道のりは険しい?弱点発見〜男子チア物語第28話〜
2013年11月上旬。
学園祭シーズンが終わり、キャンパスにはどこか寂しさを感じていた。
小学生の頃からいつもそうだった。
イベントが終わった後の虚無感、物寂しさ。
ある意味、青春というのだろうか。
俺はいつものように大学で授業を受けていたが、頭の中は次の日曜日のことでいっぱいだった。
「今度、もし良かったら、あなたたちブルーライオンズに来たら?とりあえず、次の日曜に体験練習会があるから、そこに来てくれたら、いろいろ技を教えてあげられるわよ」
社会人男女チアリーディングチーム「ブルーライオンズ」のレイコさんが豊島体育館で言ってくれた言葉だ。(※第26話)
メンバー3人を誘ったが、あいにく予定が合わず、俺1人で行くことになった。
「ああ、楽しみだなあ。いろんなことを吸収して、チームに還元しよう」
俺は“本物”のチアに触れられることに心を躍らせていた。
それから数日後の日曜日。
小田急線「梅が丘駅」にレイコさんと待ち合わせていた。
「やっほ~!よく来てくれたね!」
レイコさんは満面の笑みで登場した。
「今日はよろしくお願いします!」
レイコさんの明るさに負けじと俺も元気よくあいさつした。
「ちょっと歩くんだけど。じゃあ行こっか!」
目的地の体育館までレイコさんと徒歩で向かうことにした。世間話をしながら15分ほど歩くと、気付いたら到着していた。
楽しみではあるものの、いざ新しいところへ飛び込むのは緊張する。
俺は恐る恐る体育館の扉を開いた。
「集合!」
その瞬間、男女のチアリーダーたちが一斉に俺の前に並んだ。
リーダーのトウコさんが言った。
「今日は明治大学のケイタくんが体験に来てくれました。明治大学で男子のチアリーディングチームを作りたいそうです。みんなで応援してあげよう!今日はチアを楽しんでいってね」
優しい言葉に、胸が熱くなった。
続けて俺もあいさつした。
「初めまして!明治大学1年のコバヤシケイタと申します。僕は明治大学で男子のチアリーディングチームを作りたいと夢見ています!今日はチアリーディングを学びにきました。1から教えてください!よろしくお願いします!」
チアスマイルをした「ブルーライオンズ」のみなさんから暖かい拍手が送られた。
「じゃあ、始めるよ!まずは柔軟からだね!」
トウコさんの声に導かれ、俺は床に尻をつけ、両足を広げた。
「硬いねえ~!これから毎日柔軟ね」
トウコさんは笑いながら俺に言った。
開脚というものの、角度は90度くらいしか開かない。
「じゃあ倒すよ」
開脚したまま、両手を前に伸ばし体を倒そうとするも、ほぼ倒れない。
「痛い、痛いっす。トウコさん!!
さっそく自分の身体の硬さを痛感してしまった。
そこで気づいた。
俺には体が硬いという"弱点"があったということを...。
つづく
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第28話の登場人物 整理
ケイタ(俺)=筆者であり、主人公。愛知県・蒲郡市出身。豊橋東高校卒業。
レイコさん=ケイタとタカラが豊島体育館で出会った女性。社会人男女混成チアリーディングチーム「ブルーライオンズ」に所属している。
トウコさん=レイコさんと同じ社会人男女混成チアリーディングチーム「ブルーライオンズ」のリーダー。