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勧誘大苦戦!仲間の脱退、カズキの言葉〜男子チア物語21話〜

2013年8月。

上京して初の夏が到来した。


5月にANCHORS第1回ミーティングが行われて、3ヶ月が経過した。

俺、カズキ、サヤカはおのおの仲間探しを進めていたが、メンバーは依然として3人のままだった。


中には興味を持って話を聞いてくれる人もいたが、サークルとして成立していない未知の団体に踏み込もうという決断ができない人がほとんどだった。


ただ、俺の中で大切にしてきたのは「一緒に作り上げていこう!」という気持ち。


正直、先のことなんてわからない。


ただ、俺には根拠のない確かな自信があった。


「想像できることは実現できる」

なぜかわからないが、学園祭のステージで仲間たちと完成された演技を披露している姿が常に頭に浮かんでいた。


軌道に乗れば、演技ができるようになれば、自然と仲間たちは増えると感じていた。


そこに至るまでが、最も苦労を強いるが、必ず俺の思いに賛同してくれる仲間はいるはずだと信じていた。


しかし甘えもあった。


俺も上京して半年が過ぎ、大学生活にも慣れてきたころだった。


浪人直前以来のアルバイトを始めようと決めた。


数ある中から、上京して初めて選んだアルバイトは、東京ドームシティのカメラスタッフだった。



2013年9月。


後期が始まり、大学の授業、アルバイト、ANCHORSの仲間集めのために入部したサークルなどで、俺の大学生活は忙しくなった。


本来の目的である仲間集めを忘れて、入部していたいくつかのサークルに没頭してしまったり、アルバイトに夢中になったことで、仲間が一向に集まらないANCHORSの活動と俺は離れていった。


そんな状況下で、サヤカから1通のラインが届いた。


「ケイタ、私悩んだんだけど、ANCHORSを抜けようと思う。広告研究会っていうサークルで他にやりたいことが出来て。このままメンバーも集まらないし、活動がうやむやでズルズルいくのは嫌だなって思って...」


最初の仲間であるサヤカの脱退願い。


俺は「待ってくれよ」と一度は止めたものの、サヤカの意思は固かった。


サヤカはチームから離れることになった。


ついにメンバーはカズキとの2人だけになった。


ある日の授業終わり。


いつものようにカズキと最寄駅の明大前駅に向かって歩いていた。


「これからどうしよっか...」


カズキの不安そうな胸中が読み取れた。


俺はただただ、「大丈夫、大丈夫だよ。成功させよう」と根拠のない大丈夫を繰り返すしかなかった。


しばらくの沈黙が続いた後、カズキは俺の方を見て微笑んだ。


そして語りかけた。


「ケイタ!でも俺はケイタを信じてるよ。俺はたとえ、最後の1人になってもずっとケイタについていく。たとえずっとこのままメンバーが2人だったとしてもね」


カズキの言葉に涙が出そうになった。


同時に、「忙しい」という自分勝手な理由でANCHORSから離れていたことが申し訳なくなった。


「カズキ、ありがとう。本当にありがとう。俺は絶対ANCHORSのメンバーになったことを後悔させないから!」


拳と拳を突き合わせ、俺たちは再び走り出した。

つづく
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第21話の登場人物 整理

ケイタ(俺)=筆者であり、主人公。愛知県・蒲郡市出身。豊橋東高校卒業。

カズキ=ケイタが大学に入ってから心を許した初めての友人。クラスメート。

サヤカ=埼玉県出身。同じ経営学部。手先が器用。ケイタと同じく早稲田の男子チアSHOCKERSに憧れ、マネジャー志望として早稲田大学を目指すも叶わず明治大学に入学。

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