消費者調査の手法選択について
消費者の意見を聞いて、商品・サービス開発に活かせるデータが必要になったとき、皆さんはどのような方法を思いつきますか?
おそらく、多くの人はアンケート調査を一番先に思い浮かべるのでは無いでしょうか?
しかし、そうやって消費者調査=アンケートと考えてしまうのはあまりにも安易です。本記事では、調査を実施する上で必要なステップを細かくまとめていきます。これから調査実施を検討している方は参考にしてみてください。
何を調べるのか
調べるとはわからないことを調べるための行為ですが、わからないことがわからないという方も多く見受けられます。
わからないことがわからないということは、とても良くない状況と捉えてください。
この記事を読んでいるということは、皆さんの中でブランドを作ったり、ブランドを管理したいと思っている方たちだと思います。
その状況にもかかわらず、わからないことが何か分からないということは、情報が足りていなすぎる証拠です。
そんな時はまずはグーグルでも人に聞くでもなんでも良いので、いろんなお話や経験、あらゆるデータを見てみてください。そうしていく中で、きっとわからないことが何かが分かってくると思います。
調べる内容は状況や目的によっても異なりますが、主に以下のようなものがあります。
業界全体の状況(成長性、トレンド、課題、法規制、商慣習など)
消費者実態(ニーズ、行動、ライフスタイル、価値観 など)
社員の意見(一緒に働く仲間の意見や成し遂げたいと思っていること)
上記の中で案外見落とされるものに、社員の意見があります。
ブランドは単に消費者の意見を聞いていればいいというものではありません。
ブランドとしてどういう方向性に行きたいのかは社員や仲間の意見がとても重要です。なぜなら、社員・仲間が賛同しないブランドの姿はブランドとしてはとても弱く、消費者に強固なブランドイメージを持ってもらうことには繋がらないからです。
As is & To be
調べ物をする上でとても大事になるモノとしてAs is と To beがあります。
As is とは現状のこと。To beとは理想のことです。
どんなビジネスや活動にも必ずこの理想と現状というものが存在しており、
そこには必ずと言っていいほどギャップがあります。
もし、ギャップが存在しないのであれば、それはそれで問題です。
企業やブランドが成長をしたいと思っている以上ギャップがあって当然だからです。
このギャップを埋めていく作業こそが、MarketingやBranding活動です。
だから、まずは現状をしっかりと捉え、理想が何かを見える状態にしておかないといけません。この現状を捉えるときに必要になってくるのが、リサーチ(基礎調査)となります。
皆さんが何に困っているのかを明らかにし、データを集めることによって困りごとが解決され、一歩前に進む。ここに調査を行うことの意義があります。
As is(現状)をしっかりと把握し、To be(理想)が何かを明らかにしていくことから始めましょう。
調査背景の設定
調査を実施する際には必ず、なぜその調査を実施する必要があるのか、調査を実施するに至った背景をまとめておきましょう。
例)
・少子高齢化の影響により、近年では〇〇業界の市場規模は減少傾向にある
・当社売上も市場縮小の影響を大きく受けており、売上が昨年比で10%減少している
・生き残りをかけるべく、〇〇業界と親和性の高い△△業界へ進出しようと考えている
・△△業界に関するマーケットデータが手元に存在しないため、状況が不明である
・進出した際のポテンシャルを見通すためにも△△業界全体のマクロ数字の理解が必要
調査目的の設定
調査背景がまとまったら、次に行うことは調査目的の設定です。
この調査の目的を達成するために調査を行います。
例1)△△業界に関するマクロ市場環境に関するデータの取得
調査論点の設定
調査目的が整理されたら、次は論点をまとめます。
論点とは調査目的を達成するために確認・検証をすべき内容のことです。目的が大きなゴールとしたら、論点はゴールに辿り着くために必要な手段です。
目的を達成するための手段として論点を設定していきます。通常、疑問形で終わる形にして設定してあげると論点がまとまりやすくなります。
例1)
・△△業界全体の売上は伸びているのか?
・△△業界のお客様はどのような人が多いのか?
・△△業界にはどのような規制があるのか?
