就労移行支援事業所 《 KEIPEキャリア 》って? (後編)
2023年6月、KEIPEが新たにスタートした【 KEIPEキャリア 】。
今回はKEIPEキャリアがどんな場所なのか「就労支援ってなに?という方にもわかりやすく」をモットーにお届けする記事の後編です。
お話ししてくれたのは、就労移行支援事業所 ※2 KEIPEキャリアの事業部長、諸貫裕佑(以下モロ)と、就労継続支援A型事業所 ※1 の窪田未来(以下未来)。
どうぞお楽しみください!
■ A型から見える移行支援と、体験談
ーざっとKEIPEキャリアのサービスの流れを聞きましたが、A型の目線から見てどうですか?
未来:そうですね〜何か所属するみんなが同じ目的っていうのもいいですよね。A型っていろんな目的・目標の人がいるので、みんながみんな就職を目指してる段階じゃなかったり。
モロ:確かにね。
未来:今回A型からNさんが2週間KEIPEキャリアを体験させていただいて、本当に見違えるかのように色んなものを身につけて帰ってきたっていうことに、私はすごくびっくりしていて。
もちろん個人差はあるとは思うんですけど、でもそれだけのものを身につけられる場所ってすごい価値があるなというのは思いました。
ーへえ〜!どんな変化だったんですか?
未来:一番衝撃的だったのは小声で話ができたこと。
一同:おお〜〜!それはすごいね!(※すごいです)
未来:研修中に自分の書いたものをチェックしてほしいって言って持ってきてくれたんですけど、小声で会話ができて。すごく嬉しかったです。びっくりしました。
モロ:彼は多分KEIPEに来る前に、社会に出るための準備を教えてくれる公的なところに行って、はっきり伝えましょう!とか、大きい声で返事しましょう!って学んだことを、本当に実直にやってきた結果だと思うんだよね。
それ自体は、悪いことじゃないんですけれど、一対一の距離で、あの声量で喋る必要ってあるのかみたいなところは、使い分けられるようになったら更にいいよねって。そして本人が、それを社会に出る準備として必要だと思ってやったから、よりレベルアップできたのかな、と。
ーうーん、すごい。(しみじみ)
■ 地域で輝く人になってほしい
未来:もちろん、A型が悪いとか移行がいいとか、そういうものじゃないと思っていて。何か、より地域で障がいを持っている人たちにとって選択肢が増えるのは、すごくいいなと思っています。
質問なんですけど。例えば、A型に見学に来てくれて、必ずしもA型を利用しなきゃならないなっていう人ばかりじゃないんですよね、そういう時に移行を勧めていいんですかね。
モロ:全然アリだと思う。そこが多分KEIPEで色々やっている強みかなと思っていて。
はじめは、A型だけだったけど、今は移行支援もあって、CLUMがやっている児童発達支援 ※6 や、放課後等デイサービス ※7 もあって、関連企業でB型 ※1 があって。ちゃんと、本質的にその人の段階を見極めてつなぐっていうのができると思うんだよね。
ー KEIPEの価値観をいいなと思ってくれていたとしたら、同じ会社で選択肢があるのはいいことだよね。
モロ:うん。その中で、よりスピード感を持って就職して行った方がいいんじゃないかって思ったらどんどんKEIPEキャリアにつなげてもらいたい。
未来:何か今、諸貫さんの話を聞いてて、すごい、そういうイメージができました。つなげられるのいいなって。
モロ:そう。そうなのよ。で、逆に俺らは、移行に来た人にA型が必要だと思ったら、つないだりしてるんだよね。その場で笛吹オフィスに電話して、見学の日程組んで。
何か、利用者を増やしたいからと言ってステップが違うなって思った人まで、招き入れるみたいなのは全然本質的じゃないよね。ファミチキ食べたいって言ってる人に、サラダチキンあげるわけにはいかないでしょ。
ーう、うん...わかりやすいような、そうでもないような笑
モロ:え?そう?笑
まあ、本人に本当に必要なことって、何?って常に意識をしてるってこと笑
未来:この間思ったのは、一人ひとりが地域にとって、自分を財産の財で「人財」だと思って欲しくて。何か、福祉のサービスを受けられるから、A型にいればいいやって感じではなくて、地域の企業で、地域に何かを還元していける、自分たちは財産だっていう思いで外に出ていってほしいなと思ったんですよね。
決して追い出すとかじゃなくて、一人ひとりに価値があって、活躍できるんだっていうところを自信を持って外にいってほしいなと思います。
モロ:ほんとそうだよね。
未来:ちなみに、A型でも実習はやっていて。
ーそうなんだ、知らなかった!
未来:今回の実習は、KEIPEキャリアのアドバイスで、その方の特性を簡単にまとめたものを、企業様側に持っていってもらったんですよね。そうすることで、実習中困ったことがあった時に、企業様はそれを見て、どう対応したらいいのかがある程度分かる。
後は、当事者が自分で考えるっていう自己理解も大事ですよね。
自分が思っている自分と、周りの私達が見てるその方って、やっぱりちょっと違ったりもするので。それを実習前に、ちゃんとすり合わせをすることで、何かなるべく...なんだろうな。困ることが悪いとかじゃなくて、困った時にどうするかっていうのを一緒に考えて送り出しました。
ーわ〜、いい!
