読本レポート「地域創生大全」
愛知で地域の取り組みを進める中で、自分の失敗起因も含めて、それはもういろいろなことで心が折れそうになります。
どう打開していいかをうんうん悩み、時間ばかりが過ぎ、惰性で物事が進んでしまうこともあります。
と、そんなことで、自分へのインプットとして読んでいる本から、得たことを自分の体験とも照らしてまとめます。
今回は、AIA木下さんの著書「地方創生大全」です。
◆補助金依存ではなく事業としてやる
課題の解決が一過性のモノゴトで終わるわけはなく、継続できる必要がある。
補助金に頼る場合
①大きな予算を取って花火を打ち上げたものの、継続できる収益も人的資源もなく、終わるか税金投入して赤字を垂れ流すことになる。
②補助金を受けると様々な制約を受ける。(最たるものは「利益を上げてはいけない」というもの)
実際、お金をもらうために目的がずれていき、課題解決に向けて本来やるべきことから遠ざかってしまうし、補助金に慣れると、ずれに気づかなくなる。
事業として、出せる資金、人的リソースなどから、やれることからやる方が、よほど意味がある。また、そうした小さな動きが大きなムーブメント、波及効果を生んで街を変えることの方が、リアリティがある。
地域では、「利益を出すのは悪」「私は利益度外視でやっている」という話になり、ボランティアや身を粉にすることが美談になることが多いように思う。そして、そういった活動は4~5年で息切れを起こして終わってしまう。
◆ネタ選び、他地域との差別化
まず、地域にいて思うのが、出てくるアイデアが圧倒的に「自分本位」であることが多い。
こんな野菜がある、こんなお菓子がある、神社、お寺、お祭りがある。
街の資源を正しく理解して取り組むことは必要なのだが、他の地域の同じようなものと、どう優れているのか、他地域や海外から見て、それは魅力的なのか、という視点に欠けるように思う。
書籍の中でも言われている、ゆるキャラ、ふるさと納税返礼品なども、投入する税金との費用対効果を考える必要がある。
差別化はマーケティングとしては至極当たり前なのだが、地域で頑張っている人は、そういったことを学ぶ機会のない職員や地元の方だったりするので、そういう意味では、マーケティングをきちんと学んだり、仕事として実践している方が、地域課題に、仕事として取り組めることが大事な気がする。
行政も地元も、そういった人を地域に呼び込み、正しいアプローチで、自分事として、地域を差別化していく動きが必要だ。
◆地域組織との合意は必要か?
地域の既存組織との合意は、機を逃さず取ることができて、目指すベクトルをブラさずに取れるなら、取ればいい。
だが、多くは、地域で力を持つと言われている関係者の合意をすべて取ることは不可能、または一事業できるぐらいの労力が掛かる。
また、その地域で前例のない、新しいことを行おうとするなら、なおさら、あらゆるブレーキが掛かるもの。妨害や中傷を受けることさえある。
地域の中では、実績を見せることでしか、認めてもらうことはできないとも感じる。
また、意見を求めたり、合意を得て進もうにも、当事者でない人は、思いつきの無責任な意見を言うもので、意見を少しずつ取り入れたりして、本来の意義が薄れることもある。
既存組織を変えるのではなく、少数精鋭、トライ&エラーで、小さなことから、スピードを大事にして進めていくことが重要。
◆目的を持って、今の時代に即した戦略を
地域が違えば抱えている問題も、課題も異なる。
人口減少社会においては、マスで大量の観光や販売数量をかせぐのではなく、一人あたりの単価をどう上げるか、より狙いに適したセグメンテーションが必要になる。
訳の分からない大きな目標や、バブル時代から変わらない目標設定方法ではなく、大きな課題解決の絵は描きつつも、意味のある、目的に直結する目標を設定することが大事。
◆さいごに
覚悟ある者が、リスクを取り、事業として、自分のため、地域課題解決のために取り組むことが求められる。
行政はそうした事業者が自由さや、革新的なことを実現できるよう、街のフィールドに自由を与え、チャレンジできる規制の緩和や、制度づくり、民間事業者を後押しするような役割にこそ、力を注いでほしい。
行政も「行政は平等でなければならない」という、全員で沈没してしまう姿勢をやめ、伸びるところを伸ばし、そこで蓄えた資源を福祉に回すような、「戦略的な街経営」にシフトしよう。
「地域のことは行政が」と市民が過剰に求めることもやめよう。
僕たち民間が事業者として、僕たちが地域課題を解決しよう。
地域創生大全はとてもボリュームのある書籍なので、ここから得たことすべてを語れないけど、きっとこういうメッセージが込められていると思います。
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