保険会社のリスクアペタイトとバリューチェーン
例年同様にグローバルプログラムの更新を4月に終えたこの時期に、引受保険会社各社との対話を行う時間を頂き、我々の取り組みやリスクマネジメントの現状をお伝えさせて頂くと共に、保険マーケットの動向や各社の課題認識、被保険者に対する要望を伺う機会としています。
普段は仲介者を通じたコミュニケーションですが、直接のやり取りを通じリスクマネージャーとして「人アンダーライティング」を受ける事も大きな理由の一つです。特に中長期の取引にあたっては、目先のリスクや保険料も重要ながら、約束した事をきちんと守るという基本的な行動の繰り返しにより築かれる双方の信頼関係は極めて重要となります。
また、保険会社のリスクアペタイト、経営方針を理解する事も大切です。本邦の保険会社は割合は減少傾向ですが、自動車保険を主力としていますので、自動車メーカーは自社リスクだけでなく、販売ネットワークにおける自動車保険も大切なバリューチェーンですし、大企業であれば被保険者の従業員向けの団体扱や団体契約もその一つです。
最近では、企業の提供する製品やサービス付帯の延長保証ビジネスもバリューチェーンの一部と捉えられるようになりました。以前は企業が自ら再保険会社であるキャプティブを設立する事に対して、元受保険会社はやや難色を示すケースも多かったと思いますが、近年は保険会社も引受リスク量を増やさず、サービス提供による収益機会の拡大ととらえ、積極的に取り組む会社も増えてきたように思います。
こうした保険のバリュチェーンも見据えながら、コアである企業自身の保険プログラムについて、各社のアペタイトを考慮しながら、仲介者の助けも得つつストラクチャーをデザインしていく事になりますので、リスクマネージャーは自身の責任である企業保険の範囲を超えて、俯瞰的に自社のビジネスを見渡し、必要に応じて社内の然るべき部門とのコミュニケーションと意思決定を行っていく必要があります。
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