航空保険事故と海外直接付保について
1月2日に羽田空港にて日航機と海保機の衝突事故が発生しました。改めて痛ましい事故であり、犠牲となられた方々のご冥福をお祈りいたします。本事故に関してロイターの報道では日航機の航空保険の幹事会社がAIG、ブローカーはウィリスタワーズワトソン、付保額は$130Mであることが報じられました。
事故直後にも関わらず、このような詳細情報が報じられることも驚きでしたが、多くの読者が日本航空の航空保険の元受保険会社が外資で日本でも営業免許を持つAIG損害保険と誤解されたのではないかと思います。航空保険は特殊な保険種目なので、引受判断を行うアンダーライターが少なく、その多くはロンドンに拠点があり、今回のAIGも同社のロンドンオフィスを指していると理解できます。
つまり、日本の元受保険会社は日本に免許を持つ保険会社であり、さらに本法における航空保険は独禁法除外となっている航空保険プールへ全額出再、保有上限を上回る場合はさらにロンドンマーケットへ出再され、その再保険幹事がAIGという事になるものと思います。
元受保険会社が再保険を出再する場合には、(出再方式にもよりますが)通常元受保険会社手数料を差し引きます。さらに再保険契約を結ぶ再保険会社との間に再保険ブローカーが介在する場合には彼らの再保険手数料も差し引きます。よって再保険会社は元受保険料からこれらの手数料(通常20%-30%)を引かれた保険料で同じリスクを引き受け割合だけ負う事になります。
それならば、契約者が直接海外再保険会社と契約を結べば良いのでは?との発想もあると思います。つまり海外直接付保です。しかし、日本にも海外付保規制があり、日本所在のリスクは日本に営業免許を持つ保険会社にしか付保してはならない事になっています。一応例外規定があり、保険業法186条にて定められた、契約締結前に所定のフォームにて内閣総理大臣に申請する事で、海外直接付保は可能ですが、極めてハードルの高い事務手間であると共に、更新の度に実施する事も現実的ではありません。
そんなニーズは航空保険を付保する特殊な企業だけでは?という声もあるかもしれませんが、例えば日本の地震リスクは国内に所在する全ての企業が直面するリスクであり、家計地震と違い民間100%の企業地震保険については、場所によりキャパシティを十分に得る事が難しい事があります。一方で、日本に免許を持たない外国保険会社で、ポートフォリオ分散の為に日本の地震リスクを引き受けたい会社がいた場合、海外直接付保も選択肢にはなり得ます。
勿論、保険契約の為の契約行為、約款、保険料支払い、事故発生時の求償方法、査定方針など、日本に認可免許も持たぬ海外保険会社との折衝ですから、それなりに契約者の経験とノウハウも必要となるでしょう。企業保険の引受については年々保険会社の引受姿勢は厳しくなっており、保険契約者としてはあらゆる可能性を検討しておく必要があると考える次第です。
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