Keita's talk その269 レンズのお話


 レンズの使いこなしの基本になるのは広角・標準・中望遠の3本セット。広角レンズの基準になるのが28mmで標準レンズは50mm、中望遠は100mm。ポートレート中心に考えると、中望遠は85mm。全て35mmフィルムの画角。

 この選び方には異論もあると思いますがそれぞれの基本を学ぶなら。という選択。撮影ジャンルによっては全く意味のない場合もある。


 今はこれが標準ズームという便利な一本にまとまっている。さらにもっと広角や望遠側までカバーする高倍率ズームレンズもある。これがもっとも恐ろしい(笑)

 そして、それが大きくて重いかといえば、軽量コンパクトで画質も良くてちょっとしたマクロ撮影もできるようになっていることがある。それでいてお値段的にもリーズナブル。それでいいじゃん。


 そうね、そうね。そんな方はこれ以降読まない方が良いと思います(笑)


 フィルム時代のズームレンズは利便性があっても画質はイマイチ。そんな風潮を変えたのが EOSシステム。このシステム以降うるさいプロも普通にズームレンズを使うようになった。


 そんなみなさんが口々に言っていたのはズームレンズって便利。って話。で、写りも良いからこれで十分でしょ。というのが広まってみんなズームレンズを使うようになった。


 ちょっと話が逸れますが、EOSシステムはズームレンズとAF、電磁絞り、高画質という今では結構当たり前のことをその時代に実現するために考えられたもの(EOSシステム初のフラッグシップカメラ EOS-1/EOS-1 HS は1989年の発売)。その要となるのがマウント変更だった。

 このシステム以降カメラの内蔵露出計と露出補正を利用したAE撮影も普通のことになる。 EOS-1 には露出補正を前提にしたサブ電子ダイヤルという大きなダイヤルがボディー裏側についていた。それとAFの使い勝手をよくする親指AFを実現したのもこのカメラから。


 マウント変更の最大のポイントはマウント径のサイズアップ。画質に関して前玉の大きさがよく言われるが本当に大切なのは後玉の大きさ。ここにサイズがあると前玉と後玉の大きさの差を小さくできるのでレンズ設計に余裕ができて画質を追求しやすくなる。


 例えば、開放F値の明るいレンズは、光をたくさん取り込むために前玉を大きくする。後玉までそのままのサイズではいけないために光を曲げて絞っていく。サイズの差が少なければ曲げる角度も浅くなって画質を追求しやすい。と、いう感じ。


 今は違うよ。そうね〜、レンズ収差というのを昔はレンズだけで取り除こうとしていたが、デジタル世代にはデジタル補正というのがあるので、少し状況が違っているかも。


 さらにレンズづくりは新素材と加工技術、コンピュータシミュレーションの進化で昔は実現できなかった設計も可能になっている。後玉のサイズにこだわる必要はないかもしれない。

 数値的な良し悪しだけでなく味わいと言われる官能評価を優先するときは、アナログ的な作り手の思いが大切で、そのときはやはりアナログ的な発想がポイントになる。

 レンズの収差は大体トレードオフの関係になっているので、どのバランスにするかがもとめられる。そのときに大切なのがどんな仕上がり、どんな写真を求めているかだと思う。このときに必要なのがアナログ的な発想。


 全てが満点なレンズなんてきっとできないし、そんなレンズがあったらつまらないので計測器にでも使えば良いと思う。


 悪い言い方をすると、ちょっとぐらい癖があった方がそれをどうやって使いこなすか考える楽しみが増える。絶対的な数字だけが全てでないのがレンズの世界。最近はそんな話をするレンズ設計者の方は少なく優秀なオペレーターが多い。その見極めは簡単で、ちょっとレンズで気になる部分を突っ込めばいい。


 きっちりした設計者の方ならニヤッとする。それはレンズ性能的に本来あってはいけないものを分かった上で残してあるから。それを使ってどんな味を出すかが腕の見せ所で、色々な見せ方をしてくれるのが天才。

 優秀なオペレーターは、計測結果の数値を並べたりしながらそれが残ってしまう理由を説明しながらこちらを小馬鹿にしてくる。お前の頭ではどうせこんな細かい数値は理解できないだろ。という感じ。

 そもそも数字を理解できることと写真に必要な味わいの違いすら分かっていない。そんなオペレーター集団が作ったレンズは仕事では安心して使えるが、作品撮りになると面白みに欠けるので出番が減る。

 こんなことを書いているオレはオペレーター集団と同じようなもの。優秀さと従順さはこの際気にしないでください。到底かないません。自分が気になっていることをつこまれたときの反応は同じようになる。天才にはなれない(笑)

 だからこそ、その違いもわかる。


 高性能なズームレンズはオペレーター集団がが作ったものに限る。それは、ズームレンズは単焦点の比較にならない問題点が出てくるので、味わいを考える余裕も少なく、完璧な数値で追い込んでいく方が良いから。

 作品作りで単焦点レンズが良いのは味わいも含めて楽しめるから。作品作りは自分の心を表現するので、数値的な絶対的正義を貫いたレンズはどんなに素晴らしい写真が撮れてもどこか冷たくなってしまう。


 そして、天才が作ったレンズを使うと新たな発見に出会える。天才の思考をちょっと理解したような気分にもなれる。気分だけでも十分(笑)

 デジタルという数字が正義の世界で改めて人間的な味わいを楽しむのは、今は少なき天才へのオマージュ。その答えも、イイ、ワルイ、とは別の曖昧なもの。


 だから写真(プリント)で伝える。


 って、ところで長くなったので、また、次回。


Keita's talk その269 レンズのお話 2018年6月20日

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