『経済セミナー』2024年10・11月号 連載見どころ!
今回は、2024年9月27日発売、経済セミナー 10・11月号 (特集:「日本の金融政策」)の連載見どころをご紹介します!
■ 時系列分析の新連載! (新谷・前橋先生)
今号から、新谷元嗣先生(東京大学)・前橋昂平先生(日本銀行)による新連載「マクロ経済政策評価のための時系列分析」がスタートします!
本連載のメイントピックは「VARモデル」と「インパルス応答」です!
なぜ、この両者がマクロ経済政策評価において重要なのでしょうか?
実は近年、(構造)VARモデルや政策ショックの識別に関する現代的な研究が盛んに行われています!「反実仮想との比較」という意味での現代的な因果推論に対応するのは、インパルス応答関数だそうです(詳細は第1回記事をチェック!!)。
第1回はAR(1)モデルを用いて、時系列分析の基礎的な事項や、インパルス応答関数と因果推論との関係、実際の分析例などを見ていきます!
回を追うごとに少しずつ発展的な内容に進んでいく予定です!
2変数のVAR、3変数以上のVAR(ここから行列表記も導入予定!)、Local Projection法との関連、部分識別をもちいたショックの”バウンド”の識別などなど、盛りだくさんです。最初はスカラー表記で行列表記に苦手意識がある方も大丈夫です。
次回以降の展開もお楽しみに!
連載のサポートサイトで実証に用いたデータおよびコードをご覧いただけます!! 以下のリンクからアクセスしてください👇
■ 米国の金融政策にも注目(仲田先生「ゼロ金利制約下の金融政策 FRBの政策運営」)
仲田泰祐先生による「ゼロ金利制約下の金融政策 FRBの政策運営」では、2008年の金融危機後から2010年代にアメリカでも続いたゼロ金利政策からの出口戦略、利上げに踏み切っていく過程の政策現場での議論や、その理論的背景が丁寧に解説されます!
特集では、日本の金融政策を取り上げましたが、日本だけでなくアメリカ・欧州など各中央銀行の政策動向への注目はかなり高まっています。アメリカの金融政策の現場をよく知る仲田先生による論考は、特にいま読む価値がありそうです。
■「経済学キャリア・インタビュー」第2回
前号から始まったインタビュー連載「経済学キャリア・インタビュー」、今回は有本寛さん(メトリクスワークコンサルタンツ)にお話を伺いました!
大学教員から民間企業のコンサルタントへと転身した有本さん。その経緯や、キャリアに対する考えなどを深堀りしています。学生時代からアカデミックポストに就くまでのお話、テニュアを取得するまでの変遷、コンサルタント転身以降の苦労等々、キャリアの各フェーズにおける意思決定の背景を教えてくださいました。
また、大学院での研究活動を通じてどのようなスキルが身につくのかについて、興味深い考察をいただきました。思っている以上に、大学院での活動を通じて多次元的なスキルがみにつくようです。
詳細は記事をご覧ください!
■ 「はじめてのマクロ経済学」(盛本圭一先生)
第4回のテーマは「貯蓄と投資」です!
前回までは、Solowモデルなどの経済成長のモデルを扱いました。今回は資本蓄積を決める貯蓄・投資のそれぞれについて、どのように意思決定されるのかを考察します!
Keynes(ケインズ)型の消費関数から今回の議論は始まります。Keynes型消費関数がどれくらい消費の動きを予測できているのでしょうか?
そして上記の議論を踏まえ、恒常所得仮説を導入し、実際にモデルをつかって消費の意思決定の様子を描きます。
投資についても、企業の利潤最大化問題を解くことでどのように投資の量が決まるのかを説明します。
■ 「プラットフォームの経済学」(佐藤進・善如悠介先生)
第4回は、プラットフォームをうまく運営するために「バランスよく人を集める」方法を考えます!
