ENHYPENの世界観とユンノリ ~運命を決める太陽と月と北斗七星
旧歴8月15日。
日本でいうと中秋の名月、旧盆に当たります。
秋夕といえば
思い出されるのは、まだデビューが決まったばかりの頃の初々しい韓服姿。
ソンピョン作りやチャギチャギ、ユンノリを楽しんでいた7人の姿です。
日本でいうすごろく遊びであるユンノリはその後もたびたび登場しています。
このユンノリ。
ただ運で決まる運ゲーのように見えますが、駒を動かす人の知恵や選択、さまざまな変数によって結果が変わってくるため、
人生の縮図
宇宙の原理
とも言われ、陰陽五行説など深い哲学的な思想が詰まっている遊びなんです。
その思想がENHYPENの世界観にも大いに関係しそうでとっても興味深いのですが、日本語でユンノリについて深く説明されているページがほぼなく…
この機会にぜひこちらで紹介させていただきたいと思います。
モ アニミョン ド
一か八かを表す韓国語の表現。
「一か八かやってみよう」
くらいのニュアンスの意味合いと、
「生きるか死ぬか」「dead or alive」
くらいの究極の選択の場面で使われることがある言葉です。
この言葉はユンノリから来ています。
サイコロの代わりに投げるのが4本のユッ。
この表裏の出方によって進めるマスの数が決まります。
モは馬で5マス、ドは豚で1マス。
モ(馬)かユッ(牛)が出ると、さらにもう一度ユッを投げることができるので、どんどん先へと進めるわけです。
ここで簡単にルール説明
ユンノリのルールはいたってシンプル。
ユンノリの盤の中心は北極星。
その周りを反時計回りに回る北斗七星を表すと言われています。
韓国では北斗七星は人間の生死や運命を司るとも言われ古くから信仰されているのです(七星信仰)。
景福宮も陰陽五行説や七星信仰に基づいた造りになっているとか。
また、周りにある28個のマスは二十八宿という説もあります。
二十八宿とは、太陽が地球上を一周する黄道の近くにある星座を28個定めたもので、月の満ち欠けの周期に合わせて28つとされています。
駒の進め方は4パターン。
ルートの長さは日照時間を表します。
最短コースが日照時間の一番短い冬至、最長コースが夏至、残りが春分と秋分と呼ばれています。
盤は元々丸い形でしたが、今は四角のものが多く使われています。
〇の形は天、盤が書かれた紙の□の形は地。
これはあのイカゲームでも使われていたシンボルと同じ。
"〇□△"で天地人を表します。
つまり、ユンノリの盤は太陽や月、北斗七星など天地の運行の象徴でもあり、ユンノリの遊びは天地の間で春夏秋冬を巡り暮らす人間たちの営みの象徴でもあるのです。
そして、丸い木を半分に割った形であるユッ。
切る前の円の状態は太極。
半円の丸い面は天=陽、平らな面は地=陰を意味し、4本の表裏で易学の八卦を表します。
ユッは半円なので、サイコロとは違ってそれぞれ出る確率が異なります。
ENHYPENの世界観との関連は?
さて。
ここでI-LANDの冒頭を振り返ります。
この一節には続きがあります。
デミアンは光と闇、陰と陽、二つの世界の間で戸惑いつつも、主人公が真の自己を求めていくという作品。
ユングはこのアプラクサスのことを
「一年で一周する太陽のシンボル、黄道十二宮の円」
「始まりかつ終わり」
「生でもあり死でもある」
とし、善悪両面の機能を持ち、二元論的な世界を統合する象徴としています。
これってまさにユンノリと重なりませんか?
天地・陰陽の間で追いつ追われつ、ただ運命に身を任せるだけではなく、いろいろな変数に振り回されながらも知恵を駆使しながら進んでいく。
ユンノリは人生の縮図とも言えるの遊びなのです。
陰陽思想と量子力学の繋がりって?
