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JFL Week1 NARA CLUB vs Veertien MIE 奈良クラブ開幕戦紀行

アマチュアサッカークラブの最高峰リーグ、JFLが3月17日より開幕した。全16チームが争うJFLには、近畿圏に奈良クラブ、FC大阪、鈴鹿アンリミテッド、ヴィアティン三重、MIOびわこ滋賀と五つもある。JFLは今季、いくつかのクラブに目を引くトピックスがある。スペインで長くサッカー指導者として活躍され、スペインサッカー連盟の監督資格レベル3(JFA S級相当)を有する堀江哲弘氏がラインメール青森FCのアカデミーダイレクターに就任。鈴鹿アンリミテッドには日本サッカー界では前例のない、女性監督を招聘した。スペイン出身、ミラグロス・マルティネスが指揮を執る。

そして、フットボリスタやTwitterによる発信で名を広めた林舞輝氏がGMに就く「奈良クラブ」だ。そして私にとって言えば、ドイツ取材活動中にお会いした、当時ドイツ六部Bergheimに所属していたGK寺沢優太選手が奈良クラブへ移籍した。これは観に行かないわけには行かない。そして、奈良クラブを取り巻く人、環境とはどんなものなのだろうか。日本でのスポーツ取材活動は、奈良より幕開けする。

現地には午前9時に到着。小雨が降る中、グルメステージの準備、ゲームが行われる鴻ノ池運動公園内のならでんフィールド周辺では清掃活動が行われていた。

鴻ノ池運動公園出入口にはスターバックス コーヒー 奈良鴻ノ池運動公園店が居を構えており、県内最大規模のスタバで、従業員の方々も綺麗な店舗で働き甲斐があるのではないだろうか。注目はテラス。暖かい季節は開放感を存分に堪能できることだろう。

また、鴻ノ池運動公園周辺地区では活性化を図るため、都市再生整備計画を策定している。

雨が強くなった午前11時にソシオ会員の先行入場が始まり、午前11時10分に奈良クラブ選手・スタッフたちを乗せたバスが到着。サポーターたちは太鼓を鳴らし、フラッグを振り、チャントで彼らを出迎えた。午前11時15分に一般入場が始まってメインスタンドに入ると、屋根で雨を凌げる座席はあっという間に埋まり、何とか雨を凌げるであろうギリギリの座席を確保した。

キックオフは13時、それまで奈良クラブサポーターの方々にクラブと奈良県のスポーツ事情についてお伺いして廻った。

奈良クラブサポーターと奈良クラブとの出会いについては、学生時代に無料招待券が配布され、ゲームを観に行って興味を持った人や、トップリーグを戦うJクラブよりも地元クラブを応援したい、とあった。ただ、Jリーグ観戦経験のある奈良クラブサポーターからすれば、Jクラブのホームゲーム開催日は、街中にユニフォームを着たサポーターたちが溢れている賑やかな光景は日常的であろうが、奈良県では多く見られない、つまり、奈良クラブの認知もまだ十分ではない様子で、スポーツそのものの定着度も弱いようだ。 

そんな奈良県には、2013年に奈良県初のプロスポーツチームとしてバンビシャス奈良が創設されている。Bリーグ発足(16-17シーズン)からB2リーグ西地区を戦っているが三季連続で負け越しとなっており、奮起が期待される。      

注釈:今季でJFL五年目を迎える奈良クラブは、2015年から7位、10位、7位、8位と中位に甘んじている

スポーツをする環境においても充分に整っておらず、中学や高校になれば選手は県外に出ていくことが多いようだ。競泳でいえば、スイムピア奈良には25m屋内プールと50m「屋外」プールが、橿原市運動公園総合プールには50m「屋外」プールが、天理プールもまた50m「屋外」プールであり、そこでレースが開催されている。県内に50mプールが三つもある意味は大きいが、屋外となると、その意味は大きく異なる。待機時、天候によってはストレスの溜まる時間を過ごさねばならない。ただでさえ、猛暑の夏は水温が30℃近くになる可能性もある(レース開催時の水温は25~28℃)。筆者は中学時代に屋外プールで大会を過ごした経験があるが、間違いなく、屋外はストレスが溜まる。台風による中止の可能性もあるだけに、良い環境とは言えない、と個人的に思えるのだが・・。

