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To be or not to be ~ENHYPENとゴーストとDARK MOON

ダークムーンとは、地球をはさんで実際の月とちょうど鏡像になる"仮想ポイント"。

「第2の月」「ゴーストムーン」ともよばれている。

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占星術では、月や他の惑星のように実体は持たないけれども影響はある、目では観察できないけれどもたしかにあるもの、として考えられているそう。(※補足1)

そのシンボルマークは∅(空集合)。

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数学の記号である。

同じようなマークは「Darkmoon」のタイトル部分だけではなく、わりといろいろなところで出てきている。

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空集合とは1つも要素を持たない集合。たとえるならば、空っぽのいれもの。
中身は"ない"集合だけども、"ある"ものとして考えていないと計算上成り立たない。
「空集合はどの集合の部分集合にもなりうる」という定義も数学できっと習ったはずである。

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数学なのに、ちょっと哲学的な存在。
「"無い"のに"有る"ものとは?」…禅問答のようでもある。

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ラグビーボールだって、"有る"時と"無い"時があるし、刃物を使った経験だって、"有る"人と"無い"人がいる。

某肉まんのCM(関西限定?)ばりに主張されている"ある時ー"と"ない時ー"。

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それって、ゴーストや宇宙人の存在についてそのまま言えることなのではなかろうか。

無いのに、有るもの。
いるのか、いないのか。
信じるか、信じないかはあなた次第なところ。

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空集合は「無」の集合。

「無」はニキの絵のタイトルとしても出てきた言葉。

かの有名なホーキング博士らは、「」から「宇宙(有)」が生まれた説を唱えている。

宇宙の始まりはまだ正解がわかっていない。
ただ、ここでいう「無」もまったくのゼロという状態ではない。空っぽの空間の中にわずかな「ゆらぎ」があり、それが宇宙の種となったと考えられているのである。

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空集合=「無」の集合。
空っぽの空間にたしかにある「ゆらぎ」。
実体はないけれども、たしかに存在する者たちの集合。
"何者でもない者たち"の集合。

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オデュッセウスが怪物から逃れるために「ウーティス(誰でもない)」と名乗った話、Let Me Inの「Nemo」も同じ意味を持つという話にも繋がってくるようでおもしろい。

そちらの解説は↓こちらをご参照ください。

アイドルもゴースト?

Idol(アイドル)」という言葉の語源はギリシャ語の「エイドーロン」。
この意味も「幽霊(ゴースト)」「実体のない形、鏡像」なのだ。

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ダークムーン、空集合、オデュッセウス、ゴースト、宇宙、アイドル…
てんでバラバラで、繋がりがまったく"ない"ようでいて、繋がりが"ある"。

どこまでが意図された繋がりで、どこからは偶然の繋がりなのだろう。
そこに意図はあるのだろうか、ないのだろうか。

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何者でもないということは、逆にいえば何にでもなれる、ということ。
どの集合にも入れる空集合。

中身は空っぽのように見えるのに、何でも出てくるドラえもんの4次元ポケットのような。

ドラえもんのポケットの中にあるひみつ道具は、実際には存在しているのに、多次元・異次元だから私たちには見えていないだけなのである。

空っぽの空間にあるゆらぎは、宇宙を生み出せるほどの爆発力を持っているのだ。

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何にでもなれる。

これぞまさに、これから拡がっていくであろう多次元の仮想社会の中でのアイドルの姿なのかもしれない。

仮想空間自体も実体は"ない"のに、"ある"ものだから。

第4世代のアイコンと呼ばれるENHYPEN。
ソーシャルネイティブである"Z世代のアイドル"でもある。

NFTのデジタルトレカについても話題になっていたが、仮想空間の中でのアイドルの存在、アイドルとファンの交流、ファン同士の交流も今後どんどん多様化していくのだろう。

「K-popの未来」を率いるENHYPEN。
どんな未来を作ってくれるのか、ますます楽しみだ。

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ゴーストについてもう少し…。

以前、ENHYPENの世界観には古代ギリシャの哲学者プラトンの「イデア」の説明に用いられている「洞窟の比喩」が関係するのではないかと書いた。


生まれた時から、洞窟に縛られて閉じ込められている囚人たちがいます。そこの囚人はみな、洞窟の壁のみ見つめて生きています。

彼らの背後には火が灯されていますが、囚人は縛られていて振り返ることができないので、その火の存在を知りません。

さらに、囚人と火の間には塀があり、その塀の上で人形を動かすと、囚人たちが見ている壁に人形の影が映しだされます。

囚人たちには人形の影しか見えないため、囚人たちは影こそが世界の真実だと認識するようになります。

囚人たちは自分の背後にある火や塀の存在に気付かず、影が世界の全てだと思い込んだまま生きているのです。

ある日、一人の囚人の拘束が解かれます。

自由になった囚人は後ろを振り返り、今まで自分が真実と信じて見ていたものが、火に照らされた人形の影だったことに気付きました。

さらに進んで洞窟を出ると、洞窟の中の火とは比べられないほど明るく世界を照らしている「太陽」の存在を知ります。

囚人は太陽のあまりのまぶしさに目をくらませてしまいますが、少しずつ目を馴らしていくことで、やっと太陽を認識できるようになりました。

そして、太陽こそが本当に全てのものを照らし、成り立たせている世界の真実だと知ります。

囚人は自分が知った真実を、洞窟の中の仲間にも伝えようとしますが、他の囚人は彼の話を信じようとしませんでした。

洞窟の中の囚人たちにとっては影こそが世界のすべてで、世界の真実など知ろうともしないからです。

(引用:ズノウライフ)

