現役SHOCKERSの言葉〜男子チア物語第16話〜
2013年4月。
俺は結局、大学で約7つのサークルに入り、とりあえず自分の顔を広めた。
会う人会う人と、仲良くなることを目的に積極的にコミュニケーションを取った。
自分のことを理解、信頼してもらえるようになってきた相手には、「俺は明治で男子チアを作る夢があるんだ」と打ち明けた。
その中でも、興味を示すような反応をしてくれた相手には、「もしよかったら、一緒にやらないか?メンバーになってくれ」と懇願した。
仲間たちは、俺の夢を思いっきり応援してくれたが、「自分がやるのはちょっと...」という人ばかりだった。
簡単に人は集まらない。
メンバー集めには大苦戦した。
そんな中、ある日、いつものように1人の友人に夢を打ち明けると、思わぬ出来事があった。
「明治で男子チアを作る?面白そうじゃん!でも俺はチアはいいかなー。サッカーやりたいしさ!でもね、俺男子チア知ってるよ!」
「え!?もしかしてSHOCKRSを見たことがあるの?」
興奮気味に俺は尋ねた。
「いや、俺の高校の時の仲良かった先輩が今SHOCKRSに入ってるんだ!」
「ええーーー!!!あのさ、その人に俺のこと伝えて、連絡取らせてもらえたりしないかな?いろいろ聞きたいことあって」
「全然いいよ!SHOCKRSだって明治で男子チアが出来たらうれしいだろうしね!」
「本当に!?ありがとう!」
後日、相手からの許可が取れたと連絡が来た。
SHOCKERS8期(大学3年生)のテツフミさんという方を紹介してくれた。
俺は嬉しくて、すぐにテツさんにLINEを送った。
すぐに返事は来た。
俺は即座に答えた。
「SHOCKERSに入りたかったです」
それまで俺の中で、男子チアが出来るのはSHOCKERSに入るしかないと思っていたため。
仮に名古屋にチームがあったなら、そちらの大学も視野に入れていたはず。
俺が目指している間には、大学で男子のチアリーディングチームがあるのはSHOCKERSのみだった。
だが、早稲田に合格できず、明治で作ればできるのでは、という新たな選択肢が生まれた。
俺は続けた。
「早稲田に落ちて、ショッカーズさんにも問い合わせました。それでも、早稲田の男子しか入れないということでした。だから、僕が明治で男子チアを作ります!」
そうか、なら頑張れー!応援するよ!
てっきり、こうした返事が返ってくるだろうと思っていた。
だが、現実は違った。
「そっか、だとしたら率直に思ったのが一浪で諦めちゃうってとこかな。SHOCKERSに入りたくて二浪も三浪もして入ってくる子だっている。色々考えてのことだと思うけど、SHOCKERSに入るのを諦める程度の思いなら、新チームの事もすぐに諦めてしまうんじゃないかなって思ってしまうよ」
胸が痛んだ。
それは、テツフミさんが言っていることに腹が立ったからではない。
言っていることが、正しくて、そしてそれだけの情熱を持っていることが分かったから。
ただ、俺には親との1浪までという約束があった。
いくら思いが強くても、2浪という選択肢はなかった。
そして明治大学に入学。
今は、やっぱりこの大学で俺が男子チアを作るしかない。
そう思って返事を打っていると、さらにもう一通、メッセージがきた。
「自分のやりたいことなら何もかも犠牲にしてもいい覚悟はないのかなって。SHOCKERSを作った人は自分が卒業の年までにチームが世間に認められなくて学園祭に出ることができなくて留年して、翌年、学園祭の舞台に出たんだよ。君は本当に男子チアがやりたいの?」
知らなかった事実を知った。
俺は、すぐに返事が打てなかった。
自問自答した。
「俺は本当に男子チアがやりたいの?」
自分の意思は、弱いのか...?いや、弱くない。
それに、何と言われようが、もう俺は決めたんだ。
明治で男子チアチームを立ち上げる。
「テツフミさん、熱いメッセージありがとうございます。でも僕はもう決めました。明治で僕が男子チアを立ち上げます。絶対成功させます。絶対でっかくなります!」
そう言葉を残し、ラインを終えた。
簡単な道のりでないことは分かっている。
テツフミさんは俺の考えが安易ではないかを確かめたかったのかもしれない。
ますます俺のハートに火がついた。
「テツフミさん、男子チアの舞台でいつかお会いできるのを楽しみにしています」
俺は心の中でつぶやき、ニヤリと笑った。
そしてまた、走り出した。明日に向かって。
つづく
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第16話の登場人物 整理
ケイタ(俺)=筆者であり、主人公。愛知県・蒲郡市出身。豊橋東高校卒業。
テツフミさん=SHOCKERS8期。ポジションはトップ。
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