頑張ろう中堅 !vol.11「新自由主義と教育」
「崩壊するアメリカの公教育~日本への警告~」 岩波書店:鈴木 大裕 著
今日は本の紹介です。
多様性という言葉が、本来のマイノリティを守る言葉として以上の力を持ち始めているいまの世の中において、私自身もあまり「絶対〇〇した方がいい」というようなことを言わなくなりましたが、この本は、教育に携わる方は絶対読んだ方がいいと思えるものでした。
新自由主義教育改革がアメリカに与えた(与えている)状況を、新自由主義を正義としていままさに推し進まんとする日本への警笛として書かれています。
新自由主義教育改革とは、簡単にいえば教育に市場原理を持ち込んだものです。「学校が競争の中に身を置き、その独自性を競えば教育は良くなるだろう。その独自性はこの数値で測りますよ。さぁみなさん競ってください。」そんな考え方だと解釈してもらえばいいと思います。
まず、何がショッキングだったかというと、私自身もそれを是とする考え方を持っていたことです。学校が独自性をもっと放つべきだ、もっと「学校おこし」をするべきだ、と考えていました。正確に言うと、いまも考えています。ただ問題は、「根底に、OECDの実施するPISAの学力調査に寄せていくことで学校は評価される」という無意識レベルでの正解の刷り込みがあり、その上で「学校おこし」を考えてしまっていたところにあります。
ポイントは無意識というところではないでしょうか。ただなんとなくPISAを信じ(PISAのすべてが悪いわけではありません)、迎合する教育を正義としている現状がかなり多くの学校現場にすでにある。少なくとも大学院での学びの中に、PISAに対する否定的な話はほとんど出てきません。
詰め込み教育の時代は終わった。これからは物事の本質を見極め、他者と共生し、学びを深める時代だ。いま現場はそのことを信じつつある。私自身も、詰め込みも個人レベルでは必要だと思う反面、学校で行うべきこととは考えていない。ただそれは、OECDの仕掛けた範囲の中で、踊らされているだけとも取れるわけです。
ある範囲の中で、活発に議論している状態を作ること。それが民衆を誘導する最も効率的な方法だ。そのような記述が途中にあります(本当は正確に引用したかったのですが、いま見つけられませんでした。)。その状態なのかもしれないと感じたことが、あまりにもショッキングでした。教育は経済のためにあるんじゃない。そんなことは分かっていましたが、分かっていない無意識まで侵入されていることに、気づいていない人は多いはずです。
ほかにもたくさん学びがあったのですが、全部書いていると長くなりそうなので、書きたくなったらまた書きます。必読です。