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不登校からの卒業(8)
2)不安期(つづき)
お子さんが学校に完全に行けなくなり、一気にご家族が不安になっているこの時期は、お子さん本人にとっても、とても辛い時期です。
隣の市に住んでいたYくんのことを少しだけお話したいと思います。
これは、私が出会った後、しばらくしてYくんとYくんのお母様からお聞きしたことです。
Yくんは中学卒業後、通信制高校に入学し、関西の有名私大に進学して、現在は大手の企業に勤めています。
そのYくんは、公立中学の2年生の9月から学校に行けなくなり始めました。
中学1年生の1月くらいから行けたり、行けなかったりしていました。中学2年生の4月からは頑張って通い始めたのですが、ゴールデンウィーク明けから、また、行けなくなり始めて、夏休み前はほとんど通えない状態でした。
夏休み明けの8月終わりに、学校が始まると、「もうダメだ。学校には行けない。」と全く行かなくなり、自室に引きこもってしまったのです。
それでも、9月の体育祭は出ることはできませんでしたが、担任の先生のあたたかいお声がけで、何とか校舎から見学しました。
でも、その後は全く行けなくなってしまいました。
ご家族ともほとんど話すことはなくなり、食事も自分の部屋で食べるようになっていました。
時々、リビングには出てきて、少しは話すこともあったのですが、お父様がお帰りになると、すぐに自室に入ってしまい、お父様との会話は全くなくなっていました。
完全に行けなくなった時でも、最初の間は、まだ、朝、学校に行く時間までには起きてきていました。
でも、だんだん朝が起きれなくなり、1ヶ月もしない間に、完全に昼夜逆転してしまい、朝、ご家族が起きてくる頃に寝て、夕方に起きてくるという生活になっていました。
起きている間はYoutubeを見たり、ネットを見たり、テレビをぼーっと眺めていたり、ゲームをしたりしていました。
オンラインの対戦ゲームをしている時に、時々、相手とオンラインで話すことはあっても、ほとんど、他人と話すことは無くなっていました。
お風呂も毎日入っていたのですが、昼夜逆転してしまった後は、2日に1回になり、3日1回になり、1週間に1回になり、とうとう10日1回くらいになっていました。
時々、お母様が「一緒にお菓子でも食べない?」とか「お風呂入ったら?」とか声をかけると、落ち着いている時は、「今いらない」「後で」とかの返事があるものの、時には「うるさい!」と怒鳴ったり、返事の代わりに壁を殴ったり蹴ったりしている音が聞こえることもありました。
ちょうどこの頃に、お母様からご相談をいただくようになり、
「腫れ物に触るようには絶対にしない」
「本人も含め家族みんなが普通の生活をする」
「毎日、必ず声をかけ続ける」
「挨拶は家族全員が普通にする」
「いつも、ありがとう、ごめんなさいはすぐに言うようにする」
と言ったことを必ず守っていただくようにお伝えして、お父様にも実践してもらいました。
お父様、お母様には、学校に行かないことが問題ではないこと、提案や指示などはしないこと、などを学んでいただきました。
それで、毎日、毎日、挨拶をし声をかけ続けていただきました。
その結果、ようやくYくんはお母様とは少しずつ話をするようになり、昼夜逆転から普通の生活に戻っていったのです。
Yくんが元気になった時に、この当時のことを、Yくんの後輩にあたる子ども達と一緒に聞いていると、Yくんは「何もする気にならない」「何で僕だけがこんなことになるんだ」「もうこのまま死んでしまいたい」と思っていたと言っていました。
後輩にあたる子ども達も「めっちゃわかる」「私もそう思っていた」「人生つんだと思っていた」と言って、共感していることがものすごく印象的でした。
Yくんも後輩達も、ゲームやYoutubeなんて、他にすることがないからやっていただけで、少しは面白いものもあったけど、全然、楽しめなかったと言っていました。
Yくんは、
「学校に行けなくなり始めた時も辛かったけど、この昼夜逆転していた時が、今までの一番辛い暗黒時代だった」
と言っていたことからも、本当に辛かったのだとわかります。
子ども達にとっては、全く動けない時が、本当に辛いことがよくわかりました。
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