【短編小説】"ドラえもんのいない「ドラえもん」"を、私が書くとこうなる。
↑こちらの小説にインスピレーションを受けて書いてみました。謎な仕上がりになりました。お楽しみください。
以下、本文。
☆
のび太は空き地で、土管の上に横たわっていた。
しばらくすると、ジャイアンこと剛田武が、肩をいからせながら、やって来た。
「おい、のび太、そこはオレの席だ、どけ。」
威圧的な空気に気圧され、のび太は言われるがままに、どいた。
「はぁー、昼寝しようと思ったのになあ。
予定が狂っちゃったなあ。どうしよう。そうだ、音楽でも聴こう。」
のび太は練馬から、渋谷のタワーレコードへと移動した。
試聴コーナーのヘッドホンで、好きなアーティストの曲を聴き狂うのび太。
「今の時代、spotifyで音楽は聴き放題だけど、盤には盤の良さがあるよなあ。」
などとうそぶきながら、足でリズムをとる。
肩に手の感触。振り向くと、出来杉とデート中のしずかちゃんが、のび太の肩に手を置き、笑っていた。ヘッドホンを取り外す。
「のび太さんも、"暗黒大陸じゃがたら"が好きなの?気が合うわねえ。デートはしたくないけど。」
デートしたいと言ったわけでもないのに、言う前から断られたのび太は、しずかが玄人向けの音楽を好むことに意外さを感じながら、「うるせー、ブス」と言い放つ。強がりだ。
瞬間、出来杉が、「しずかちゃんに何を言うんだ」とわめきながら、"暗黒大陸じゃがたら"のアルバム"南蛮渡来"を投げつける。
しかし、日頃から動体視力を鍛えていたのび太は、それを避けた。すると、うしろにいた、演歌のCDを買いに来ていた神成さんのこめかみに、CDの角が、したたかに突き刺さった。
「やべえ、ずらかれ!」
のび太、しずか、出来杉の3人は、いちもくさんに逃げ出した。
タワーレコードから出て、渋谷のガード下まできた3人は、肩を上下させながら笑い合った。
「まさか、野比くんの動体視力が、あんなにも優れているとはね。じゃあこれから、しずかちゃんとボクは原宿に服を買いに行くから。」
明治通りを新宿方面に歩いて行くふたりの背を眺めるのび太。夕暮れが街を包み込んでいた。
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