見出し画像

#20 応急処置にピース&ラブ?!

走っていたら足首を捻ってしまった、フットサルをやっていたら腿裏の筋肉を肉離れしてしまった、草野球で頑張り過ぎて肩が痛くなってしまった。

このように、何かしらの怪我をしてしまったら、どうしますか?

多くの方が、何かしらの方法で冷やす・アイシングをすると思います。氷嚢に氷を入れて痛いところにあてたりするのではないでしょうか。

もちろんひどい場合はすぐに病院に行くと思いますが、そうでもない場合は、数日ご自身でアイシングをしてから、良くならないから病院を受診なんていうこともありませんか?

怪我をしたら、アイシング。どこかを痛めたら、冷やす。

この考えは世間一般に広がってきている考えだと思います。

ただし、怪我の応急処置の仕方は少しずつ変化をしてきています。このアイシングという行為でも、議論の的になっています。


RICE処置

急性期(怪我をしてすぐ)のけがに対しての応急処置について、最も浸透しているのは、RICE処置(ライス処置)ではないでしょうか。

RICE処置

RICE処置は、4つのステップの頭文字から取られています。

Rest(休養)では、まずは患部を悪化させないように、安静にさせる目的があります。

次のIce(氷・アイシング)は、患部の腫れや痛みの低減、炎症を抑制、患部そして患部周辺の二次的な損傷を防ぐ目的です。

3つ目のCompression(圧迫)は、患部を圧迫することで、出血や腫れを防ぐのを目的とします。

最後のElevation(挙上)も、圧迫と同じように出血や腫れを防ぐのを目的とします。

POLICE処置

RICE処置が浸透してから、次にPOLICE処置というのが活用されるようになってきました。

POLICE処置

POLICE処置も同じように頭文字から取ってポリスとなっています。POLICE処置では、RICE処置に"P"のProtect 保護が追加され、そして"OL"のOptimal Loading 最適な負荷も追加されました。

Protectの保護では、長期の固定は避けて、動かすことの出来るところは動かすのを提唱しています。ただし、損傷を悪化させるようなことも避けることが必要です。

Optimal Loading 最適な負荷では、怪我・損傷した組織に最適なレベルでの刺激を安全に適切に与えることを意味します。怪我の組織に対して、何もしない(長期の固定)ことも、過度な負荷を掛けることも避けることが必要であり、ここでは"最適"な、"適切"な負荷がポイントになります。

RICE処置とPOLICE処置の違いとしては、患部を悪化させないようにしながらも、より治癒を良くさせるには、ある程度の負荷を掛ける必要があるというのが違いであります。

そして、この記事のタイトルである"PEACE & LOVE"という方法が次に言われるようになってきました。

PEACE & LOVE(ピース&ラブ)

PEACE & LOVE

PEACE & LOVE(ピース&ラブ)でも、これも各要素の頭文字を取っています。

PのProtect保護は、POLICEと同じように患部の保護を指します。受傷後数日は、痛みのある動きや活動を控えます。松葉杖やブーツの固定などによって、過度のストレスを避け、怪我の悪化を防ぎます。

EのElevationは、RICE処置やPOLICE処置と同じように患部を挙上します。

AはAvoid Anti Inflammatory medications 抗炎症薬やアイシングを避けるということが言われています。炎症は怪我の治癒やそのプロセスには必要なものであり、それを無くしてしまうのは、逆に怪我の回復を遅らせると考えられることから、これらが追加されました。

CのCompressionは、同じように患部の圧迫を意味します。テープなどを用いて行います。

EはEducation、教育です。患者や受傷者への教育であり、過剰な薬の服用や医療従事者に頼り切るような受け身の治療での介入を多くはせずに、自身である程度対処できるように教育することも必要です。

PEACEはどちらかというと急性期(受傷後24-48時間以内)での対応に近いと思います。それ以降の亜急性期や慢性期では、下記のLOVEが推奨されています。

LのLoad 負荷では、少しずつ負荷を掛けていきます。ポインは、"徐々"に"適切"に負荷を掛けていきます。この時、痛みや腫れの程度をガイドにすることで、過負荷による悪化を防ぐことが出来ます。

OのOptimismは楽観主義です。特に大きな怪我をしてしまったり、長期間のリハビリが必要な怪我などでは特に気持ち的に楽観的に考えるのが重要ということです。常にポジティブにリハビリや治療に取り組む事が鍵となります。

VはVascularizationは血管新生であり、有酸素運動を通して血液循環が良くなり怪我の修復を早めます。痛みのない全身運動などの有酸素運動で、自転車を漕いだり、水泳をしたりと負荷の小さい動きで行います。

最後のEはExercisesエクササイズです。よりアクティブなアプローチで、ストレッチをして可動性や柔軟性を取り戻したり、筋力を向上させたり、固有受容器というようなバランスを向上させるエクササイズを行ったりします。

ピース&ラブでは、今までのアイシングは避けるように伝えられているのが大きな特徴でもあります。

アイシングについての議論

POLICE処置からPEACE&LOVE(ピース&ラブ)では、アイシングが取り除かれましたが、アスレティックトレーナーやスポーツ医学の世界では、アイシングについて長年議論がされてきました(議論され続けています)。

その議論の中心が、アイシングによって怪我の治療時間(治癒)を長くしてしまう(遅らせてしまう)という点です。炎症は、治癒には必要な要素であるのに、それを抑えたりするのが怪我の治癒を結果的に遅らせてしまうのでは、ということです。

また上記に加えて、本来のアイシングの目的である、腫れを抑えたり、炎症を抑制させる効果が本当にアイシングにあるのかもまだまだハッキリとしていない部分でもあります。

そのために、怪我をしたらアイシングをする必要がないのではないかとも言われてきています。

一方、アイシングを使用する人達の多くは、痛みの低減の為に使用しているという声もあります。(冷やす事で、感覚が麻痺して、一時的に痛みを感じにくくなる)

さらに、炎症は特別悪いものではなく、傷を癒す為には必須なものとして考えるときに、炎症を"抑える"目的ではなく、炎症を"コントロール"する目的で用いられてもいます。

これらの議論がアイシングや患部を冷やすということについてされています。

個人的には、急性期(受傷直後の数時間)であれば、痛みのコントロール(痛みの低減)として使用するのは一つの方法だと思います。慢性的な怪我などにはそこまで必要ないかなと思います。ただし、習慣的にやっているアスリートなどであれば、大きな害がないのであれば、別に使用してもいいかなとも思います…

アイシングをする時であれば、氷(氷嚢など)を患部にあてる時間やタイミング(受傷直後?慢性的な障害?)には気を配る必要があります。

*小さい関節や脂肪の少ない部位であれば、時間は短めで10-15分ぐらいで、大きな筋肉や脂肪の比較的多い方であれば、15-20分ぐらいと少し長めに行います。


このように、初期対応(応急処置)のやり方は少しずつ変わってきていますし、まだまだわからないこともあるので、今現在も進行中で研究されていますので、今後も変わっていくと思います。もしかしたら数年後には、PEACE & LOVEの次の方法が一般的になっているかも知れません!

適切な応急処置が早期の安全な回復へと導いてくれることは間違いありません。

もちろん予防である、怪我をしない身体作りも重要になってきます!(防ぐことの出来ない怪我もありますが…)

*怪我や痛みなどは、医師や医療従事者の指導・指示に従ってください。

いいなと思ったら応援しよう!