養老の滝
今回の御幸は、美濃国は如何でございましょう。有名な養老の滝もありますし。
左様にございます。孝子・源丞内の物語の地でございます。貧しい源丞内は年老いた父親を養うために毎日、山に行き薪を取って生計を立てていました。老父は既に目も耳も悪くなり、楽しみといえば酒を呑むくらいでした。
ある時、いつもにように山に行った源丞内は誤って足を踏み外し谷底に落ちてしまいました。暫く気を失っていた彼のもとに芳しい匂いが漂ってきました。意識を取り戻した彼は匂いがする方向に歩いて行くと滝に辿り着きました。
「これが匂いのもとなのか?」
そう思いながら水をすくって口に含むと爽やかな味わいの酒でした。
彼はさっそく家に戻って瓶を持って来ました。この美味な酒を父親に飲ませるためでした。
息子から渡された器の酒を一気に呑んだ父親は、何と視界が開け、物音もよく聞こえるようになりました。
父子が喜んだのは言うまでもありません。
この話はたちまち広まり、多くの人々がこの滝にやって来て、この効用を得たのでした。
主上のお加減も必ずや快復されることと思います。
その後、この地を訪れ滝の効用を実感した元正帝は、天がこのような瑞物を下賜して下さったことに感謝する意味で元号を“養老”と改元したのだった。
#歴創版日本史ワンドロワンライ 2020年2月9日 お題:元号
お馴染みの養老の滝のエピソードです。
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