しかし、奈良県には東京五輪出場を目指す一人の競泳選手がいる。ニッシンスイミングスクールマコト所属の難波美夢選手だ。先日のジュニアオリンピック(短水路)では、400m自由形で15~16歳の高校新記録となる4分1秒21を記録。この記録は2018 FINAランキング9位に相当する。世界記録はリオ五輪にケイティ・レデキーが記録した、3分56秒46(長水路)。チーム数そのものが多い大阪とは違って、奈良の競泳チーム数は大幅に少なく、競れる環境にない。そこで、難波選手たちをはじめ、ニッシンは他府県のレースに多く出場している。とくに、大阪の大学生がオープン参加として和歌山のレースに多く出場しており、そこは競れる環境にはある。しかし、難波選手の記録は国内女子選手では相手にならず、男子選手とレースし、勝てるレベルにまであるのだから、もはや国際レベル。4月2日からの日本選手権も、かなり期待が持てる状況にある。

サッカーで言えば、大阪府に日本最大級を誇る、十六面ものサッカーフィールドがあるJグリーン堺があるが、一方、奈良県フットボールセンターにはたったの二面しかない。奈良クラブ主催ゲームの開催場となる、ならでんフィールドと橿原公苑陸上競技場にはサッカーフィールドは一面ずつしかない。しかし、ならでんフィールドの芝について言えば、かつては黄色く枯れている状態の芝だったようだが、徐々に改善されており、ハード面は着実に進歩しているようだ。

また、東京五輪開催を受けて、奈良県ではトレーニングセンター構想があるのだが、施設などの具体的な構築までに至っていない様子だ。

話は逸れたが、奈良クラブ選手・スタッフとサポーターとの距離はとても近いようで、練習場ではお互い会話できるような間柄を築いているようだ。林GMによる、ソシオ会員限定のゲーム後のレビューという画期的なイベントは今後、各クラブやDAZNにどんな影響を与えるのか、興味深い。


ヴィアティン三重との開幕戦、0-1で奈良クラブは敗れてしまった。個人的には、前半は風雨にたたられ洗礼を受けた。やはり、雨中でのゲーム観戦は身体にこたえる。キックオフ前に、スポンサーの計らいで貼るカイロが観戦者全員に配布され、大いに助かったが、芯まで冷え切ってしまったので、もっと暖かい恰好をしておかねば・・。その雨のおかげで、ゲームにもなかなか集中して観ることができず、観戦力の低さも相まって、今季の奈良クラブがどういうサッカーをするのか、深く観察することができなかった。ただ、前半終了間際に先制され、追いかける状況にありながら、後半中頃に奈良クラブの攻撃がシュートで終わって守備ターンになった際、すぐさまリトリートしていくことには疑問を感じた。戦略・戦術として組み込まれたことであろうが、アグレッシブなサッカーを期待していたので、それとは正反対の展開は意外だった。とはいえ、こればかりは奈良クラブを定期的に観察していかないことには何とも言えないので、引き続き注目していく。

最後に、ドイツ滞在時に取材させていただいた、ゴールキーパー寺沢優太選手だが、残念ながらベンチ入りすら叶わなかった。個人的に驚くことに、先発した藤吉皆二朗選手は身長177cm、サブの上田智輝選手は身長180cm、寺沢選手は185cmとあるので、「身長やドイツでのプレー経験があるだけで優位にはならない」と思えた。寺沢選手もドイツでの経験を驕りにすることはないだろう。大学四年間公式戦出場ゼロだった彼が、ドイツを経て、いま日本でサッカー選手として歩んでいるのは感慨深い。日本におけるゴールキーパーの地位向上に彼は寄与する存在なので、ぜひ注目してもらいたい。

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