第八回
役に立たないオタクゼミ第八回。今回は食文化について少しお話ししましょう。『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』の第八話で台湾素食について触れられています。僕自身台湾料理や中華料理は大好きなのですが、台湾素食についてはなかなか触れる機会がないのではないかと思い、筆を執ることにしました。日本でも店舗が少ないようで、食べる機会もないでしょう。なので、少しでもこういった文化に興味を持ってもらえるように、簡単ながらふんわりやっていきましょう。
事前知識
事前知識としてまず知っていただきたいのは、台湾素食(タイワンスーシーとも読みます)は、精進料理のひとつであったことです。いまは菜食主義者(ベジタリアン)の方々もいらっしゃいますので、広く認知され、人気もあるみたいですね。中国語で素食とは精進料理を指します。こういう流れはもちろん仏教から由来しています。アジアではインドが菜食主義31%と断トツですが、台湾は10%で、これはアジアで2番目に高い数字です。
素食ができた主な理由は先に述べた仏教ですが、大乗仏教、全真教で食べることが禁じられている三厭(鶏肉、豚牛肉、魚介類)に加え、五葷(ごくんと読みます)→(ネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、タマネギ)を一切使用しないというもの。およびこれに関わる、卵や油、乳製品まで禁じています。出汁としても肉や魚類は一切使わず、禁止されているもの以外で料理を作ります。
台湾素食
やっと本題です。そんな台湾素食ですが、実際は質素なものではなく、色々と満足感を得るために工夫がなされています。例えばモドキ料理、素鶏、素魚、素肉、素魷魚など、ゆばや豆干(堅い豆腐)を使った料理が中心で、肉や魚の味を再現しています。これはちょっと深い話になるんですが、例であげた『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』でトグサが「元の味を知っていなかったらそもそも作れないんじゃないか」といった内容のセリフを言います。それに対してバトーが「仏門に入る前には普通に食ってたもので、頭ではわかっていても記憶では求めてしまう」と返します。ここではサイボーグ食を引き合いに出しての問答ですが、たしかに元々の料理の味を知っていて、例えばラーメン食いてぇってなったときに宗教上の理由でラーメンが食べられないとしたら、まぁそりゃ結構きついだろうなと思います。
そのシーンでは日本で絶滅危惧種として話題のうなぎを模した料理が出てきます。グルテンを白身に、海苔を皮に見立てた料理なのですが、本物と見分けがつかないそうです。こいつはすごい。
台湾では屋台でも高級レストランでも素食が提供されていて、卍マークがあってわかるようになっています。日本でもあるようなので僕もいずれは足を運びたいですね。
普茶料理
これは江戸時代初期に中国から日本に伝わった精進料理です。なかなか豪勢な精進料理です。普茶とは「普(あまね)く衆人に茶を施す」「茶礼に赴く赴茶から」という意味らしく、お茶による接待のことみたいですね。中華だと飲茶とかと似た感じなのかなと思われますが、どうなんだろうね。どうも中国は茶にはうるさいですな。イギリス人かっての。
まぁそれは良いとして、こちらも台湾素食同様三厭五葷がベースの精進料理。医食同源の概念も含まれています。巻繊(けんちん)、油糍などが用いられ、モドキ料理も使われます。法要や仏事の後に家族で楽しむものであったらしいですが、日本では物珍しさからレストランみたいな感じの場所で楽しまれることが多かったようですね。異国情緒ってやつかな。
精進料理
じゃあ一応精進料理にも触れましょう。これは何度も上げている三厭五葷がベースです。つまり精進料理は仏教のものと言って良いでしょう。といっても、本来のインドでの食事を考えればそれもそのはずで、中国に渡りさらにグレードアップしたと考えるのが自然かもしれません。それでもここまで厳しいのは大乗仏教圏の食文化であって、意外と本家インドはそこそこゆるかったようです。実際お布施で肉をもらったときは食べてたみたいなので、東アジア圏のマゾヒズムを感じますね。
ちなみにタイ、ミャンマー、ラオス、カンボジアなど小乗仏教圏では普通に肉料理を食べます。美味しいよね、タイ料理。
日本のお寺で食べられてるような精進料理はどんなんだろうかなって思って調べたんですが、やはりめちゃくちゃストイック。色々考え方はあると思いますが、僕に関しては悟りの道は遠そうです。
いかがでしたか?
役に立たなかっただろう?
それでいいんだよ。別に役に立たない記事があっても誰かが役に立つ記事書いてくれるからさ。
次回はなにやろうかなーと思ってますが、ミリタリーマジでやるやる詐欺してるからほんとに戦車やりたい…まぁお楽しみに!それではまた次回よろしくお願いいたします!
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カクヨムとpixivで百合SF小説を書いています。よかったら読んでみてね。