社会人女性チアリーダーとの出会い〜男子チア物語第26話〜
2013年10月下旬。
俺とタカラは豊島体育館にいた。
目の前に広がった光景は、バク転、バク宙、ひねり技…。
俺らから見たら、全員が体操選手に見えた。
倒立すら、下手したら前転、後転すらままならない俺らが、この場にいるのは場違いだ。
そう感じて、2階の観覧席から下を見つめていた。
しばらくすると、1人の女性が俺たちを見つけ、下から声を掛けてきた。
「おーい!君たち何してるのー?やらないのー?」
俺とタカラは顔を見合わせた。
確実に、俺らに話しかけている。
どうしよう。隠れられるはずもなく、少し照れながら返事をした。
「すみません。俺たち場違いだったみたいで!今日は見学します!」
「そんなこと言わずに下りてきなよ!ほら、早く!」
言われるがまま、恐る恐る俺たちは1階へと下り、女性と対面した。
「あ、初めまして。俺たち、明治で男子チア作ろうと思ってて。練習しようと思って来たんですけど、場違いだったみたいっす!すみません、帰ります!」
俺は頭を下げ、顔を上げると、その女性は笑っていた。
「へ~!!!おもしろいじゃん!私の名前はレイコ。応援するよ!だって、私チアリーダーだもん」
「えぇ~!!!」
俺とタカラは思わず、声が出てしまった。
「そうよ。ブルーライオンズという社会人チームに所属してる。私はトップをやっていて、空中技の練習をするために、ここのトランポリンを使って練習しているの。ほら、もしよかったらやりなよ、君たちも。私についてきて!」
奇跡的な縁に恵まれ、俺たちはレイコさんについていった。
「ほら、実際にやってみなよ、試しに」
列に並び、実際にトランポリンを跳んでみた。
しっかりと、うまく蹴り返せず、なかなかきれいに跳ねることが出来ない。
一見、簡単そうなのに、ただただ跳ぶことさえ、甘くはなかった。
俺もタカラも完敗だった。
「レイコさん、俺たち何からやったらいいんですかね…」
レイコさんは笑いながら、答えた。
「まずは、そうだね。あそこのマットで前転、後転、あと側転。体幹練習もして」
「分かりました!」
残りの時間俺らはバク転、バク宙をする人の横で、基本練習を行った。
2時間が経ち、体育館開放時間は終わった。帰り際、俺とタカラはレイコさんの元へ行った。
「今日はありがとうございました!!!」
「今度、もし良かったら、あなたたちブルーライオンズに来たら?とりあえず、次の日曜に体験練習会があるから、そこに来てくれたら、いろいろ技を教えてあげられるわよ」
「ほんとっすか!?行きます!」
俺は即答した。
帰り道、俺はタカラに言った。
「いや~今日はいい日だったな。やっぱ行動すれば、自分の見えている世界は動くな!」
「ケイタ、めちゃくちゃかっけーこと言ってんな!これからがワクワクするな!」
「おう!絶対やってやろうぜ!」
俺たちには、この先の明るい未来が、見えた気がした。
つづく
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第26話の登場人物 整理
ケイタ(俺)=筆者であり、主人公。愛知県・蒲郡市出身。豊橋東高校卒業。
タカラ=ケイタがアナウンスサークルで出会った仲間。体重は40キロ台でチーム1の軽量。アクロバットが大好き。
レイコさん=ケイタとタカラが豊島体育館で出会った女性。社会人男女混成チアリーディングチーム ブルーライオンズに所属している。