今回の記事に登場する戦略の中で、読者の皆さんにもっともなじみが深そうなものが「フリーミアム」とよばれるものです。
基本的には無料で利用できるものの、広告なしのプランなどが提案されるパターンはよくありますよね。実はこうした戦略は、プラットフォームの経済学の理論で説明することができます。
詳しい解説は記事をチェック!
■ 「どうする独裁者」(浅古泰史・東島雅昌先生)は連載後半へ!
第8回は独裁者の権力をいかにうまく「継承」させるかがテーマです。
どんなに強力な独裁者でも、死後の政治体制を安定的なものにするのは容易ではありません。独裁者の子どもへ継承させることは果たして、体制の安定に寄与するのでしょうか?
今回は継承という営みを、ゲーム理論を用いて数理モデル化して解説します! また、「関係的契約」という視点からみた継承の考察も興味深いです。
粛清、暗殺、提携…と独裁者の様々な意思決定の様子をみてきましたが、まだまだ奥深い議論がつづくので引き続き連載をチェックしてください!
【トピックス】
10・11月号では、鷲田任邦先生による『民主主義を装う権威主義』(東島雅昌/著)へのロング書評記事を掲載しています!
注目の書籍を改めて批判的にとらえなおし、論点を整理してくださっています。通常の経セミ書評欄を超えたボリューム感のある書評記事をお楽しみに!
■ 「データで社会をデザインする」(成田悠輔・矢田紘平先生)は大詰め!
連載「データで社会をデザインする」は第19回を迎えました!
前回に引き続き、差の差(Difference in Differences; DID)に関連するトピックを扱います。
今回は、双方向固定効果回帰(Two-Way Fixed Effect; TWFE)と人工対照群法(Synthetic Control; SC)の2つを主に取り上げています!
処置タイミングが個体によってばらばらな時は、TWFEを適用してもいいのか?
平行トレンドの仮定を満たしつつ、恣意的でない方法で差の差における対照群を構成するには?
こうした差の差法における発展・応用的なトピックを解説しつつ、実際に明治期の大学入試制度改革を利用した研究事例(Moriguchi, Narita and Tanaka 2022)も紹介しています。
■ 海外論文サーベイ(No.131/132)
今回は、北川梨津さん(コロンビア大学博士課程)と御子柴みなもさん(名古屋大学大学院経済学研究科講師)にご寄稿いただきました!
北川さんには今回初めてご寄稿いただきました!
北川さんには企業内での喫煙者同士の交流、いわゆる「タバコミュニケーション」に焦点をあてた人事経済学の論文をご紹介いただきました。喫煙という行為が男性労働者同士の結びつきを強め、ジェンダーギャップにつながっているのかは実証上重要な問いです。
はたして喫煙者が上司になることによって、喫煙者の部下は昇進などに有利になるのでしょうか? また、こうしたコミュニケーションは企業内のジェンダーギャップにどんな影響を与えるのでしょうか? ユニークな論文とわかりやすい解説をお楽しみに!
紹介論文(CullenandPerez-Truglia 2023)はこちら!
御子柴さんの紹介論文は、(法的な)結婚/事実婚が子どもへの人的資本に与える影響という、現代的かつ重要な問題を取り上げたものです。カップルのあり方が家庭内における子育ての分業に与える影響、さらにその結果として子どもの学歴に与える影響をシミュレーションを通じて検討しています。
法的契約関係としての結婚=保険機能としての結婚、さらにそれが夫婦間の分業を促し子どもの人的資本に与える影響を考えるという点で、「結婚/事実婚」という行動に対する私たち解像度を上げてくれる興味深い論文です。
ご寄稿記事内では、煩雑なモデルの説明を省き、専門外の読者でも論文のコアとなる主張が理解できるよう配慮されています! こちらも必見ですよ!!
紹介論文(Adamopoulou et al. 2024)はこちら!
※著者の個人HPに掲載されているワーキングペーパーです。
経セミ2024年10・11月号はこちら!