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突然の腹痛が原因不明だった話

2020年春、突然お腹の激痛から始まり、最終的に秋頃手術するまでに至った経過を書いてみることにした。

というのも、病気や手術を経験すると分かってから、ネット上で同じ病気や手術の経験レポートなんかをひたすら読み漁って知識を得ることで安堵感を得ていたからである。
少しでも同じ境遇の人の心のゆとりになれればいいなと思ったのと、自分の記録として残しておきたかったのもある。

全く関係ないような人はへーこんな感じなんだって思いながら楽しんで貰えたらと思う。


本編


私は看護師として働いており、結婚してから新しい職場と相性が悪く、抑うつ状態になって薬を飲んだり、アトピー性皮膚炎がめちゃんこ悪化したりしていたが、まぁまぁ元気に過ごしていた。

2020年春、その日はサンレクトガーレンのビールが届いたためサイゼリアをテイクアウトし、夫と2人で楽しく飲んでいた。

その日の真夜中から腹部の激痛と悪寒に襲われていた。しかし、私は元々病弱でしょっちゅう胃腸炎になっていたため、「また胃腸炎だろう、食べすぎちゃったかな」くらいに思っていた。

しかし朝になり、お腹がパンパンに張ってきた。熱も38度以上出ており、今までに経験した痛みとはまた違う痛みがお腹を襲っていた。

胃腸炎は胃や腸がキューっと絞られるような痛みだが、今回はパンパンに浮腫んだ腸がギュッギュッと揉まれているような痛みで、歩くのもままならず、お腹はパンパンに張っているがトイレに行っても何も出ず、苦しかった。

その日は日曜日だったため、休日当番医を探し、夫に車で送って貰う事になった。

家からさほど遠くない病院だったが、着いた頃には意識朦朧としていた。
診てくれた先生が苦笑いしながら「えっ、お腹に力入れてないよね?力入れてないよね?」と言いながら何回もお腹をギューギュー押していた。

痛すぎて意識朦朧としていたが、「これは腹膜炎かも。うちじゃなくて、総合病院にすぐ行ってください。」
と促され、総合病院に行くことに。しかも最悪なことに自分が働いている病院が当番だったため、自分の働いている病院の救急外来を受診することとなった。

正直頭の中では(最悪だ~。今日の当番の先生誰かなぁ~…)と思っていた。


夫にそのまま総合病院へ送ってもらい、ゾンビみたいな足取りで救急外来を受診した。正直、その日の当番の先生は当たりだった。

しかし、救急外来の看護師さんと私の血管の相性が悪く、ルートキープにえらい時間がかかった。(その時の看護師さん、ごめんなさい。)

採血の結果炎症反応が高値になっており、生まれて初めて造影CTを撮ることになった。車椅子でCT室に行く時、先生に「これは何か居るねぇ。アッペか…それじゃなかったら婦人科系の疾患かな。」と言われ、

婦人科系の疾患に詳しくない私は、婦人科系の疾患だったらどうしよう…まだ子供産んでないのに…アッペだったらまだマシだなぁ…アッペであって欲しいなぁ…と思っていた。

※アッペ…虫垂炎(盲腸)のこと


CT自体は何回か撮ったことがあるが、造影は初めてなので、緊張した。造影剤を体の中に入れることでより鮮明に体の中が映るようになっているが、稀に副作用でアナフィラキシーショックなどを起こす患者さんが居るからだ。
また、結構な量を結構な速度で入れるので、血管が痛くならないかなぁ、気持ち悪くならないかなぁと心配だった。

放射線技師さんや看護師さんがよく
「体がぽかぽかしますからね」
と患者さんに声をかけているが、本当だった。

実際血管も痛くなかったし、ぽかぽかする感じも悪い気分では無かった。
喉の辺りから、お腹を通って足の方へ、暖かい動物が体の中をすーっと走っていくような感覚だった。

CTの結果はアッペではなく、腹水が少量溜まっているとのこと。消化器や外科の先生たちにコンサルした結果、骨盤腹膜炎疑いで婦人科疾患が原因ではないかということになり、婦人科の先生に担当が入れ替わった。

これが最悪だった。

炎症反応が高くなっており、腹水も溜まっていて、私は正直痛くて痛くて動くどころでは無かったが、婦人科の先生は

「特にやることないから、帰れますか。」

と言ってきたのである。

え、抗生剤は?痛み止めは?歩けないのに帰れってどういうこと???
と頭の中が???で埋め尽くされた。炎症反応の値の目安であるCRPは9~10mg/dl近くあり(普通の人は0.3mg/dl以下)、WBCもそこそこ上がっていた(数値は忘れた)。

しかし自分が働いている病院で面倒な患者にはなりたくないという思いや、医師がそう言っているんだから大丈夫なんだという気持ちが芽生え、結局はボルタレン座薬(痛み止め)を入れて帰ることになった。

