これがチア!男4人で女子チアに潜入!〜男子チア物語第24話〜
2013年10月。
新たにタカラがメンバーに加わり、ついに4人になった。
4人になればダブルベースのスタンツが組めるのだ。
(写真はダブルベースの例)
トップ(上に乗る人)が1人、ベース(下で支える人)が2人、スポット(後ろで支える人)が1人。
1つの基が完成する。
早速練習に移りたいところではあったが、俺も含め誰もチアの基本、「き」の字も知らなかった。
「ん〜どうしようか」
そこでひらめいたのが、体育館でいつも練習しているあの女子学生たちの姿だった。
明治大学女子チアリーディングチームJAGUARSだ。
実は体育館に行くたびにこっそり人目を気にしながら、1人で練習を上から眺めていたこともあった。
恥ずかしさがあったため、周囲を気にしながら、JAGUARSのメンバーにバレないようにこっそりと...。
俺はある日、カズキ、ショウヤ、タカラの3人に提案してみた。
「俺らチアの何もわからないよな。そもそもみんな生でチアってみたことある?」
3人は一斉に首を横に振った。
それならば、と俺は思い切って言った。
「今度、明治の女子チアを見にいこうか。見学させてもらおう」
3人は顔を見合わせ、驚いた表情を浮かべた。
俺は続けた。
「というかもう連絡しちゃった」
もちろんこの段階ではまだ俺は連絡はしていなかったが、これも俺の作戦だ。
3人は渋々、俺の意見に従ってくれた。
その晩、JAGUARSのTwitterからメッセージを送った。
するとすぐに返事が来た。
日時を指定され、その日に4人でJAGUARSの練習へ行くことになった。
当日、俺以外の3人は緊張していた。
「本当に大丈夫?バカにされないかな?」
俺は胸を張った。
「大丈夫。行こう!」
深呼吸をして、扉を開いた。
その瞬間、すごい光景が目の前に広がった。
宙を舞う女の人が技を決める。
キレッキレのダンスを笑顔で練習する人もいた。
俺たちが心を奪われていると、すぐに、キャプテンの「集合!」という声で一斉にみんなが俺たちの前に並んだ。
そして笑顔で大きな声の代表の合図とともに、挨拶をされた。
「(こんにちは)こんにちはー!(今日はよろしくお願いします!)お願いしますー!」
圧倒された。
すごい迫力、そして挨拶だけで伝わった団結力だった。
横を見ると3人は固まっていた。
「君が連絡くれたケイタくん?私はメグミと申します。よろしくね」
連絡をやり取りさせてもらったメグミさんと初対面した。
「ゆっくりしていってね」
俺の緊張をほぐそうと笑顔で声をかけてくれた。
そこから練習を見させてもらった。
どこにいたらいいかわからず、恥ずかしさもあり、体育館の隅っこで俺ら4人は体操座りをしながら練習を見た。
トップが宙を舞うバスケットトス。
組体操のように人の上に人が乗り、またその上に人が乗るスタンツの3層。
横を見ると、3人の仲間たちも技に魅了されていた。
「来てよかった」
俺は心の中で、そう思い、安心した。
帰りの挨拶。
俺はJAGUARSのみんなの前で宣言した。
「絶対明治で男子チアを作ります。僕、本気ですから!今日は本当に勉強になりました。ありがとうございました」
大きな拍手と、みんなの柔らかな笑みで包まれた。
帰り際、メグミさんが僕らのところへやってきた。
「今日は来てくれてありがとう!頑張ってね。ところで、毎週木曜に豊島体育館に行くといいよ。そこにはチアリーダーの人たちが集まっていて、タンブリングとか教えてもらえるかもよ。じゃあまたね。いつでも連絡してきてね」
なんて優しい人だ。
「本当に今日はありがとうございました」
俺たちは幸せな気持ちで、帰路につこうとしていた。
体育館を出ると、6人ほどの男のグループが前を歩いていた。
嫌な予感はした。
後ろを振り返るなり、俺らに向かって言葉を放った。
「お前ら、さっき女子のチア見てただろ!いいなぁ〜うらやましいなぁ。大丈夫か?鼻血出なかったか?あははは」
完全に馬鹿にした見下した言動だった。
俺の仲間の3人は恥ずかしそうに下を向いたが、俺は奴らを睨み返した。
「覚えとけよ。絶対に、絶対に男子チアを作る。そして男子チアという競技をみんなに認めてもらうんだ!」
言い返したかった思いをグッと我慢し、唾を飲み込んだ。
結果で示す。
1年後、必ず認めさせてやる。
強く言い聞かせ、俺はさらに奮い立った。
つづく
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第24話の登場人物 整理
ケイタ(俺)=筆者であり、主人公。愛知県・蒲郡市出身。豊橋東高校卒業。
カズキ=ケイタが大学に入ってから心を許した初めての友人。クラスメート。
ショウヤ=ケイタのクラスメート。千葉県出身で、趣味は歌うことと踊ること。温厚な性格。
タカラ=ケイタがアナウンスサークルで出会った仲間。体重は40キロ台でチーム1の軽量。アクロバットが大好き。
メグミさん=JAGUARSに所属する大学2年の女子学生。初めてケイタがJAGUARSで知り合いになった人。
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