんの「可愛い振り付けできた」という動画はTikTok内再生数は脅威の143万回超え。その後、多くのTikTokerがこの振り付けを真似し動画を投稿していきます。
まず、この動画がバズった理由として3つ挙げられます。
①時代にマッチしたパワーバランスを再現できていた
楽曲内容についての話なので後ほどの章で詳しく解説しますが
端的に言えば「現代の男女のパワーバランスを絶妙に再現できた」のです。
②ガラスを用いた振付
ダンスはMrs. GREEN APPLE「ライラック」のTikTokダンスを考案したmiaさんが振り付けを考案し、「グラス越しの君を拝む」の箇所で実際にグラス越しに覗き込む振り付けやサビの両手を使った可愛らしい仕草です。
また、本家MVの中ではご自身で考案されたダンスも踊っています。
(本家動画のダンスはUGCが伸びたダンスとはことなる振り付け)こちらでは中華料理店でシュールなダンスを踊ると言うユニークさが表現されています。
対してmiaさん振り付けのダンスは可愛いさが表現されており、TikTokを視聴する女性にはmiaさんの振り付けダンスが刺さり、UGC増加に影響したと推察できます。
この振り付けの優れていた点は2つあります。
1つは「ガラスをみせる」という動作が冒頭スワイプ率を低下させた点です。
ガラスを顔に被せた人が映ると「可愛いのか or イケメンなのか わからない状態」が作り出せます。
例えばこの動画などがわかりやすいでしょう。
冒頭に「きになる!」という感情をたった2秒程度作り出せるだけでも冒頭スワイプ率の平均は大幅に改善されます。顔が好みかどうか、というのはTikTokユーザーのマジョリティな欲望なため、そことマッチできていた振付はとてもよかったと思います。
また冒頭では使っていない動画であってもーー例えば下記のようなーー
絵替わりがする、というのは今度は視聴維持に役立ちます。
そもそも「ダンス系」「リップシンク系」のUGCが伸びる理由は「没入感があるから」です。横型の動画よりも、目の前に美女やイケメンが存在するかのように錯覚するのが人気の理由です。
つまり、動画主と目が合い続ける動画は視聴維持されやすいと言えます。
本楽曲は『画面を歪ませるガラス(やそれに類するもの)』という特殊効果を用いる事で、より投稿主と目があい続ける事に飽きを来させない動画が作れていた点で、とても優れていたと推察します。
もう一つは「インフルエンサー自身がやってみたい!」と思えるものだった、と言う事です。
インフルエンサーと日頃話していて思う事ですが、上記のような狙いを具体的に意識して投稿している人はそう多くはありません。
単にトレンドだから、とか、可愛いから、とか、私っぽいから、のような理由で選曲をしています。
インフルエンサーの感想を代弁するとこんな感じ。
みたいな。
これらのやってみたい欲をうまく刺激できていたのも秘訣でしょう。
③スピードアップバージョンのブースト
今回スピードアップバージョンも同時に配信されています。
スピードアップバージョンがBillboard Japan TikTok Weekly Top 20にて
自身初となる首位を獲得しており、UGCもトータルで8.6万回を記録しています。(切り取り箇所、切り取り長さ違いで3種類配信)
この要因として、本家の楽曲はややスローテンポでエモい雰囲気を醸し出していることで大人っぽさを感じるが、BPMを上げることで当然ですがキーが上がり女性が早口で歌っているような曲調になっています。
またスピードアップは音質が劣化するデメリットもありますが、本楽曲の場合それがむしろチルっぽさが増していて使い勝手が増しているのも評価できるポイントです。
スピードアップバージョンはそちらばかりが伸びて、サブスクや本家の再生に返らないこともあったりと、必ずしもどんな曲でもハマる施策ではありません。