・・・それが、A型の場合は勤務内で、できる範囲でやるっていう形で。
キャリアでもやれるけど、えーっと、何が違うんだっけ...?笑
モロ:笑
要は、入り口がちょっと違うと思う。KEIPEキャリアにくる方はもう企業に就職したいです!って状態で来るけど、A型は必ずしもそうじゃない。
未来:そうですね、さっきお話しした方は、まず本当に生活を整えるっていうところからのスタートでした。まず週5通うっていうところを目標にして、生活面、食事睡眠をちゃんと整えていくっていう。
なので、最初から企業へ就職を目指してますっていうのは全然なかったですね。
モロ:働くことに慣れていく中で、あ、私1日6時間ぐらい全然働けるじゃんってなった時に、初めて企業に就職というステップが本人の中でもなんとなく描けるようになると思うんだよね。自分のこんな能力を活かして働きたい!とか。
ーなるほど〜。
未来:そうですね〜。A型では仕事する中で自己理解を深めて、価値を発揮していって欲しいです。
■ 相互理解をつなぐ1枚資料
ーちなみに、その企業さんにお渡しした資料はどんな感じなんですか。
未来:その人の取説的な...もちろんいいところも書きますけど、ただそれだけじゃなくて、こういうところは苦手です。だけど、その苦手もこういった配慮があればうまくできるとか、こういう時は、こんな反応をするので理解しておいて欲しいですとか、そういうことを伝えるためのものですね。
モロ:初めて障がい者雇用をやりますっていう企業って、大体障がいって...何?みたいな。ところから始まるんだよね。
ーわかる〜、私もそうでした。
未来:あとは障がい者ってこう、みたいなイメージが人によってすごい偏っていることってありますね。アインシュタインも障がい者、みたいな何かに特化した才能を持つ人のことをイメージしてたり、単純に身体障がいのイメージがあったり。実際は、絶対に一概には括れないんですけど、イメージで。
モロ:そうそうそう。例えば同じうつ病や統合失調症でも、一人ひとりその特性が全然違うから、やっぱちゃんとそれを説明したり、雇用する企業側もちゃんと理解していないとだよね。うつ病だからこうしてればいい、こういう対応をしていればオッケーみたいなものはないから。
資料も見開き両面刷り5、6ページみたいな情報量が多いのも作れるんだけど、渡しても担当者は忙しくて読めない。だからA4で1枚ぐらいにまとめてある方が見やすいし、たくさんの人に共有できる。
ー 伝わる工夫、大事です。
■ どんな生活をめざす?
未来:A型に来てる方も、移行に興味はあると思うんですけど、結構みんな不安に思うところって、お給料がでないっていうところだと思うんですよね。そういう意味で、例えば最短どのぐらいで就職になりますか?その方次第だとは思うんですけど...
モロ:そうだね、ほんとその人の努力次第だけど...早くて1ヶ月とかね。
1ヶ月でいけるんだったら、ストレートに就職しても大丈夫だと思うけど笑
未来:早いですね!!
・・でも、たしかに就職できそうだなって方も、いざ応募する1歩が怖いんだろうな、とは思っていて。1ヶ月でもサポートがあって、自信をつけられる場って考えると、いいですよね。
モロ:そうだね〜。
未来ちゃんが言ったように、やっぱりお金を得ることも大きな要素だから、A型かB型に行った方が、目の前の収入は得られて安定するけど、、、たぶんそこで稼げる金額って月に10万前後ぐらいだと思うんだよね。
それが、企業に働きに行けば、言ってしまえば、青天井で。そこでじゃあ、長くても2年間準備して企業に就職すれば、その後は月10万〜15万とかもらいながら、プラス障がい年金で月に20万ぐらいの収入になると思うんだ。そうすればわりと安定した生活ができるんじゃないかな。
(※ 障がい年金の金額は、障がいの程度や収入によって変動します)
ーたしかに。
モロ:KEIPE全体としては、みんないずれは福祉サービスを卒業しようっていう姿勢がある。年齢とか本人の思いもあるけど、いつまでも福祉サービスにいる必要のない、可能性のある人もいっぱいいるから、どんどん就職していくという機運を高めていく。
だから毎月、企業の方を招いて研修をやったりしてるしね。
■ 地域で盛り上げたい、移行支援
モロ:福祉サービス卒業に最短なのは移行だけど、移行支援単体の事業所ってKEIPEキャリア入れても、そんなに多くないんだよね。
ーやっぱり働きながら通えるサービスじゃないから、集客が難しいのかな。
未来:そうですよね〜。実際に通う場所だから、エリアごとにあるっていうのがいいとは思うんですけど、山梨県内の移行支援で、横のつながりはあるんですか?
モロ:今現状で言ったら、それぞれが色を出してやってるって感じではあるけど。個人的には一緒にやろうぜ!というぐらいにはしたいよね。
俺らがどれだけ障がい者雇用、推進しましょうって関わっても、1社だけだと年間に関われる企業の数も、送り出せる人数も限界がある。
それぞれ特色を活かしながら、各々の立地条件でやるけど、目的は一緒だからね。そういうのは今後もちょっと意識していきたい。
ー 地域全体で認識して、育んでいかないと、結局集客できないからやめよう・・・みたいに淘汰されちゃう。売れるとか、儲かるものしかない、弱きものは救われない社会になっちゃう不安を感じるな。
モロ:うん・・難しいよね。でもそれって意味がないし、知らないから応援できないみたいなこともあると思うから、こういう場所があるんだっていうのをもっと伝えていきたい。
未来:そうですね
ー まずは、たくさんの地域の方に知ってもらうことからですね。今回は障がい福祉への理解が深まってすごく面白かったです。
では!気になることがたくさんあって長丁場になってしまいましたが、そろそろおしまいにします。今日は2人ともありがとうございました〜
モロ:はーい!こちらこそ!
未来:ありがとうございました。