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ENHYPENとオデュッセイア~英雄の旅からの考察

ENHYPENのストーリーは「英雄の旅」理論の流れに沿って作られているのでは?と感じる。

Dimensions-Dilemmaに関係が深そうな「オデュッセイア」とは、古代ギリシャの英雄叙事詩。
主人公のオデュッセウスが海上で放浪と冒険を続け、最終的に妻の待つ故郷へ凱旋する、というストーリー。

言うなれば、古代ギリシャ版の長い桃太郎のような感じ。日本神話のスサノオもイメージが近いかもしれない。


このように神話や昔話などの物語には、時代や文化を超えて共通する構造がある、というのが神話学者ジョーゼフ・キャンベルの「英雄の旅」理論である。

ジョージ・ルーカスはこの考えに多大な影響を受け、「スターウォーズ」を制作したそう。
他にも「マトリックス」や「ロード・オブ・ザ・リング」「ハリーポッター」「千と千尋の神隠し」など数多くのヒット映画も同じような構造になっている。

「英雄の旅」は8ステップに分けられる。

そして、そのはじまりは「Calling」なのである。





① Calling 

この「calling=天命、召命」は特別なものではなく、日常生活の中で経験する「あれやってみたい!」というような突然の衝動や、連絡しようと思っていた相手から偶然電話がかかってきたなどの「シンクロニシティ」(※補足1)も含まれるとか。

② 旅の始まり

旅の始まりでは、この世界に留まるのか、それとも新しい世界へと踏み出すのかという選択に悩みや不安、恐れは尽きない。




③ 境界線 

不安や迷いのある中、過去には戻れないという覚悟と勇気を持って未知の領域へ踏み出す。




④ Guardians (守護者との出会い)

勇気を持って境界を超え、メンターや仲間たちに出会う。
メンターといえば、スターウォーズではヨーダ、千と千尋では釜爺といったところか。桃太郎では犬、猿、キジの仲間たち。




⑤ Demon

悪魔、悪の化身、ドラゴンなどの最大の試練と戦う。
ライバルであったり、「自分は英雄ではない、無力だ」というような自分の中の影(シャドウ)の場合もある。




⑥ Transformation 

悪魔や悪の化身、ライバルもしくは自分自身の内にあるシャドウを打ち破って、主人公が変容する。

⑦ 課題完了 

これまでの旅を通して経験した葛藤や決断、挑戦などを振り返り、師やメンター、仲間の大切さに気づき、その旅の意味を悟る。

⑧ 故郷へ帰る 

旅の対価、報酬である宝・価値あるもの(※補足2)を見つけて帰還する。


ジョーゼフ・キャンベルは「千の顔を持つ英雄」という著書において、上記8タイプをもっとシンプルに

⑴ 主人公は別の非日常世界への旅に出る。

⑵ イニシエーションを経験する。

⑶ 元の世界に帰還する。

という3段階に分け、それをさらに細分化して構造を示している。




イニシエーションの段階には、「女神との遭遇」というステップもある

この時出会う女神とは大地母神、グレートマザー(※補足3)の象徴だそう。
これはDarkMoonであるリリスのイメージと重なる。

(Darkmoon=リリスについての考察は以下のnoteをご参照ください)


私は、Given-TakenやDrunk-Dazedはパンデミックの世界を救おうとしているヒーローのストーリーだと考えている。

英雄/ヴィラン善/悪が表裏一体となっていて、見る人によって見え方が違うようなストーリー。
たとえるならば、ハリポタのスネイプ先生のような。

そう思って見てみると、彼らの旅はこの「英雄の旅」をそっくりそのまま辿っているように思えるのだ。

Membershipでは「冒険に出る7人の少年たち」のコンセプトがあったり、Vliveなどでもポロポロとキーワードをそのまんま言ってくれている。

そして、先日ヒスンがWeverseにあげたのはレゴの「トランスフォーマー」

次は彼らの旅のクライマックスともいえるTransformation(変容)、難しい選択を乗り越え、新しい自分へと生まれ変わる部分が描かれるのだろうか?

となると、BORDER:儚いのGiven-Taken(Japanese ver.)の歌詞、

貰うか奪うか 証明の帰路 立たされた

後に「岐路」の誤植であったと発表・修正されたが、彼らの旅の流れのタイミングとしては「帰路」でもよかったのではないだろうか?

BORDER:CARNIVALを終えた今、いよいよ旅のクライマックスにさしかかるところ。
英雄が帰還するためには必ずもう一度境界線を超えなければならない。
戦う相手が大きければ大きいほど、順風満帆な帰路というわけにはいかないのだ。

多くの物語や映画などでも、敵に追いかけられるなど危険な状況が待ち構えている。

彼らの旅の成果を持ち帰るため、証明するための帰路と考えるとしっくりくる気がする。


この「英雄の旅」の一連の流れは、神話などの物語にとどまらず、「人の精神面での成長」も表しているそう。

英雄は旅から帰還しても、また新たな旅へと出発する。時には、怪我や死などの逆境からの復活や再生が描かれることも。

旅を終えて、新しい自分へと生まれ変わるのである。

これは螺旋階段を上るように、同じところをぐるぐる回りながらも上へ上へと成長していく人生を示唆しているのだとか。


あの度々アップされるヒーローポーズの写真もヒントだったのでは?

HYBEのことなので、きっと次もわかりやすいヒーロー像ではないだろう。
だが、ジレンマの中で、彼らがどのような選択をし、どのようなTransformationを見せてくれるのか、今から楽しみで仕方がない。


さいごに

先日行われた国連でのBTSのスピーチにこんな言葉があった。

What matters is what we choose.
~中略~
All our choices are new challenges and we want to say welcome to you.

和訳:
大事なことは私たちが何を選択するかです。
~中略~
 私たちの選択はすべて新しい挑戦です。私たちは皆さんに「ようこそ、歓迎するよ」 と言いたいです。

our choice」もHYBEのキーワードなのかもしれない。

今の現状に留まるのか、それとも新しい世界に踏み出すのかの選択。
callingに気づいて、1歩踏み出す勇気を持てば、誰でもいつでも冒険の旅に出ることができるのだ。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

(※補足1)
シンクロニシティ(英語:synchronicity):ユングが提唱した概念で「意味のある偶然の一致」を指し、日本語では主に「共時性」と訳され、他にも「同時性」もしくは「同時発生」と訳される場合もある。例えば、虫の知らせのようなもので因果関係がない2つの事象が、類似性と近接性を持つこと。(引用:Wikipedia「シンクロニシティ」)
(※補足2)
宝=霊薬(エリクシール)と訳されている。
霊薬とは神話の神が飲んだり食べたりするもので、飲食すれば不老不死になるといわれる。ギリシャ神話ではネクタール、錬金術では賢者の石がそれである。(参考:Wikipedia「霊薬」)
ENHYPENのMVに出てくる霊薬は以下のnoteをご参照ください。
(※補足3)
グレートマザー:太母ともよばれる。ユングが提唱した元型の一つ。
集合的無意識の中に存在する母なるものをさす。
慈しむもの、包み込んでくれるものといった存在のイメージ。同時に包み込むことは呑む込むことに通じ、子どもを独占・束縛しようとする破壊的なイメージもある。(参考:臨床心理学用語事典)

グレートマザーの持つ二面性は、「約束のネバーランド」のママ、イザベラをイメージするとわかりやすいかもしれない。


参考文献:
キャロル・S・ピアソン/英雄の旅 ヒーローズ・ジャーニー 12のアーキタイプを知り、人生と世界を変える

ジョーゼフ・キャンベル/千の顔をもつ英雄



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