但し再生時間も短くなり飽きられることなく最後まで見れることから視聴完了率の上昇に寄与できるので、少し芽がで始めた曲をさらに伸ばしたい時などに検討したい選択肢ではあります。
ダンスのBGMとしてインフルエンサーが多く利用した理由としては上記で説明したように女性が早口で歌うことでPOPさが増し、可愛いさが表現できることと、テンポアップによりリズミカルになったことによりダンスBGMとしてちょうどいい早さになりダンスの動きをよりキレ良く表現することができるようになったなど、とても相性が良い楽曲でした。
(2).アーリーアダプター
その後、アーリーアダプターとして人気女性インフルエンサーに広がりを見せまた韓国でも人気が広がります。
①女性インフルエンサーの承認欲求を満たした
本楽曲は歌詞にある「グラス越しの君を拝む」「こんな僕じゃダメかな」のようにひ弱な男性が憧れている女性を思い、愛・欲と理性の間で葛藤する様が表現されています。
女性インフルエンサーは「好まれている女性」側に自分を投影し好かれている自分を見てほしいという承認欲求を満たすことができます。
自身の可愛さを存分にアピールできるユニークな振り付けにより、こちらも承認欲求を満たすことができたのでしょう。
以上より、好まれている自分を見てほしい、可愛さをアピールできるというメリットから楽曲を使用してほしい本家側と自分を満たしてくれる女性インフルエンサー側がwin-winの関係を築け、UGC数が爆発的に増加しました。
②韓国での広がり
MV上の歌詞が日本語だけでなく、韓国語、英語で表記されていることで日本だけに止まらず海外での人気も広がりました。
当然MV上に複数言語の歌詞を掲載した事は結果論であり、それだけで韓国でバズるわけがありません。
MVのメインキャストらんさんにTikTokを中心に活躍されている韓国人モデル/インフルエンサーであり、らんさん自身のアカウントから本楽曲をBGMに使用したMV視聴者への感謝動画も配信した事も大きいでしょう。
そこからは(2)-①で説明した通りの広がりが韓国でも起こったと推察できる。
歌詞の意味合いから「好まれる女性」に自己投影し、可愛らしさをアピールできることにより韓国女性アイドル、インフルエンサー達に刺さった。
K-POPアイドルグループIVEの公式アカウントから本楽曲のダンス動画が投稿されさらにバズ拡大に繋がった。
(3).アーリーマジョリティー
ここまで広がった後は、TikTokerやYouTuberにも楽曲が浸透していき「歌ってみた」「踊ってみた」などの幅広いジャンルでのUGCに繋がっていきます。
①可愛らしいダンス、歌詞が承認欲求の高いSNS界隈の女性刺さった
アーリーアダプターの人気女性インフルエンサーが動画を投稿したことによりそのインフルエンサー達に憧れる若い女性たちが同様の振り付けをした動画を投稿しました。
自身の可愛さや好まれる女性をアピールすることにぴったりな本楽曲は
インフルエンサーの枠を飛び越えて一般の女性たちへとバズを広がりました。
イノベーターの項目で解説したように、最初からダンスだったら伸び悩んでいたと思います。
リップシンクが伸びたからこそこの曲を使えば伸びやすい状態が作れた
→ダンスも伸びやすくなった
と解釈するのが正しいでしょう。
またイントロが切り抜かれているものも多くみられるようになったのもダンスがきっかけです。
後ほど解説しますが、終始循環コードで楽器編成なども変わらないので、どの箇所が切り抜かれたとしても本能的に同じ曲だと思ってもらえたのでこのような荒技ができたのでしょう。
一般的なA-B-サビのようなJ-PopやRockであれば、例えばAメロとサビではグルーヴもコード進行も、時には楽器も違うので、このようなことはしにくいと思います。
②歌い手
