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台湾の芋焼酎

前からずっと気になっていた、台湾で芋焼酎などを造る「恒器製酒」に、台湾出張の合間に行ってきました!

蒸留所正面

代表の羅(ラ)さん直々に案内していただきました。学生時代東京に住んでいたこともあり、日本語ペラペラ。

恒器製酒は、2017年に羅さんが立ち上げた蒸留所。台湾は民間での酒類製造が2002年まで禁じられていており、ウイスキーで有名なカバラン蒸留所の設立も2005年。
2002年以降も酒類製造免許の取得のハードルは高いらしく、現在所持している事業者は350社ほどで、造っているのは100にも満たないとのことでした。工業団地で土地を買わないといけない、そして税金も高く、台湾では酒類のECもいまだにNG。小さな事業者はこれでは大変。

日本同様に台湾でも昔は芋を使った酒が造られていましたが、製造禁止の影響でその文化はすっかり忘れて去られているとのこと。恒器製酒は、この失われた伝統を復活させるために活動されています。

主に芋焼酎と米焼酎を造っており、伺ったタイミングは芋焼酎を製造していたので工程を見させていただきました。

台湾芋焼酎の製造プロセス

そもそもサツマイモは薩摩だけではなくあらゆる地域で生産が可能。もちろん台湾でも造られている。

形が良くない為に市場では安くなってしまうB級品を使用している。「台農57号」という芋の品種をメインで使用しており、当然食べても甘くてめちゃくちゃ美味い。

甘くてとても美味い

芋の蒸し機は、小籠包や饅頭で使用される業務用の機械を取り入れている。まさに台湾スタイル🇹🇼

業務用機械が2台

そして発酵は、なんと全量芋麹仕込み!(ドンブリ仕込み)
米焼酎を造られているので、日本の芋焼酎同様、2次で芋をかけているのかと思いましたが、違いました笑
タンクも酒類製造用ではないとのこと。

見させていただいたタンクの醪は2週間経過しており、アルコール度数8〜10%

蒸留機はポルトガル産の600リットルのアランビックスチル。

ヘッド(50-60%)はそのまま商品化、ミドル以後は再蒸留。

それからできる定番商品は40%と60%の下記2本。

恒器製酒の看板商品

日本式芋焼酎とは違い、全量芋麹であるため醪のアルコール度数が上げられない為に2回蒸留をせざるを得ませんが、それが特徴となって日本では焼酎として出せないハイプルーフ焼酎ができあがります。
味わいはクリアで雑味がなく、個人的に60%はユリの花やライチ、マスカットが感じられてとても好みでした。

米焼酎

芋焼酎同様に全麹仕込みで、麹は黒麹(芋焼酎では白麹を使用していました)なので泡盛スタイルで造られてます。

米焼酎醪。どれくらい経過しているかわからない。
日本から取り寄せ

米焼酎も50度台で、とてもおいしかった。

そして芋焼酎・米焼酎とも樽熟成も行っており、熟成庫には100-150ほどの樽がありました。

250ℓと50ℓの樽

ハンガリー産とのことで、フレンチオーク樽の新樽。リチャーも樽を分解してバナーで自分でするとのこと(笑)

代表の羅さん
芋の樽熟成商品。樽とさつまいもの"ま"で樽魔

その他の商品

恒器製酒は焼酎だけでなく、台湾の豊かな土壌からできる果実を使った商品も製造しています。それも台湾では2002年まで民間による酒類製造が認められていなかったため、その芋酒文化は根付いているはずもなく、焼酎だけでは事業を成り立たせるのは難しい。

今回伺った際に芋焼酎造りに並行して、ライチを漬け込むリキュールのために剥いていました。

台湾産ライチ

一通り焼酎の製造工程を見させていただいた後、試飲コーナーで商品数の多さにびっくりしました。
羅さん曰く、焼酎を広める一環でたくさん取り組んでいるという。
たくさん果実酒を造られているとのことで、最初に見たライチリキュールを飲みたいとリクエストすると、それとは別にライチを醸した酒もあると!!

想像の通り、収量が悪い為に100本程度しかリリースされておらず、これは即完しており、最後の10mlを飲ませていただいた。
これが感動するほど美味い!!

ライチブランデー
最後の1杯いただきました

他にもフルーツブランデーがあるらしく、バナナ・桃・葡萄などを造ったと。どれも試飲用しか残っていなかったけど、素晴らしかった。

どちらもフルーツブランデー。樽熟成している

他のリキュールも相当数あり、聞き馴染みないものなどフルーツ王国台湾の豊かさが非常に感じられた。

試飲コーナー
漬け込んだ容器が1000個以上あるとのこと
油甘果(アムラ)
どんなもの?と聞くと例えるのが難しいと言われた
漬け込んだ後のマーガオ

羅さんの想い

2017年蒸留所設立だが、2011年から家で試験的に作り始め、免許取得に6年要している。
そして驚きなのが2011年まで、酒を全く飲んでこなかったらしい。
なぜ始めたのか問うと、2002年に解禁されてまだ誰もやっていないから、これはビジネスチャンスだと感じたと。

将来の大事な顧客だから
地元学生との交流を親密しているとのこと。

そして酒造りは全てYahooで検索して勉強したという。
前述した芋蒸しを小籠包の機械で行ったり、樽を分解しチャーをバナーで焼いたり、全て自分が考案したそうだ。
本年度はアグリコールラムを造りたいとのことだが、サトウキビ畑の近くで造りをしないと相当数のサトウキビを持ってくるか、あるいはジュースが輸送中に腐ってしまうが、大きなタンクローリーを借りて、発酵させながら300km輸送してみるという、これまた普通では考えないようなアイデアを持っている。うまくいくかわからないが、普通では考えられない発想には、尊敬しかない。

今では酒が大好きになり、勉強の為に身銭を切って色んな酒を勉強しているという。
そして自分達が台湾芋焼酎のスタンダードを作るという気概をもっています。
数年後には、台中にショールームを兼ねた蒸留所も設立したいとのこと。

その行動力とゼロベース思考が勉強になり、非常に刺激を受けました。

桃園空港から近いので、台湾に訪れた際にはぜひ伺うことをオススメします。売店で商品を購入することもできます(カード使用可)


羅さんありがとうございました!

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