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アートブックコレクションNo.001 SHADOW POSTS/Zhou Junseng

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アートブックコレクションではこれまで集めてきたアートブックや写真集を紹介していきます。アートブックは基本的にはネット上の情報が少なく実際にアートブックフェアや地元の本屋、出版社から直接手に入れないとどんな本かわかりません。
このマガジンでは、主観的にそのアートブックをどこで、なぜ購入したか、どんな本かなどを記録していきたいと思います。

No.001は台湾のパブリッシャー目録Mulu Officeが出版しているShadow Postsです。

H188mm x W102mm

この本は2023年12月に参加した台湾のFoto book dummiesで見つけた。
目録OfficeのLiuさんはFoto book dummiesの企画者でもあり、台湾のアートブックシーンを底上げしようとしている。目録Officeのもう一人のメンバーZhouさんはアーティストで今回紹介するShadow postsの作者である。

なぜ購入したか?

一番の理由は作者と話して丁寧に作り方やコンセプトを聞くことができたから。中綴じというシンプルな方法で綴じられているが、表紙を広げることができる仕様になっていて、表紙の中に本がある。また、表紙が2パターンあるのに、トータルで150部しか刷っていないというのも、制作が大変だったんだろうなぁと想像してしまう。
僕がアートブックを買うときに一番重視しているのは、コンセプトが本に落とし込まれているかどうかで、そこを知れるとそばに置いておきたくなる。

どんな本?

この本の最大の特徴はジアゾタイプという印刷方法が用いられており、紫外線に反応するので太陽光に晒しておくと色褪せていく。つまり本だけど物、オブジェとしての存在意義も持っているので、印刷物であることの必然性が伝わってくる。
表紙は2パターン「森」と「海」がある。誌面の写真はその反対で、表紙が森なら誌面は海、逆に海なら誌面は森となっている。イメージはそれぞれ1枚ずつのみで各項で写真の拡大が印刷されている。僕が手に入れたのは森が表紙のバージョン。表紙を開きながらページをめくると森の中に海の一部が出現する。
ストーリーは光と影、存在と不在、過去と未来などのテーマを日本の玉手箱や中国のおろちなどをメタファーにして進んでいく。これらのテーマがトリミングによって拡大されたイメージによって強化されている。
Printed in diazotype & xerography
Saddle stitch, 188 x 102 x 5mm
480 x 377 x 4mm with background un-fold
Printed in Taipei, 2022-11—2023-06

どこで買える?

残念ながら、現在はSold outとなっているが、目録Mulu Officeの他の出版物もおすすめ。

さいごに

64ページの本なのに誌面で使われているイメージはたった1つ。表紙と合わせて2つしかイメージは使っていない。それでもイメージが持つ言語をしっかりと発している。誌面で使用されている紙は薄いので、全体的に軽い印象だけどチープな印象を与えていない。細かい点だけど折り目をきちんと合わせるとか、ホチキスで綴じるところはテープで補強していたりなど、制作過程で時間を掛けているのが伝わってくる。
アイデアが詰まっているアートブックSHADOW POSTSの紹介でした。


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