MV公開当初からギターTAB譜付きの動画を公開、またMega Shinnosukeさん自身がアコースティックギターで弾き語りをしている動画を投稿するなど本家アカウントから歌い手への誘導動画が多く配信された印象がある。
その結果、弾き語り動画が多く投稿されるようになり、
弾き語り主のファンがその動画を見て本家の楽曲を確認するという
プラスのスパイラル効果が発生し更なる再生数上昇のきっかけになりました。
2.楽曲の音楽的要素
ここまで楽曲がバズった理由に対する外的要因を解説してきましたが、
やはりそれだけではバズは生まれません。
TikTokでUGCが生まれるということは、楽曲そのものが何度も聞きたくなる魅力的な音楽要素を持っているとういうのが非常に重要です。
この項では、楽曲自体の魅力、バズが生まれた内的要因を解説します。
(1)声質とUGCの相性がマッチしていた
本楽曲ヒットの『0→1』はやはり【TikTokでUGCが伸びたこと】なのですが
Mega Shinnosukeさんの声質がインフルエンサー達の動画BGMとしてピッタリであったことが要因と推察できます。
声を張らずにファルセットを多く使用し脱力感がある歌声はBGMとして
耳障り良く心地よく聞こえます。
また、男性の力強さが抑えられ、中性的な印象を受けます。
女性インフルエンサーもまた、彼女達に憧れる若い女性達は本気でダンスをアピールしてるわけではなく「踊っている私かわいいでしょ?」というアピールのために軽くダンスをしているので肩の力が抜けた中性的な声質がマッチしていたと推察できます。
(2)コード進行もアンニュイ全振り
この楽曲のコード進行は基本的に「FM7-E7-Am7-C」の4つのコードの繰り返す、循環コードの楽曲です。
チル系楽曲では定番の進行なので改めて触れるまでもないかな、と思いつつ、TikTok的な目線も踏まえて分析してみましょう。
この進行のポイントは2つ。
1つはテンションコードが乗りアンニュイなニュアンスがチルっぽさを出している事。循環になっていることで展開が限定され、なおさら気怠さが出ている点もポイント高いですね。
もう1つはキィが確定し切らない点です。
AマイナーならFM7がBdim7(つまりIIdim7)の裏コード扱いだし、
Cメジャーなら、E7がAマイナーの借用コードになります。
つまり、E7-Amの動きを見ればAマイナーっぽいし、C-FM7の動きを見ればCメジャーっぽいので、メジャーキィなのかマイナーキィなのかが分からないのです。
これもチルっぽさを出しています。
これらの要素が前項で解説した「インフルエンサーがオシャレだと思ってくれた」事の縁の下の力持ちとなっており、本能的に採用してもらいやすい楽曲になっていたと言えます。
(3)編曲もアンニュイ全振り
編曲面も見てみるとギター、ベース、ドラムとシンプルな構成となっており
ボーカルのファルセット多めも歌い方、ギターのカッティング多めの演奏は楽曲にアンニュイなイメージを与え、ベースは動きが多めで心の葛藤を
描いてる、ドラムの音作りも軽い。
これは以前からお話ししている通り、スマホスピーカーでの抜けの良さ、というメリットも引き続きあると思います。
また、余計な音が少ないので声やコードなどの感情を動かす要素に焦点が行きやすいのもよいですね。これが結果的にアンニュイさをブーストしているといえるでしょう。
3.時代背景における本楽曲の立ち位置
(1)理性と欲望の葛藤
この楽曲は、現代人の理性と欲望の葛藤について歌っています。
SNSが普及し、自分の行動が常に世界から監視されているようにも感じる現代。
正しくいなきゃいけないという気持ちと、欲望のままに好きなことをしたいという気持ちの葛藤が、現代人の共感を呼んでいます。
例えば「脳内天使と悪魔が喧騒」という歌詞がありますが、この感覚を持っている現代人は多いのではないでしょうか?
