確率思考の戦略論_マーケターはPreference獲得に努めよ
ふと、我に返ることがあります。 私たちマーケティングに携わっている者は何を本質的な課題として仕事に取り組んでいるんだろうと。
✔売上を上げる
✔利益を上げる
✔社会に貢献する
✔ステークホルダーへの還元
どれも間違ってはいないように聞こえます。 でも、本質ではないように思えてしまうのです。 ドラッカーは企業の目的を以下のように述べています。
企業とは何かを理解するには、企業の目的から考えなければならない。企業の目的は、それぞれの企業の外にある。企業は社会の機関であり、目的は社会にある。したがって、企業の目的として有効な定義は一つしかない。顧客の創造である。
P.F.ドラッカー. [英和対訳] 決定版 ドラッカー名言集 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.262). Kindle 版.
では、顧客を創造するとはどういうことなのか。ここに本質が眠っていそうだということで、『確率思考の戦略論』を再読してみました。これは名著中の名著ですので、マーケティングに携わっていて読んだことが無い方は是非読んでください。著書の森岡さんはユニバーサルスタジオジャパンをV字回復させた敏腕マーケターとして有名です。
本質は消費者のプリファレンスにある
この本の中で、森岡氏は我々が競争し奪い合っているのは、消費者のプリファレンス(Preference)にあると説いています。
市場売上= 述べ購入回数 × 1購入あたり平均購入個数 × 平均単価
この数式は絶対に変わらない真実です。 そして、各企業は延べ購入回数の中で、自社ブランドが選ばれるようにシェア争いを繰り広げています。 このシェアというのは、消費者が購入をしてくれるかどうかで決定されます。つまり、消費者の意思決定がシェアを決定づけるということは、その意思決定が何によって決まるかがわかれば良さそうです。
意思決定はまさに、消費者のPreferenceによって決まっていると森岡氏は話します。そして、シェアの奪い合いは「Preferenceの奪い合い」と言い換えています。
Preference(プリファレンス)とは、好意のことです。
この好意度を上げることこそが、マーケティングの本質であると森岡氏は説いているのです。
購入意思決定はどうやって起きているのか?
Preference(好意度)によって決定される消費者の購買意思決定はどのようになされるのかを、この本の中では統計学を使って説明しています。 まずは、簡単な例で説明します。
質問1:あなたは今からビールを飲もうとしています。どんなビールを頭の中に思い浮かべましたか? おそらく2~3つの銘柄が思い浮かんだんではないでしょうか?
それでは次に、その銘柄に対する皆さんの好意度をつけてみてください。
私の場合、
Asahi:50%
Suntory:30%
KIRIN:20% のようなイメージです。
パーセンテージで表された数字こそがプリファレンスです。
そして、頭の中に思い浮かべたブランド郡のことをEvoked Set(エヴォークト・セット)、考慮集合と呼びます。
このEvoked Setの中に入った商品がそれぞれのPreferenceに影響されながら、消費者はランダムに選んでいるというわけです。
少し難しく言うと、我々の意思決定は、それぞれのBrandに対するPreferenceによって決まる確率に従っており、どのブランドが選択されるかはランダムに決まっているということです。Preferenceの順位が高ければ高いほど、購入確率は高くなります。
補足として、カテゴリーの平均購入回数の大小に関わらず、Preferenceによって定まる確率に従ってブランド選択がされます。
自ブランドがどれくらいの回数購入されるのか予測できる?
自社ブランドが選ばれる「確率」は以下の式で表すことが出来ます。
この数式は負の二項分布と言われるものです。
こんな数式普通分かるはずがありませんよね。
大丈夫です。わからなくても問題ありません。 どうしても知らないと嫌だっていう人はいるかも知れませんが、 本当にわからなくても問題は有りませんので、ご安心ください。 どうしてもという方のために、解説動画を貼っておきます。
上記の数式を使えば、一定期間内において、自社ブランドが選ばれる回数の確率がわかります。つまり、売上予測に使えるデータを手に入れることが出来ます。
Mは「自社ブランドを全ての消費者が選択した延べ回数を消費者の頭数で割ったもの」です。Mは選ばれる確率そのものです。
本の中では、AKB総選挙を例にとって説明しています。
一定期間内に、いつ、誰に、何票、投票しても良い世界感を思い浮かべてください。その世界で、一定期間に〇〇ちゃんに投票された票数を、選挙権を持つ全員の人数で割ったものです。ここで重要なのは、市場全体の確率を正しく計算するために、投票権はあったが投票しなかった人の人数も含めた母数とすることです。
そして、このMしかコントロール出来るものは無いということなのです。
この数式の中で我々が直接コントロール出来るものはMだけなんです。
まとめ:マーケティング(企業)の目的はPreferenceを上げること
今回は、マーケティングの本質とは何なのかについて、森岡氏の著書『確率思考の戦略論』を題材に書いてきました。 顧客を創造するとドラッカーは言っていますが、まさに顧客創造とはPreferenceの獲得だったということです。そして、売上を予測するモデルにもこのPreferenceは重要なファクターとなっていることがわかりましたね。 今後、このPreferenceをどうやったら高めることが出来るのかもっと勉強してお伝えしたいと思います。
最後におまけですが、私の読書メモ&気づきのノートを載せておきます。
誤字脱字については、個人用ノートのためご了承ください。