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竜田川

 彼の前に一幅の絵が広げられた。
「竜田川ですね」
「はい、これを屏風に仕立てるのですが、あなた様の歌をぜひ添えたいのですが‥」
「はい、わかりました」
 答えた彼の脳裏に以前訪れたかの地の風景が甦った。
 紅葉を求めて彷徨っていたところ斑鳩の地に着いた。せせらぎに誘われて川辺に行くと唐紅の布が敷き詰められていた‥いや、もみじ葉が川を埋めているのだ。こんなことは神代にもなかっただろう。
  千早ふる 神代も聞かず 竜田川
     からくれなゐに 水くくるとは
「もう、お出来になったのですか! この絵に相応しい秀作ですね」
「恐れいります」

#歴創版日本史ワンドロワンライ 5月2日 お題:川
在原業平の歌をもとに書きました。


       


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