・△△業界ではどのようなプレイヤー(競合)がいるのか? などなどです
調査後のActionの決定
調査を行うということは、何かのデータがなくて前に進めなくて困っているからだと思います。調査で得られた結果を用いてどのような行動ができるのか、調査を実施する前に定めておきましょう。
例1)△△業界への進出意思決定をおこなうこと
調査手法の決定
次はいよいよ調査手法の決定です。
調査手法は多様ですので、都度どのような調査が最適なのかについては調査目的と論点によって決定しましょう。
また、調査は必ず一回で終わるというものでありません。
ステップを踏んで実施していくこともありますので、そのように覚えておきましょう。
それでは、代表的な調査手法についてひとつずつ見ていきましょう。
「Desk Research」
ネット検索、新聞記事検索、国勢調査、
など、すでに実施されたアンケートなどの調査結果を調べること
ちなみにデータには1次データと2次データというものがあって、
1次データとは自分たちで調べて取得したデータのこと。
2次データは第三者によって取得されたデータのことです。
このタイプの調査では第三者によって取得されたデータを調べます。
なので、なるべく権威性が高い人や機関が調べた情報を参照するようにしましょう。
「Interview 調査」
調査には探索系調査と検証系調査というものがあります。
探索系調査とは仮説が存在しないときに、行う調査と一般的に言われます。
仮説とは〇〇なんだろうか?など確定していない仮の説のことです。
みなさんがもし、中国人のお茶の飲み方について把握したいとした場合、
どのような飲み方をしているのか、分からないことが多いと思います。
そんなときにすぐにアンケート調査などはできません。まずは聞くほうが早いです。
なぜならアンケートでも何を聞いたら良いのかすらわからないからです。
ここについては、アンケートの部分で記載します。
「エスノグラフィー調査」
探索系調査にはインタビュー以外にも他の手法があります。
エスノグラフィと呼ばれる手法で、人類学の分野で発展した調査手法です。
本来エスノグラフィ調査は少数民族などの生活実態を把握するために、学者が数週間〜数ヶ月一緒に生活を共にして行う調査です。
マーケティングの文脈では、家庭訪問をして生活実態を把握したり、特定の場所に訪問して様子を観察したりします。
そのうえで、行動の理解、行動の裏にある背景の理解などを行います。
インタビュー調査をあわせて実施することも多いです。
「アンケート調査」
アンケート調査は検証調査の一種です。仮説を検証する際に使用します。
また、多くの人の回答を得ることができるため、意見の大きさを把握できます。
アンケートではアンケート用紙に書いてあること以外の把握(検証)はできません。
当たり前ですが、アンケートで何でも分かると思っている人が後をたたないので、強調しておきます。もう一度いいます。アンケートではアンケートにある質問と選択肢を超えてくるデータを手に入れることはできません。
だから、しっかりと仮説をつくり、何を検証したいのかを明らかにして、
どのような結果を求めているのかを事前に明確にしておきましょう。
「Home Use Test HUT)」
みなさんが、もしサンプル品を作成して実際に使ってもらいたい場合などに有効な調査手法です。ホームユーステストと呼ばれる手法は、実際に使用する環境に近い状態でサンプル品を使用してもらった後、使用評価をアンケートやインタビューを用いて把握します。
この調査のポイントは普段の使用環境下でサンプル評価をしてもらえることです。
一方、使い方などを細かく指定したりコントロールしたい場合は向いていません。
「Central Location Test Survey(CLT)」
HUT調査の場合は普段の使用環境下でサンプル評価をしてもらえるけど、
使い方などの指定やコントロールができないと言いましたね。
もし、厳密にコントロールをしたい場合は、同一環境下で使ってもらう必要があります。
つまり、会場に集めて行えば良いんです。
ただし、会場にいれる時間は長くても1時間〜2時間ですよね。
だから長期間使ってみないと効果がわからないもの(シャンプーなど)はできないです。
でも、シャンプーのパッケージが目立っているかどうかをチェックしたい場合はドラッグストアの棚を再現して評価できますね。
また、広告に使うための表現物(動画などの素材)や新商品などは情報漏洩リスクがあるので、会場で行うことによって守ることができます。試食評価などでもよく使われる調査手法です。
まとめ:
消費者調査はアンケート調査だけではないことを知っていただけたかと思います。そして、何を調べるのかの事前情報の整理がとても重要であることも分かっていただけたかと思います。今後はアンケート調査やインタビュー調査の設計方法についても詳しくお話をする機会も設けよと思います。
消費者調査についてご不明点があればいつでもご相談くださいね。
マクロミルチャイナ株式会社
長谷川恵介
k_hasegawa@macromill.com