運命の合格発表!俺の未来は?〜男子チア物語第5話〜
2012年2月末。
早稲田大学入試を終えて数週間が経っていた。
ついに合否の結果を確かめる時が来た。
この日まで、1日たりとも合否が気にならなかった日はない。
そのくらい頭の中はいっぱいだった。
Web合格発表画面にてまずは、受験した1学部の合否が出た。
(早稲田大学ホームページより引用)
パソコンを開き、恐る恐る指を進める。
受験番号などを入力した。
合否結果に進む前に目をつむって、深く、深呼吸した。
「よし。いこう。信じよう。お願い、神様!」
画面をタップした。
結果は...
「不合格」
「マジか...」
もちろん、ガッカリはした。
だが、まだ始まったばかりだ。
母は僕の表情を見るなり、察したのだろう。
何も触れてくることはなかった。
「まだ、あと2学部の結果がある」
そう、言い聞かせ自分を落ち着かせた。
この時点では精神的には、まだ余裕があった。
数日後。
もう1つの学部の合否が出た。
結果は、同様に「不合格」だった。
今回は文字を見た瞬間、言葉が出なかった。
さすがに、現実は甘くはない。
神様は、そんな簡単に男子チアの夢を叶えさせてはくれない。
そのくらい覚悟は出来ていた。
それでも2学部の不合格を経て、気持ちは複雑になった。
明らかに前回の不合格とは、ダメージが違う。
「あと1学部...の合否のみ、か」
おれが落ち込むのにも理由があった。
残り1学部の合格発表の日は、2012年3月1日の午後3時。
奇しくも、高校の卒業式と同じ日であった。
卒業式を終えて自宅に帰った頃に発表が待っているという状況だった。
本来なら、この日までに合格を手にして卒業式を迎えたかった。
この大好きな学校で、大好きな仲間たち、先生たちと出会えた。
だから、何も考えず気持ちよく卒業式の日を迎えて、行き先、そして未来についてみんなと語り合いたかった。
「俺は早稲田に行く。そして男子チアをやるから、みんな学園祭とか、見にきて!東京に遊びにきてよ!」ー
みんなに伝えて、みんなと笑って泣いて卒業したかった。
だが、それは現実にはならなかった。
自分のふがいなさに腹が立った。
卒業式前日の2012年2月29日。
モヤモヤした気持ちを晴らそうと夕方に愛犬・トライの散歩に出掛けた。
犬と地元を歩いていると、やっぱり落ち着く。
この先のことを、いろんなことを、思い浮かべながら歩き続けた。
「明日で全てが決まるんだ」
久しぶりに集まる仲間たちとのうれしさ。
卒業での別れの寂しさ。
いろんな気持ちが入り交じっていたが、正直、何よりも先のことが心配でならなかった。
「俺は早稲田に受かっているのか。俺は春から男子チアが出来るのか。おれは1年後、笑ってステージに立っているのか?」
考えすぎて、気づいたら歩道橋の上で自然と俺の足は止まっていた。
トライもおれの気持ちを察するかのように、足を止めた。
明日の事、先の事は誰も分からない。
考えていたって仕方ない。
それでも、考えを止めることが出来なかった。
歩道橋の上から大声で叫びたくなった。
「俺の未来はどうなるんだ...!」-
俺は今、そのくらい自分の人生の中で大きな転機となることを感じていた。
つづく
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第5話の登場人物 整理
ケイタ(俺)=筆者であり、主人公。愛知県・蒲郡市出身。豊橋東高校卒業。
サヨミ(母)=社交的で、勉強も遊びも大事にしなさい派。常々、友達は大切にしなさいと言う。好きな言葉は「かわいい子には旅をさせよ」
トライ(愛犬)=パピヨン。俺が中学2年の頃に我が家にやってきた。