最近はMVの中に数式が出てきたり、DARK MOONにも本が登場したりとよく登場してくる量子力学。
一方は千年以上前から続く陰陽思想、もう一方はつい最近確立されてきた物理学の一分野。
全く違う分野に思えるかもしれませんが、実は深い繋がりがあります。
量子とは粒子でもあり、波でもある
量子とは2つの相反する性質を併せ持った物質、エネルギーのことです。
その量子は粒子と波の2つの性質を持つがゆえに、テレポートしたり、入れ替わったり、遠くにいるのに同じ動きをしたり、壁をすり抜けたり…とても不思議な振る舞いをします。
その量子を取り扱う物理学が量子力学、量子論です。
量子論の育ての親と言われる物理学者ニールス・ボーアは、量子物理学と東洋哲学には類似性があるとし、易学の研究をしていました。
彼はデンマークから勲章を受ける時には陰と陽、光と闇の互いが互いを生み出すという太極図を紋章に選んだといいます。
また、コンピューターでは0と1だけで計算をする二進法が使われていますが、この二進法を確立した哲学者でもあり数学者でもあるライプニッツも易経に関心があり、易経の陰と陽は二進法に対応させることができるとしています。
この0と1を「0でもあり1でもある」という量子力学の重ね合わせの原理を用いて処理しているのが量子コンピューターです。
粒子と波、2つの相反する性質を併せ持ち、
観測するまではその属性が定まらない量子
0と1、2つの重ね合わせによって
無限の可能性が広がる量子コンピューター
陰と陽、2つの対立する属性のバランスを保ち、
宇宙万物の生成と人間のあり方を示す太極図
相反する2つのものを繋げて、重ね合わせて、無限に拡張していく…
だんだんと類似性が見えてきたでしょうか?
量子論の考え方では、未来は確率によって無数の可能性があるとされています。
人生の分岐点で自分の選ばなかった選択肢を選んだ別の自分がいる世界、無限に広がるパラレルワールド、マルチバースの世界が広がっているという解釈です。
この確率や選択によって決まる未来というのも、ユンノリに似ているところでもあります。
陰陽や易学の八卦は太極旗やハングルの成り立ちにも関係しています。
韓国のアイデンティティーに深く根ざしているこの東洋哲学や陰陽思想は、量子論だけでなく、ユングの思想やPOP、ROCKなどの音楽の発展などにもいろいろと影響を与えています。
だからこそ。
ENHYPENの世界観にもその始まりであるI-LANDからずっとその思想は入っていると思うのです。
1つの卵から生まれた2つのグループ。
EN(엔)=陰
&(앤)=陽
2つグループの重ね合わせによって、ユニバースはどのように広がっていくのか。
また彼らが変えたい世界線、変えたい運命、変えたい未来とは何なのか。
これからのストーリーがとても楽しみです。
結論:ユンノリの楽しみ方
今一体どっちが優勢なの?
なんでそんなに盛り上がってるの?
ユンノリのコンテンツを見ながらENHYPEN & Hiでのニキのように無の表情になってしまっていないでしょうか?
これからは
いかに相手を捕まえてスタートに戻すか
どのルートを選択して相手に捕まらずに早くゴールするか
いい場面で低確率の「モ」や「ペクト」を出せるか
という点に注目すると、一緒に楽しく盛り上がることができると思います。
そして!
あんなにシンプルな盤とルールなのに、こんなにも深い哲学的な思想が含まれているんだなぁと、ぜひ思いを馳せながら見てみてください。
【参考】
本文下線部には出典や参考ページ、動画へのリンクを貼っています。
その他は下記に記載しています。
・占星術とユング心理学 / リズ・グリーン
・민족의 얼, 북두칠성(民族の魂、北斗七星)
・윷놀이(ユンノリ)/Wikipedia
・윷놀이/한국민속예술사전(ユンノリ/韓国民族芸術辞典)
・小学生でも楽しめる最新物理学入門 タイムマシンのつくり方 ”時間の謎”にいどもう!/佐藤勝彦
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