バズに必要なのはアイデアより情報設計
拡散系の施策考える時って、「おもしろくて奇抜なアイデア考えなきゃ」ってなりがちだと思います。
確かにいいアイデアでバズることはあると思います。
だけどSNS時代の拡散施策においてより確実なのって、誰にどうやって届けるかっていう"情報設計"を怠らないことだと思ってます。
情報設計とは
モチベーション設計 = ファンが拡めたくなる"仕掛け"をつくること
ルート設計 = 誰が誰に拡めていくのかの"道筋"をつくること
情報設計とはこの2つの視点に想像力を働かせ、情報をどうやってディストリビューションするのかを設計することです。
どういうことか、直近のDAZNでの事例を例にとって説明します。
#ありがトーレス の裏側
世界的フットボーラー、フェルナンド・トーレス選手の引退試合の際にDAZNが仕掛けた、 #ありがトーレス ツイートキャンペーンはうまく情報設計ができた好例で
総ツイート数 : 6万超ツイート
ユーザーツイート数:1.2万ツイート
最高トレンド順位 : 東京 : 8位 / 福岡 7位
という結果を残すことができました。
モチベーション設計
プランニングの際にまず考えたのは、ファンがどんな感情を持っているか。
そして、その感情を拡散へのモチベーションへとシフトできるような仕掛けを考えました。
【モチベーション設計の流れ】
ワールドクラスのフットボーラーのラストマッチ、
世界が見つめる、二度とはないこの瞬間。
"惜別" "感謝" "応援" ”感動”
特別な感情を抱えたファンが大勢いるだろう。
そしてきっと、みんなの共通の想いは「ありがとう」だろう
↓
この「ありがとう」をうまくSNS上で吐き出させることで、
大きなムーブメントをつくれるのではないか。
↓
サガン鳥栖入団時にも使われ、鳥栖ファンの間で認知のある
キャッチーなパワーワード 「ありがトーレス 」をハッシュタグ化しよう
&
ラストマッチ前日の夜に一斉ツイート呼びかけよう(ラピュタのバルス的な発想)
こうしてまずキャンペーンを組み立てました。
ちなみにこのモチベーション設計は、一般のファンだけでなく、ステークホルダーやインフルエンサーに拡散を協力してもらえるかどうかにも、大きく関わります。詳しくは後述します。
ルート設計 - リレー導線を考える
トーレス選手の認知度・人気を考えると、このキャンペーンで反応してくれるファン層は広範囲にわたると予想できました。
でも、ファンに自ら発信・拡散してもらうきっかけづくりには、強制的な広告等の手法は不向き。
誰が誰に拡めていくのか、誰が話題にしていると自分も話題にしたくなるのか。いわば、どうやって"ありがとうのリレーを繋ぐか"を考える必要がありました。
そこでまず、以前のnote 「バズるって何?意味あんのそれ?」で触れたスポーツバズの黄金ルート、"コアファン→ミドルファン→ライトファン"に当てはめて、以下の図式をイメージしました。
コアファン = 鳥栖サポーター / Jリーグコアファン / 欧州サッカーコアファン
ミドルファン = 鳥栖市民 / Jリーグファン(他サポ) / 欧州サッカーファン
ライトファン = ライトサッカーファン (広くスポーツファン)
それぞれファン層とターゲットを想定して、よりコアからライトな層へ情報が伝播していくようなルートを設定しました。
ルート設計 - コアに火をつける
ルートを決めたらさらに、どこから火をつけてアツくさせるかを考えます。
まず、コアファンにとってのサッカーの情報源であり、かつ、このムーブメントをつくることでプラスが生まれるステークホルダー(Jリーグ・サガン鳥栖・サッカーメディア等)に協力を呼びかけ、キャンペーンの告知を一斉に行うことで、ムーブメント感を醸成しました。
そして一番のコアである "鳥栖サポーター"をアツくさせるため、彼らの"アイドル"(=KOL)であるサガン鳥栖の選手たちにも協力を呼びかけました。
トーレス選手が普段からチームメイトに愛されていたことも大きく影響し、選手の皆さんは試合前日にもかかわらず、積極的にツイートをしてくれました。
さらにこのムーブメントを大きく拡げるために、サガン鳥栖以外のサッカー関係者や、サッカー以外の分野に軸足を置く関係者にも協力を仰いだところ、多くの方が快く協力してくれました。
通常、特定のクラブや選手のプロモーションにおいて、外部のステークホルダーからの協力を得ることはとても難しいです。
しかし今回ここまで多くの方にご協力いただけたのは、トーレス選手自身の持つ認知度・好感度やモーメント自体の強さに加え、前述の拡散したくなるようなモチベーション設計が功を奏したんだと思います。
協力を仰ぐ先としても、このトーレス選手の引退に共感してくれるストーリーを持つ方にお声がけしています。
おそらく、ただの試合告知をベースに、ランダムな相手にプロモーション依頼をしていたら、ここまでのムーブメントにはならなかったはずです。
スポーツのマーケティングって
こうしてコアから拡まった #ありがトーレス の輪はさらに拡がっていき、
総ツイート数 : 6万超ツイート
ユーザーツイート数:1.2万ツイート
最高トレンド順位 : 東京 : 8位 / 福岡 7位
という結果を残すことができました。
この結果をどう捉えるか。
この施策しかり、スポーツのマーケティングって結局、選手やチームの人気だったり、ファンとのエンゲージメントの強さ無しには成り立たないものだと思っています。
ここのとこ偉そうにスポーツマーケのことを語りはじめましたが、今までこの点に関しては自分自身よく悩んでました。
もともと自分が一般商材を扱うマーケティングをやっていたこともあり、ここで数字出したって結局、スポーツの人気にあやかってるだけで、自分が何かをできてるわけじゃないんだって(そしてDAZNでスポーツマーケやってるってかなり恵まれた環境だと思うし)。
でもこの案件を通して、すこし吹っ切れた気がしてます。
確かにスポーツってパワーコンテンツだし大きなポテンシャルをもってます。だけど、そこにある熱量を再現性持ってマーケティングに落としこめたら、1あるものを10にできたら、それはとても意味あることなんじゃないかって。
今回の施策は前述した通り、ただの試合告知を中心にプロモーションしていたら、ここまでのムーブメントにはならなかったと、振り返った時に思いました。
だとしたら、自分やDAZNという存在が、すこしでもスポーツの発展に協力できてるんじゃないかなと思いました。
・・なんか感傷的になったのでここでやめておきます。笑
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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