
想像とのギャップをつくらないための「働く」ことへの解像度
先日友人であるゆず(noteリンク)に『ベンチャーの作法』という本を借りて読みました。現在居住中のSHIMOKITA COLLEGEで生活を共にしている仲間を対象に、定期的に『働くを知る座談会』という、同じくCOLLEGEに住んでいる社会人を登壇者として、所属する企業、職種の働き方に対する分析や見解を語ってもらう会を開催しているのですが、この座談会で仲間に知ってほしいことと通じることがこの本の中で語られており、共感する部分が多かったので、本を読んで感じたこと、私が『働くを知る座談会』を通じてキャリアを考えるにあたって知ってほしいことを記していこうと思います。
『ベンチャーの作法』で語られていること
今回読んだ『ベンチャーの作法』では主にベンチャー企業への勤務経験がない人を対象として、ベンチャーで結果を出すために求められる働き方について語られています。記載されていた内容の中で私が特に印象に残っている小見出しを箇条書きにしておくと以下のような感じです。
「結果」より先に「裁量」を求めるな
「頭脳」になるな「手足」となれ
組織に「評論家」は必要ない
「人を動かせる人」が本当に優秀な人
特に『「人を動かせる人」が本当に優秀な人』の中では、以下のようなことが語られています。
大企業であれば、こういうことはあまり起きません。
他部署からの依頼は管理職を通して正式に受託され、現場に下りるからです。
放置したりすれば自分の評価が下がるため、しっかりこなす意識が働きます。
その仕事をする時間が確保できるよう、管理職は他の仕事を他のメンバーに振るなどの調整もしてくれます。
一方ベンチャーでは、部署を超えて現場の人同士で仕事を頼みあったりします。
ですがもちろん、自部署の担当業務のほうが優先度は高いため、優先度の低い他部署の仕事は簡単に放置されます。みんな忙しいですからね。
そんな状態でも、評価が下がることはそれほどありません。
本業をしっかりこなして、そこで結果を出していれば問題ないからです。
「頼んだ仕事をちゃんとやってくれない」が多発するのは、このためです。
ダイヤモンド社, 2024, P204
このあと、後続の小見出しでは「人に助けてもらうにはまずは自分から他者を助けることが必要だ」といった内容が続いていきます。
企業文化の違いをここまで解像度を高めて書いている本って、就活本でもそれほど多くないですよね。でも、自分が企業選びにあたって本当に必要な情報って、こういった「企業文化に起因してどういった動き方が求められているのか」だと思うんです。
就職先・転職先を考えるうえで足りていない情報
学生の就活において「裁量が大きい」、「風通しがよい」などの言葉はよく語られます。しかし、その言葉をそのまま受け取ってしまうだけでは働くことへのイメージの解像度は上がっていきません。また、これらの言葉はトレードオフについて言及されることがほとんどありません。ある文化を取り入れていない企業がある以上、その文化によって捨てている何かがあるはずです。これらをおざなりにしてぼんやりしたイメージだけで企業を選んでしまうことは危険だと思います。
例えば裁量について。自身の「裁量」はどのようにすれば大きくしていけるでしょうか?また、そもそも「裁量」とは何をどうできる権利のことを言っているんでしょうか?裁量が大きいことがいいことなのだとすると、なぜ企業間でこの差は生まれるのでしょうか?
『ベンチャーの作法』においては、「裁量」について以下のようなことが書かれています。
結果よりも先に裁量を求めてはいけない
裁量をを得たいなら、まずは末端の仕事をしっかりこなして信頼を得る必要がある
裁量を得たらあとはすべて自分で何とかしなければならない
リクルートの場合、裁量を得るには上記に加えて以下も求められると思います。
よもやま(マネージャーとの1on1)のなかで自分のwill(会社を良くするためにこうしたい)について意見交換しておく
意見交換して設定したWillの実現に向けて、明確なミッションや仕事が振られていなくてもまずは行動して形にしてみる
自身が企業にフィットして活躍するうえで、こういった「求められる動き方」ってめちゃくちゃ重要だとおもうんです。ただ、こういった内容を、具体例をあげながらシェアしてもらえる機会ってほぼないですよね。
東京海上とリクルート 転職して学んだそれぞれの会社の文化
私が企業文化と動き方の違いについて語っている理由には、自身の転職経験があります。私は社会人4年目のはじめに前職の東京海上日動からリクルートへ転職しました。企業文化が真逆ともいえる2つの企業の間での転職に、当初は大きな文化のギャップを感じ驚いたことを覚えています。社員数ではどちらも近い規模の大企業ですが、求められる物事の進め方や、物事を進めるうえでのマネージャーのコミット度合いが2つの企業で全く違います。おそらく、この違いの最も大きな根源にあるのは、企業理念の違いだと思います。東京海上では、新人研修時代講師の方に「お客様の安全と安心に貢献すること」や「誠実であること」を繰り返し教え込まれました。一方で、リクルートでは「個の尊重」というワードを良く耳にします。先ほど話にあげた裁量の話でリクルートの場合については触れました。東京海上では、企業理念に紐づく上段となるミッションが上層部の間でしっかりと固まっており、そこから個人個人のミッションに落とし込まれていきます。そのため、裁量を大きくしていくには、自分で仕事を創り出していくというよりは、与えられたミッションの中で裁量の仕事をすることが求められることが多いイメージです(もちろんその中での独自性や工夫は必要とされていると思います)。リクルートも東京海上も、企業理念に合わせた裁量の形が評価に落とし込まれているということであって、良い悪いの話ではないと思います。当初は大きな違いにいくらかの戸惑いも覚えましたが、今となっては目指したい組織風土に向けてどのように制度や組織に落とし込んでいくのかという観点で、とても勉強になったなと感謝しています。
後悔しない企業選びをするために
企業を選ぶにあたって、必要になってくる情報は、当たり前ですが「自身ついて」と「企業や企業における働き方について」です。就活を行ううえで、「自身について」にあたる自己分析など自身の軸を決めるためのハウツー本はいくつも出ていると思いますが、これまでに記してきたような内容は絶えず変化する情報でもあるため、書籍にはなかなか記されておらず、口コミサイト等に記載されている匿名かつ断片的な情報を頼りにするしかないのが現状です。OB・OG訪問に行ったとしても、良いところ、悪いところすべて含めて企業文化を語ってくれる人は少ないでしょう。また、訪問先の社員の視座の高さや経験社数によっては企業側の人も働き方についてそこまでの解像度を持っていない可能性もあります。
私がSHIMOKITA COLLEGEにおいて『働くを知る座談会』を開催する理由は、私とともに日本の未来を作っていく仲間たちに対して、COLLEGEのにいる社会人の知見をフルに活用して「企業や企業における働き方について」を知ってもらうことで、優秀な皆にそれぞれのポテンシャルを最大限に発揮できる環境に身を置いてほしいからです。ちなみに、初回の内容は、まさに『ベンチャーの作法』でも言及されていた裁量についての話でした。なんという偶然笑。そしてもちろん、働くことについてのディスカッションの機会を設けることでHR業界に身を置く自分にとっても学びを得られると思っているからでもあります。
その場の思い付きで突発的に始めた『働くを知る座談会』だったのですが、継続していくために一度自分の思いを言語化する機会が必要だと感じていたので、きっかけを与えてくれたゆずに感謝!
ではでは、今年も頑張っていきましょう!