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スーパーや飲食店が価格転嫁せず価格吸収する構造が経済の歪みを生んでいます
日本の経済が長年停滞している要因の一つに、「価格転嫁の遅れ」があります。
背景のひとつとして挙げられるのが、スーパーや飲食店など、最終消費者相手のビジネスが、コスト上昇分を適正に価格転嫁せず、据え置いてしまうことだと考えます。
結果として、企業の利益は伸び悩み、従業員の給与も上がらず、国内消費全体が冷え込むという負のスパイラルが生まれています。
本記事では、経済学の視点から、この「価格転嫁の遅れ」がなぜ日本経済の改善を阻むのかを、分かりやすく解説していきます。
価格転嫁が進まない理由
競争激化と価格維持の圧力
日本の小売や飲食業界では、価格競争がとにかく激しいのが現状です。
特にスーパーやコンビニでは、大手チェーン同士が値引き合戦を繰り返し、わずかな価格差で顧客が流出することも珍しくありません。
さらに、100円ショップやディスカウントストアなどの「安さ至上主義」が、市場全体に「値段を上げにくいムード」を作り出してしまっています。
本来なら、コストが上昇すれば適切に価格へ反映させることが健全なマーケットの姿です。
ところが企業は「値上げしたらお客さんが離れるかも…」という恐怖から、価格の据え置きを選択。
これが企業の収益力低下に直結しています。
価格吸収の矛盾
原材料費や物流費、光熱費などが上がるとき、理屈としては価格転嫁しないと利益は確保できません。
しかし実際には、多くの企業が「消費者心理への悪影響」を恐れて、コスト増分を自社で負担し、無理やり吸収してしまいます。
結果として、従業員への賃上げ余力が奪われるため、労働者の給料が上がらない構造が固定化しました。
国全体で見ても、消費は盛り上がらず、デフレマインドがいっそう根強くなるわけです。
外国人労働者依存と低賃金構造
飲食店や小売業の人手不足を補う手段として、外国人技能実習生や留学生のアルバイトが増えているのも、日本特有の現象です。
外国人労働者を低賃金で採用できることで、一時的には店舗の人件費を抑えられますが、その分、日本人を含めた全体の賃金水準が上がりにくくなるという弊害があります。
これは、長期的に国内消費を冷え込ませる要因になっています。
経済の歪みを生むメカニズム
デフレと賃金の抑制
価格を据え置くためには、どこかでコストを吸収しなければいけません。
そこで、企業はまずは人件費を削り、必要な投資も先送りにします。
すると、従業員の給料は上がらず、結果的に消費はどんどん縮小します。
そして企業も売上が伸びず、ますます値上げできない、という負のループに陥ります。
これはデフレ傾向をさらに強めることにつながります。
利益が出ても配当や内部留保へ
少しでも利益が出ると、企業は労働者への還元よりも、株主配当や内部留保を優先します。
経営からすれば、投資家との関係維持やリスクヘッジを考えると、安全策に走るのも無理はありません。
その結果、従業員の賃金アップや設備投資が後回しになり、経済の好循環が生まれにくくなってしまいます。
格差の拡大と社会不安
価格転嫁が進まないまま低賃金が固定化されると、利益を得られるのは一部の資本家や株主だけです。
すると、労働者は豊かさを感じられず、格差が拡大していきます。
長い目で見ると、これは社会不安を増大させるリスク要因です。
メディアの「価格上昇=悪」の強調が生む誤解
メディアが価格上昇のニュースを大きく取り上げると、多くの人は「物価が上がって困る」「生活費が増えて大変だ」という印象を強く受けます。
確かに、賃金がまったく上がらない中での物価上昇は、実質的な生活水準の低下につながり、消費者にとって痛手であることは否定できません。
しかし、価格が上がること自体は、経済が正常に成長していくプロセスでは決して珍しいものではありません。
企業がコスト増をきちんと価格に反映し、その分従業員の給与を上げることで購買力が高まり、景気が回復していく…というのが、いわゆる適度なインフレと賃金上昇の好循環です。
過度なインフレ報道が招く消費マインドの萎縮
メディアが物価上昇を過剰にセンセーショナルに伝えると、消費者の「節約マインド」が一気に高まり、消費行動がさらに冷え込んでしまいます。
そうすると、企業も「やっぱり値上げはできない」と尻込みし、適正な価格転嫁や賃上げが進まず、結果としてデフレ圧力がさらに強まるという悪循環に陥ります。
個人的に、メディアが価格転嫁の邪魔をしているため、日本経済はよくならないのだと考えます。
問題なのは「値段が上がること」ではなく、「賃金が上がらないこと」なのです。
真の問題をメディアも私たちも直視し、経済の好循環を実現していく必要があります。
インバウンド需要とオーバーツーリズム
価格が低いまま放置されていると、訪日外国人観光客が「安い日本でガッツリ買い物していこう」となり、大量買い占め(いわゆる爆買い)が発生します。
短期的には売上が伸びて景気がいいように見えますが、日本人が必要な商品を買えない状況が、今後はもっと出てくるのではないでしょうか。
また、観光地でのオーバーツーリズムによる生活環境の悪化はすでに起こっています。
しかも、低価格が続くと日本の付加価値自体が下がって見られる可能性があり、長期的なブランド力の低下にもつながりかねません。
改善に向けたアクションプラン
適正な価格転嫁と公正な取引環境の整備
政府は「適正な価格転嫁を促す」仕組みを強化することが一つの解決策だと考えます。
極端かもしれませんが、適正な価格転嫁をせず「安売り」を続ける企業には罰則を設けることくらいしてもいいかもしれません。
企業が適切に価格転嫁を行うことは、経済全体にとって間違いなくプラスです。
なぜなら、価格が上がることで企業の利益が確保され、従業員の賃金アップにつながる可能性が高まるからです。
また、価格が適正化されることで、非効率な企業が市場から淘汰され、生産性の高い企業が生き残るという「新陳代謝」が起こりやすくなります。
さらに、中小企業が大手に遠慮することなく、コスト増分を価格に反映できる交渉力を持てるよう支援していく必要があります。
最低賃金の大胆な引き上げ
政府が最低賃金を引き上げる施策を積極的に行えば、企業は人件費増分を価格転嫁せざるを得ないため、結果的に賃金水準全体の底上げが期待できます。
給与が上がれば消費が活発化し、企業の売上も増え、さらに賃上げが促進されるという好循環が生まれます。
政府は少しずつ最低賃金を上昇させるのではなく、もっと大胆に賃金引き上げを行えるような政策を出すべきだと考えます。
まとめ
スーパーや飲食店が「価格転嫁を恐れて値上げできない」状態は、消費者にとって一見お得に見えます。
しかし、その裏では低賃金構造が固定化し、企業も収益を圧縮され、さらには日本国内の経済を停滞させる大きな要因となっています。
日本経済を本当に元気にするためには、適正な価格転嫁と賃金上昇が不可欠です。
消費者側も「安さ至上主義」を少し見直し、「適正価格を支払い、持続可能な経済を支える」意識を持つ必要があります。
これこそが、デフレマインドを脱却し、日本が長期的に豊かさを取り戻すのに必要な政策ではないでしょうか。
「値上げは悪」という思い込みを捨て、適正な価格で価値を評価し合う社会を実現することが、結局は消費者にも企業にもメリットをもたらします。
本記事が、適正価格の意味を考えるきっかけになれば幸いです。
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