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eスポーツとアンガーマネジメント

スポーツにおいて「怒り」の取り扱いは重要なテーマです。サッカー史上最高の選手の1人といわれるジネディーヌ・ジダンは、自身がキャプテンを務めた2006年のFIFAワールドカップ決勝で相手選手に頭突きをし退場処分となり、その後現役を引退しました。

怒りを力に変えて高パフォーマンスを発揮することもあれば、怒りに囚われることでパフォーマンスが低下したり反則や退場処分を受けたりするシーンはあらゆるスポーツでみられることです。

これは、eスポーツにおいても同様といえます。オリンピックの新種目にeスポーツが採用される見込みもあり、さらなる盛り上がりを見せている昨今、eスポーツ選手のアンガーマネジメントの重要性が指摘されています。

現在、プロのeスポーツ選手はそれぞれのチームに所属しながらインターネット上で自身のプレーを配信している人が多い状況です。ゲーム配信中の不適切な言動は個人のみでなく所属チームやスポンサーにまで悪影響を及ぼします。それでも不適切な言動による問題が止まない原因の一つとして、怒りのコントロールができずに配信中に感じた怒りをそのままぶつけてしまうことがあります。

過去2回、「怒りの感情との付き合い方」と題して、怒りの感情について紹介してきました。「怒りの感情との付き合い方-怒りの「タネ」を見つけるー」でお伝えしたように、ポイントは「怒りをぶつける」前の怒りの「タネ」のうちからその兆候に気がつき事前に対処していくことです。

怒りの初期の兆候には、大きな声が出たり筋肉など身体の震えや緊張、のどの渇き、的確でないことを言うなどの感情や身体の昂りがみられます。他人のプレーに文句を言い出すのは「怒りの感情との付き合い方-アンガーマネジメント-」で紹介したように「自分の当たり前が裏切られる」を体験し、怒りを覚えていることが想定されます。


怒りの感情への対処

怒りの感情を抱いた際にコントロールできなくならないように、いくつかの対応や対処法を紹介したいと思います。

イメージすることで備える

怒りを感じるであろう場面を先に想定しておき、怒りそうになる場面での上手な対処法を頭の中でリハーサルするという方法があります。ゲームであれば、不特定とオンラインで協力するような場面では他者に期待するなどの「自分の当たり前が裏切られる」場面への想定が大切です。それでもなお、怒ってしまっているのであれば、それでも怒っている自分に目を向けることも大切です。

6秒ルール

有名な対処法として、「6秒ルール」といわれる数秒間深呼吸やこころの中でポジティブな言葉を唱えるなどをして怒りの状況から気持ちをそらすという方法があります。ゲームであれば、数秒プレーを中断することも必要かもしれません。

怒りの点数化

その怒りがどのくらいの怒りなのか点数化してみるのもよい方法です。その際は事前に、怒りが100点のときはどんなときだったかを思い出したり考えておいたり、中間の50点はどのくらいの怒りか、怒りは感じるが無視できる程度の怒りは何点くらいかなどを想定しておき、それらと比較し現在の怒りを客観的に見つめましょう。

アイムアウト

タイムを取ってやっていることを中断し、作戦を組み直したりトイレや別室など1人になれる空間で冷静さを取り戻すまで休むなどの物理的にもその状況から離れる方法があります。「6秒ルール」よりも怒りを感じる状況から注意を逸らすことがしやすいです。

タイムアウトは、ゲーム中であれば1試合の終わるタイミングで一旦ゲームを止め、トイレに行ったりその場でストレッチやブラブラ付近を歩いたりなどができます。まずは、マウスやコントローラーから手を放しモニターから離れましょう。

物に当たる際の対処

物に当たってしまう人は怒りをぶつける対象を柔らかいぬいぐるみなどにしてみたり物を投げつけたくなるときは近くのベッドやソファなどに向かって投げることから始めるといいです。いきなり完璧を目指さず少しずつ怒りをコントロールしていきましょう。

自分に怒る人

怒りを感じてそれを抑えられない自分自身が許せず怒る人もいます。理不尽など自分が許せないことに怒りを感じるのは当然です。他者に対して怒りを感じている自分を認めることで、激高と自罰を繰り返す負の連鎖を断ち切ることも大切です。

さいごに

どの方法も怒りがピークに達しているときは取り組む際の難易度が上がります。そのため、怒りの兆候を掴み、怒りがピークに達する前に対処を行うことが成功のカギです。


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