新入編集部員の日記 #3 「付き物(1)」
【注】新入社員によるエッセイ的な文章です。出版に関する専門用語等の使い方等が正確でない部分があるかもしれません。ご承知おきください。
※ちなみに「本文」は「ほんぶん」ではなく「ほんもん」と業界では呼ぶということも初めて知りました。
■「付き物」とは?
『次世代の実証経済学』の本文のゲラを読み終えた私に与えられた次の仕事は「付き物」の作成・チェックでした。
付き物とは、本を構成する要素のうち本文以外の部分です。具体的には、著者等の紹介、目次、索引、奥付、はしがき・あとがきなどです。カバーや帯などの本に付随する印刷物も含まれます。今回はこのうち編著者・執筆者紹介と目次に関する作業を取り上げます。
■編著者・執筆者紹介
大体の書籍には編著者・執筆者の肩書きやプロフィールを紹介するページがあります。
私はその原稿の作成を、担当である先輩Mさんに命じられました。本に載せる情報のうち、編著者・執筆者に関するものは特に間違える訳にはいきません……。
プロフィールに関する情報やその素案は、ふつう著者から提示されます。「だったら、それをそのまま掲載すればいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、そうはいかないことも多々あります。
(※出版社や編集部、編集者によっては著者から提供されたものをそのまま用いるという方針もあるかもしれません。)
まず、先生が提示してきた情報が必ずしも公式な情報と合っているとは限りません。例えば、自称している役職名が大学や組織が公表しているものと微妙に異なっていることがあります。そのため、大学や組織の公式HPの研究者一覧などで正式な肩書きを地道に調べていきます。また、同じ組織でもその時々によって組織の名前が異なっている場合もあり、所属当時の正式名称も調べます。細かいところで言えば、慶応→慶應(旧字体が正式)みたいなものも全て直します。
(隈なく調べたつもりでしたが、後からMさんが調べ漏れを見つけてくださりました。まだまだ仕事のツメが甘いです。)
また、紙幅の制約によって、著者情報を全て載せられないこともあります。『次世代の実証経済学』の場合、編著者が4名もいます。
4名の情報を1ページに収めないといけないため、経歴を全て書くわけにはいきません。特にさまざまな国際機関で実務経験があったり、複数の大学で教えた経験のある先生の場合「〜などを経て」と割愛させていただくことがままあります。
こうして最終的に出来上がった原稿を印刷会社さんに入稿すると、本文と同様「(編著者・執筆者紹介の)ゲラ」が出てきます。
■目次を作る
「目次こそWordで簡単に作れるだろ、はい論破」と考える方もいるかもしれませんが、印刷会社さんへの入稿以降、編集者が手元で扱っているものは本文原稿のWordファイル(≒テキストのみの情報)ではなく、あくまで「ゲラ(=原稿の文字がレイアウト通りに組まれたもの)」なのです。
その文章の「ページ」という位置情報は、あくまで本のレイアウト通りに文字を組むことによって決まるものです。そして、その組み方(1ページにつき[1行あたり◯文字]×[◯行])というように指定します)によっても文字がどのページに配置されるかは変わります。
ゲラデータは基本的にPDFファイル(OCR処理済)です。PDFファイルから章・節などの見出しの文字列をコピーしてWordに貼り、該当ページの数字を目視で確認して入力し、「目次の原稿」を作っていきます。目次の原稿も編著者や執筆者紹介のゲラと同様、印刷会社さんに入稿することによって、実際の本のレイアウト通りに組まれた「(目次の)ゲラ」が出てきます。
今回はスケジュールの関係上、再校ゲラに基づいて目次を作っています。もちろん、これ以上は大きな本文の修正がないという状態から目次を作ることができればベストなのですが、そこまでの時間はないことが多いようです。
再校以降、節や章のページ数が変わったり、節を削除したりした場合は目次も修正していきます。これは校了まで続きます。
※どこの出版社・印刷会社さんも同様に目次を作っていると思いますが、もっといい方法があるかもしれません。ただ、最初にもらった原稿を整理したのち印刷会社さんに投げた後は、あくまで「ゲラ」を扱うという業務の流れ上なかなか難しいなと思います。
■おわりに
本作りは、もちろんメインコンテンツとなる本文が重要ですが、それ以外の部分、つまり「付き物」も間違い無くきっちりと作らなければいけません。これに気づいたおかげで、編集という仕事の奥深さを少しずつ感じています。
次回は(多分)索引や奥付などについて書こうと思っています。
※今回登場した『次世代の実証経済学』は こちら↓