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企業保険と任意再保険

元受保険会社が手配する再保険には特約再保険と任意再保険があります。前者は条件に合致するものを包括的に再保険に出すもの、後者は元受保険会社が個別判断にて巨大なリスクを引き受ける企業保険で使われる事が多いものです。

国によって規制は異なりますが、概して再保険会社は元受保険会社と比べると設立は容易です。元受保険会社が個人を含めて幅広い契約者に保険サービスを提供するのに対して、再保険会社は保険のプロである元受保険会社が契約者ですから、「契約者保護」という観点があまり必要ありません。

国内にも任意再保険を引き受ける再保険会社はありますが、再保険会社の多く集まるマーケットとして、ロンドン、ニューヨーク(バミューダ)、シンガポールなどがあげられます。資本力があれば参入障壁は低いので、低金利時代、また911テロ事件後など保険マーケットのハード化局面では新たな再保険会社の設立があり、供給が増えることによる価格の減少、いわゆるマーケットサイクルが見られました。

ところが、昨今ではハードマーケットにも関わらず再保険マーケットから撤退する会社が増え、ソフト化の兆しがあまり見えません。理由としては、米国の金利上昇を受けて資本家が他の運用手段に資金をシフトしていること、自然災害や米国の賠償環境など保険引受リスクのボラティリティが増加し、投下資本に対するリターンが十分に得られないということが考えられます。

また、日本企業にとっては、海外再保険者から調達する再保険キャパシティは円安の影響を受ける事になります。従って、本邦契約者としては自社の企業保険プログラムが任意再保険に頼らずとも、国内元受保険会社で引受可能なストラクチャーを考える必要があります。その為にはキャパシティ調達の根拠となるリスク評価を精査し、そもそものリスク量を減らす努力をする事、特に保険マーケットの引受アペタイトが低いリスクは自社資本を使って自家保有を引き上げる事が必要になります。

企業保険の契約者は自社の保険プログラムを主体的にコントロールしなければなりません。海外再保険キャパシティは局面によっては有益ですが、資本の論理でマーケット変化が激しい為、その利用に関してはその前提を踏まえておく必要があると思います。

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