このような思想のトレンドは2024年のTikTokで多くみられました。
例えば今年の5月にリリースされた、【初恋キラー/乃紫】
こちらは欲望に逆らえなかったパターンですね。
周りの意見や自分の理性が止めているにもかかわらず、欲望のままに進んでしまっています。
スマホ・SNSネイティブ世代がTikTokの中心となり始めた現代に於いて
SNSを使っていることによる『弊害』を投影したり、共感する曲がトレンドに上がってくる流れは、むしろ最近トレンドが台頭し始めたイメージです。
来年以降はさらなるヒットも出る予感です。この流れは今後も続くといえるでしょう。
(2)奥手男子の恋心を投影
現代、草食系男子とも言われるほど奥手な男性が多くなっています。
昔から草食系男子はいました。しかし昔の草食系男子は行動を自らしていました。例えば音楽オタクの草食男子はレコード屋に出向きディグってジャケ買いするとか。
しかし現代の草食男子はSNSのアルゴリズムの発展に伴い、自分からアクションをしなくても好きなものがスマホやタブレットに表示されるようになってしまいました。
先の例で言えばサブスクミュージックアプリやYouTubeやTikTokが自分の好きそうな曲を勝手にレコメンドするようになったので、能動的に行動する必要がなくなったのです。
そうしてよりコスパを重視し、リスクを恐れる草食系男子が増えている、といのが現代です。自分から行動しなくなってるんですね。
それは恋愛においても同じで、
好意を持っていても1歩踏み込むことができない。
妄想ばかりが膨らんで、実際の行動には移せない。
このような思想がトレンドになっていると想像されます。
例えば昨年6月にリリースされた【貴方の恋人になりたい/チョーキューメイ】では、
という表現がされています。
さらに、奥手な思考は直接的な接触を苦手とする傾向にあり
「グラス越しの君を拝む」という歌詞は『画面越しに推しを見ている視聴者』の目線とも取れます。
現代は、動画やライブ配信で推しを見ることが多いと思いますので、
特にインフルエンサーの動画を見ているファンの方は共感できる内容です。
これはインフルエンサーがUGC動画を投稿する理由にも繋がります。
4.バズった結果得られたものまとめ
(1)成果
TikTok Weekly Top 20で6週連続1位
9/18(水) New Album「君にモテたいっ!!」 リリース
9/21(土)「NAKAYOSHI FES. 2024」
9/29(日)「MUSIC CITY TENJIN」
10月5日(土)「Date fm MEGA★ROCKS 2024」
10/13(日)「UNI9UE PARK’24」
11/3(日)「BiKN shibuya 2024」
Mega Shinnosuke ONEMAN TOUR「君にモテたいっ!!」
11月02日(土)北海道・札幌SPiCE
11月09日(土)愛知・名古屋CLUB QUATTRO
11月16日(土)福岡・福岡BEAT STATION
11月24日(日)大阪・BIGCAT
12月08日(日)東京・Zepp Shinjuku
(2)MEGA POPの確立
Mega Shinnosukeさんは、作詞・作曲・編曲を全て自身で行うシンガーソングライターであり、映像やアートワークやファッションのディレクションも自ら手掛けるマルチクリエイターでもあります。
これまでは自身の音楽活動だけでなく、他アーティストへの楽曲提供やプロデュースワークも積極的に行ってきました。
2019年には私立恵比寿中学にファンキーなダンス・ポップの「踊るロクデナシ」を提供。
2021年には菅田将暉にドラマティックなバラードナンバー「星を仰ぐ」を提供しています。
このように元々音楽活動において素晴らしい実績の持ち主であり、今回【愛とU】がヒットしたことによって、ソロアーティストとしての認知も獲得できました。
彼は、様々な音楽ジャンルを取り入れた自身のスタイルを「MEGA POP」として提唱しています。
今後もさらにMEGA POPがTikTokを中心に、若者そしてJPOPシーン全体へ拡がっていくのではないでしょうか?
5.再現性のある要素
(1)海外進出も見据えた曲作り
MVのメインキャストにTikTokを中心に活躍されている韓国人インフルエンサーのらんさんを起用していることから、TikTokという世界に拡がりやすいメディアで伸ばすことを初めから設計していることが伺えます。
これは他SNSではやりづらい戦略ですので、TikTokならではのマーケティング戦略と紐づいた発想であり、応用が効くと言えます。
(2)視聴者とインフルエンサー両方が得をする、ちょっとした仕掛け
【ガラスを用いる】という仕掛けが今作ヒットの最大の要因でしたが、既視感、手軽さに対する効果が絶大でした。
レバレッジの高い施策だったと言うことです。
この点は他楽曲のPRにも応用できるでしょう。
発想としては以下の点に注意して施策を考えてみてください。
【お仕事大募集中!】
作編曲のご依頼
SNS運用代行のご相談
楽曲PR施策代行のご相談
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