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映画「マトリックス」もこのプラトンの洞窟の比喩をモチーフに制作されたという。

そしてもう1つ。
マトリックスの世界観に大きく影響を与えたと言われているのが押井守監督の「攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL」。

その世界観では、人間の脳は電脳化され、身体もサイボーグ化されている。
サイボーグ化された人間たちは時折「ゴーストの囁き」を感じとる。
このゴーストは人間が本来持つ自我や意識だとされている。

人間の肉体から生体組織を限りなく取り除く、あるいは機械で代行していった際に、自分が自分自身であるために最低限必要な物、又はその境界に存在する物こそゴーストであり、生命体の根源的な魂とも表現できる。
(出典:Wikipedia「攻殻機動隊」)

電脳化されてもなお残っている「人間が本来持つ自我や意識、本質的な部分」=ゴースト。
ここでも、ゴーストは見えないのにたしかにあるものとして描かれている。

じゃあ、その人間の本質、意識ってどこにあるの?

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AIは意識や感情を持てないの?(チューリングテストCAPTCHA)

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人間が自由意思で選択していると思っているのは実は錯覚で、本当は外部の環境や脳の電気信号などで決められていて、未来は全て予測できるのでは?(運命論、決定論、ラプラスの悪魔)

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いや、未来や運命は決定されていても、変数が増えたり変わったりすることで予測不可能なものがあるんじゃないの?(カオス理論バタフライ効果)

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それとも、世界はいくつも枝分かれしていて、それぞれに独立した“自分"が同時に存在しており、選択した瞬間に1つの世界に決まっているの?(多世界解釈マルチバースシュレディンガーの猫)

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こういったテーマは哲学、心理学、生命科学、脳科学、AI、宇宙論、量子論などなど様々なジャンルで議論されている。(※補足2)

これらの問いにしろ、宇宙の始まりにしろ、正解はまだわかっていない深いテーマである。

そしてもちろんHYBEも、これらのテーマに基づいて作品を作っているのではないかと思うのだ。

TXT「magic」は、機械に占領された近未来で、「感情」のコードを使ってハッキングすることで世界を救う少年たちのストーリー(🔗記事)。

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GOING SEVENTEEN ep.27、28 「EGO」は、クローン人間による自由意思の思考実験がテーマの肝試し(?)バラエティー。

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I-landは参加者の追放を自分たちで選択するというシステム。
そこから生まれたENHYPENのデビュー曲「Given-Taken」。
彼らのデビューは与えられた運命なのか(決定論)、自らの選択や意思で掴み取ったものなのか(自由意思)というテーマとも読み解ける。

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各コンテンツはそれぞれが独立したコンテンツであり、MV、バラエティ、オーディション番組として純粋に楽しめるし、きっとそういう人達が大多数であろう。

同時に、深掘りをして考察を楽しみたい人たちにもうれしい構造になっているのは確かであり、いろいろな「HYBE哲学」の繋がりを感じさせる丁寧な作りになっている。

「コンテンツの構想会議」をコンテンツとして作ってほしいくらいである。

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さいごに

こちらのnoteの締めくくりに書いた文章をそのまま再掲する。

先日行われた国連でのBTSのスピーチにこんな言葉があった。

What matters is what we choose.
~中略~
All our choices are new challenges and we want to say welcome to you.


和訳:
「大事なことは私たちが何を選択するかです。
~中略~
 私たちの選択はすべて新しい挑戦です。私たちは皆さんに「ようこそ、歓迎するよ」 と言いたいです。」

「our choice」もHYBEのキーワードなのかもしれない。

今の現状に留まるのか、それとも新しい世界に踏み出すのかの選択。
callingに気づいて、1歩踏み出す勇気を持てば、誰でもいつでも冒険の旅に出ることができるのだ。

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To be, or not to be ― that is the question.

Tamed-Dashedの歌詞にも出てくるシェイクスピア『ハムレット』の有名な問い。

生きるべきか、死ぬべきか。

今のままでいるべきか、それとも新しい1歩を踏み出すべきか。

ENHYPENのストーリーを踏まえると、いろいろな訳ができる。
だが、私は敢えてこう訳したい。

"有る"か "無い"か、それが問題だ。

あるのにないもの、ないのにあるもの。
"有る"と"無い"の重ね合わせ、それがENHYPENなのかもしれない。

"or"ではなく、"-(ハイフン)"で繋がった者たち。

To be - Not to be


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正解ではないとしても
とりあえず書いてみました。

全て個人の見解ですので、へぇ、そういう見方もできるのだなぁくらいの気持ちで読んでいただけたらうれしいです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

※本文中下線部には、語句の説明ページへの🔗リンクを貼っています。
※補足1
私はDark Moon=リリス説を支持しています。
リリスの神話的な意味合い、シンボルとしての意味合いなどについての考察は下記noteで少し触れていますので、ご参照ください。
※補足2
他にも「記憶」や「時間」なども重要なテーマではないかと考えています。
時間についてはセイコーミュージアムのHPで
・心と体に流れる時間(体内時計)
・宗教や哲学における時間観の変化
・ニュートンのどこでも均一に進む「絶対時間」
・アインシュタインの伸び縮みする「相対時間」
・宇宙と時間の関わり
の分野に分けて、とても分かりやすく説明されています。時間について目からウロコのことばかりなので、おすすめです。

【参考文献】
未来は決まっており、自分の意志など存在しない。 心理学的決定論/妹尾武治

文系でもよくわかる 世界の仕組みを物理学で知る (文系でもよくわかる物理学)/松原隆彦

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