この時、看護師さんに入れましょうかと言われたが、恥ずかしかったので自分で入れた。おけつに何かを入れるのは初めてだったのだが、なんだか虚しい気分になった。

結局ボルタレンを入れても腹痛は治らず、もう一度婦人科の先生を呼んだが

「入院する?してもいいけど何もしないよ。」

とキッパリ言われてしまったため、泣く泣く帰宅することとした(今思えば本当に最悪な奴である)。


家に帰ってからもしばらくお腹の激痛に悩まされたが、数日したら治ったため、なんだったんだろうという不安を残しつつ、元の生活に戻ることができた。


しかし、その後同じ症状は4回ほどやってきた。

しかも毎回日曜日にやってくるのでかかりつけの婦人科へ行くことが出来ず、結局自分の働いている病院の救急外来を受診することになった。

その度にしこたま研修医の先生にお腹を押され、造影CTを撮った後、婦人科の先生から
「なんか左の卵巣がちょっと腫れてるけど、別にやることないから帰って。」
と言われるのである。

正直自分の中で不安が大きくなってきた。
消化器疾患でも無ければ婦人科の疾患でもない、思い当たる節も無いのに骨盤腹膜炎ておかしくない?と。

そもそも腹膜炎なんて私くらいの年齢では滅多になる病気ではないのである。



ある日私は、募る不安感や、元々妊娠希望があったのになかなか妊娠しない事などから、特に何も無かったが、かかりつけの婦人科へ受診することにした。

かかりつけの先生からは「そんなに何回も腹膜炎になるのはおかしいね…。」と言われ(まぁそうである)内診することになった。

内診の結果、私は子宮内膜症だった。
左の卵巣にチョコレート嚢胞ができていた。

子宮内膜症やチョコレート嚢胞については、興味がある方や女性はググって頂ければすぐにわかるだろうが、不妊の原因のひとつである。
しかし、それが骨盤腹膜炎と直接関係があるかと言われたら微妙なところであるが、ひとまず私は不妊治療で有名なクリニックへ紹介されることとなった。


今までの救急外来でのやりとりや経過をクリニックの先生に話すと、
「え…入院とかしなかったの?その先生どうしちゃったんだろうね。なんて名前の先生?」と苦笑いしていた。私は心底(ですよね~)と思っていた。

結局そこのクリニックに通っているうちに、私の左の卵巣チョコレート嚢胞はみるみる大きくなり、子宮にポリープや筋腫があることが判明し、先生に軽く

「手術しちゃう?」

と言われることになったのである。

手術に関しては後日また別の記事でお話することにするが、私が住んでいる県内では婦人科が有名な病院へ紹介されることになり、予約を取ってその日は帰宅した。


しかし、腹痛はまたすぐにやってきた。


そして、またその日は日曜日だったのである。いい加減自分の働いている病院に行くのは嫌だったので、ボルタレンを入れても効かなかったが死ぬ気で我慢し、月曜日に手術する予定の病院へ早めに受診できないか相談することにした。


月曜日。
朝9時にすぐ電話し、症状や経緯を伝えると予定より早く診てもらえることになった。夫に車で送ってもらい、受診することができた。
結果はやはり骨盤腹膜炎であった。
先生から

「これはすぐ入院した方がいいよ。卵管が炎症で癒着しちゃったら大変だからね。」

と優しく諭され、緊急入院することとなった。その時、この人は本当に神様かと思った。


緊急入院するとは思っておらず、入院の準備をしていなかった私は家に一旦帰り、まず職場へ連絡を入れたが、その際師長に開口一番

「えー!もう夜勤専従でシフト組んじゃったよ!!!」

とキレられたのは一生忘れないだろう。


一生忘れないだろう。


そんなこともあり、私は緊急入院となった。

ちゃんと診てもらえたのと、ちゃんと抗生剤を処方してくれたのにひどく感動した。

後ほど担当の先生が病室まで来てくれて、病状や手術の日程について話をした。
先生はちゃん私の目を見てゆっくり時間を取って話してくれた。とてもいい先生だった。

「骨盤腹膜炎の原因ははっきりとはわからないけど、チョコレート嚢胞もあるし、生理の度に血が逆流していろいろと悪さしてたのかも。手術して、早く取った方がいいと思うよ。」

と、早めの手術を勧めてくれたが、師長にキレられたことを内心気にしていた私はシフトの都合上1ヶ月後に手術の希望を申し出た。
すると、

「その考えもあるけど、あともう1つの案は1回退院して、来週準緊急で手術いれてあげるから、そこで手術するのはどうかな。1ヶ月あけて、また腹膜炎になっちゃったら卵管が炎症起こして癒着しちゃうと今後妊娠を考えた時に大変になっちゃうよ。職場には、それだけ大変な状況なんだって分からせないとね。どう?」

とニコニコ笑いながら穏やかに話してくれた。心底この人は神様なんだと思った。私はひどく感動して先生の意見に従った。

こうして抗生剤治療により骨盤腹膜炎は無事治り、退院することとなったのである。


結果として、原因はよく分からなかったが今までのモヤモヤした気持ちが晴れ、手術に向け準備をすることとなった。

今回の話を通して言えることは、医師との相性が合う合わないは非常に重要であるということだ。自分にとって納得のいく治療や説明をしてもらえると患者としては安心感が段違いである。

また、同じような症状があった女性や、生理不順、強い腹痛などがあるなど、少しでも気になることがあった女性は是非婦人科を受診して欲しい。


ここまで読んで頂きありがとうございました。
手術に関してはまた後日書こうと思います。

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