【前編】黒川前検事長の処分は妥当なのか?
新型コロナウイルスの影響により、多くの国民が早期の補償を求めている中、「検察庁法改正案」の審議が国会で行われていた。まさに「不要不急」だ。
Twitterで「#検察庁法改正案に抗議します」が一時トレンド入りとなり、政府に対して国民の不安が増す中、安倍首相を擁護していると疑われていた、黒川検事長の不祥事が発覚し、世間の怒りは爆発だ。
黒川検事長は5月初めに産経新聞の記者や朝日新聞の元記者と賭けマージャンをし、記者の用意したハイヤーに乗って帰宅した疑いがあった。後日、黒川検事長はこれを認めたが、処分は「訓告処分」と「自己都合退職による退職手当の減額」とされた。
ステイホームと講じ、国民の生活に厳しい制限をかける側の立場でありながら、新聞記者と賭けマージャンとは由々しき事態だ。
国家公務員の処分
法務省と検事総長により黒川前検事長の処分は「訓告」となった。
そもそも「訓告」とは、国家公務員に対する処分のひとつである。
まず、国家公務員の処分は大きく2種類に分けられる。1つ目は「懲戒処分」だ。免職、定食、減給、戒告などがあり、こちらは国家公務員法に基づいて処分される。
2つ目は「矯正措置」だ。訓告、厳重注意、注意があるが、こちらは国家公務員法に定められていないため、法律上の処分ではない。
例えると、高校生が他人からお金を盗んだことが発覚したら、退学になる。退学に関しては校則に基づいた処分だ。国家公務員法でいう「懲戒処分」にあたる。
一方で、高校生が遅刻を繰り返し、先生に怒られた。こちらは校則に基づいて怒ったのではなく、先生の判断によって下されている。今回の件で言うと、法務省と検察総長の判断によって「矯正措置」が下された、ということになる。
実際、訓告を受けても給与や昇任に影響はない。「訓告を受け続けたら懲戒処分」のような、言わば「イエローカード」のような存在だ。つまり、黒川前検事長は「イエローカード」を出され、そのまま自分で退職したことになる。
賭博罪で罰せられる可能性は?
そもそも賭けマージャンは違法なのか?結論、これは刑法第185条に定められている賭博罪として違法になる。
<刑法第185条>
賭と博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは、この限りでない。
ここで言う「一時の娯楽」というのは、例えば飲食物だったりする。金銭に関しては、例え1円でも賭けたらアウトだ。
また、常習賭博は懲役に値する。
<刑法第186条>
常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
しかし、賭博罪は現行犯、もしくは現金が動いた形跡のある点数表などの証拠がないと逮捕することは難しいとされている。
また、これが立証されたとしても、現時点では「1回の勝ち負けは1人当たり数千円から2万円くらい」と言われている。これが刑法第185条に記されている「一時の娯楽」を超えているのか微妙なラインなのかもしれない。
例えば、赤信号を無視する歩行者を見た事ある人は多いと思う。道路交通法の第七条によると、「三月以下の懲役又は五万円以下の罰金」に処せられる可能性がある。
しかし、実際に「赤信号で罰金課せられた」という人は見かけない。警察も見かけたら注意で終わり、いちいち罰金など課さない。
同じように、対象が検事長であり国家公務員であることは置いといて、一般の人が数千円から2万円くらいの賭博で罰せられることは微妙である。摘発されていないだけで、賭けマージャンをしている人は絶対にいるし、警察も大金が動いていない限り、わざわざ摘発しようとも思わないだろう。
一方で、黒川前検事長と記者は、ここ3年間で月2~3回の頻度でマージャンをしていた。報道が仮に事実とするならば、刑法第186条の常習賭博と判断され、罰せられる可能性はある。
過去にも、消防隊員8人が賭けマージャンを13回繰り返したとして、書類送検されている。
また、2017年には愛知県の消防署員が現金2千円から3千円程度で賭博をし、懲戒処分となっている。
実際に、岐阜県内の弁護士4人は常習賭博罪の疑いで告発状を出している。
しかし法務省は「賭けマージャンは許されるものではないが、社会の実情を見ると必ずしも高額とはいえない」と述べ、常習性については「今回の調査では直ちに確認できなかった」と答えた。
だが何度も述べるが、「賭博」が立証されなくてはならない。処分が下されるのが早すぎる、という意見もあるように、検察はちゃんと捜査を行ったかどうかは疑問に思う。
賭博罪だけではない
さらに、黒川前検事長が罪に問われているのは賭博だけではない。マージャンが終わった帰宅時には、記者が手配したハイヤーに同乗している。この行為が国家公務員倫理規定に反しているのでは、という疑いがかけられている。
国家公務員倫理規程の第5条には、
職員は、利害関係者に該当しない事業者等であっても、その者から供応接待を繰り返し受ける等社会通念上相当と認められる程度を超えて供応接待又は財産上の利益の供与を受けてはならない。
と記載されている。つまり、国家公務員が過度な金銭・物品の贈与や接待を受けることは禁止されている。
実際に週刊文春は、黒川前検事長が産経新聞が手配したハイヤーで帰宅した形跡を写真に収めている。
しかし、法務省は「社会通念上相当と認められる程度を超えた財産上の利益の供与があったとは認められない」と述べている。
ここまでの事実から、皆さんはどう思いますか?
後編へ続く。
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