バズるって何? 意味あんのそれ?
ソーシャルマーケティングにおいて、いわゆる"バズ"の存在価値については是非が問われがちですが、僕は"バズ"肯定派です。
なぜかというと"バズ"はうまく理解し、コントロールすることで、普段のオウンドSNSのオーガニック運用では届きづらい層に対してリーチできるからです。
しかも広告という強制的な手法ではなく、友好的に、です。
DAZNに入って約2年ソーシャルマーケティングに携わってきましたが、入社してから今日まで毎日のように "バズらせろ" と言われて来ました。
外資ってそもそもバッサリと人事的判断をするし、黒船DAZNは相当シビアだろうなというバイアスイメージを持って入社していたので、「バズらせんとクビになるなマジで」と思いながら、毎日バズについて考えて来ました。
「バズってどうやったらつくれんの?」「そもそもバズってなに?」「バズらせるって意味あんの?」「バズってマーケ的にカネになんの?」などなど、ハテナだらけの自問自答や自己否定を繰り返しましたが、苦労した甲斐あってようやくバズの正体が見えてきました。
"バズ"って何なの?
SNS上で"バズっている"状態とは何か。マーケティング的に有益な定義をするのであれば、
普段あるコミュニティの内側だけで消費されている情報が、そのコミュニティの外側の人にとっても消化されうる性質をもち、自走して拡がっていくさま
としておくと、体系的に有用なバズの解釈ができるようになるな、というのが今のところの答えです。
どういうことか、直近にバズっていたツイートを例にとって説明します。
"横綱 鶴竜 バスケ始球式で3Pを沈める"
横綱・鶴竜関が、バスケットボール男子日本代表の親善試合の始球式に登場し、見事3Pシュートを決める様子がバズりました。
この情報の発信源は 日本バスケットボール協会 "JBA"のTwitterアカウントのツイートで、当該の投稿には 2.4万いいね / 8,000RT がついています。
同アカウントから投稿された、始球式後の試合のプレー映像のツイートのエンゲージは平均しておよそ 1,000~4,000いいね / 100~1,000RT くらいなので、明らかにこの投稿は拡がりが大きく、"バズ"っていることがわかります。
では、誰がどのようにこのツイートに反応して"バズ"っているのか。あくまで推測の域を出ませんが、以下のような流れになっていると思います。
・美しくしなやかなフォームや、手首のフォームをシュート後も残しているあたりのコアファン向けのギミックにフォロワーであるバスケ日本代表コアファン層+周辺のバスケファン層がエンゲージ・拡散
↓
・3Pシュートの難しさや、力士の運動神経を理解している、広くスポーツファン層がエンゲージ・拡散
↓
・スポーツエッセンスのある細かいことはわからないが、力士がバスケをしているというギャップに対して、バスケファンやスポーツファンとたまたま繋がっているNotスポーツファン層がエンゲージ・拡散
*概念図が雑ですみません・・
象徴的な現象として、スポーツのテキスト速報アプリ 「Player!」を手がける、若月翼くん (@wakatsubasa)の引用ツイートが8.5万いいね/2.4万RTと、本家のツイートのエンゲージを大きく超えています。
若月くんのフォロワーはアカウントや彼の活動の性質上、バスケにとどまらずスポーツファン層が多いことが予想されるので、"鶴竜3P"はより広いスポーツファン層にとっての関心を捉えることができる性質の情報だったということがわかります。
スポーツ"バズ"の黄金ルート
先ほど記した"バズ"の定義
普段あるコミュニティの内側だけで消費されている情報が、そのコミュニティの外側の人にとっても消化されうる性質をもち、自走して拡がっていくさま
を今回の事例に当てはめて解釈すると、
普段あるコミュニティ(バスケファン)の内側だけで消費されている情報(バスケ情報)が、そのコミュニティの外側の人(広くスポーツファン)にとっても消化されうる性質(横綱による美しい3P)をもち、自走して拡がっていくさま
となります。
こと、スポーツにおける"バズ"は
コアファン→ミドルファン→ライトファン
この黄金ルートを介して起こることが多く、このルートを通れるものは広くスポーツファンのエンゲージを得られることが多いです。
今回のケースでいえば、競技は違えど力士という同じアスリートがもつポテンシャルが共感・驚きをもってバスケのコアファン・ミドルファン・ライトファンがエンゲージした形となりました。
このたった1本のツイートを通してJBAアカウントは、普段バスケを追っていないスポーツファン層(バスケミドルファン・ライトファン)という"ポテンシャルカスタマー"に対して、
「このアカウントはバスケ日本代表の試合の映像クリップをリアルタイムに流してくれてるのか、フォローしよ」
「バスケ盛り上がってるとは聞いたけど、いま日本代表の親善試合やってんのか」
「9月はワールドカップやんのか!DAZNで観なきゃ」←
などといった興味喚起・態度変容を促せる機会を得ています。
しかもコアファンからのシェアという、SNS上の繋がりを通じてのコミュニケーション=強制的な広告でのアプローチよりも友好的な形で。
ちなみに、ライトファンだけに対してバズが起こるものもありますが、それはスポーツの本質的な価値を表していない=スポーツマーケティングの対価として還元されるものが少ないと思っています。
(例 : 球団やスポーツとの文脈が薄いアイドルの始球式とかで強く反応するのは、そのアイドルのファンだけ、など)
でもさ、"バズ"って、狙ってる層に拡がるようにコントロールできなくない?
次はこんな疑問が浮かんでくると思います。
これについてもある程度の法則を見つけてきた実感があるので、それはまた次回まとめようと思います。
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