見出し画像

保険調達の難しさが再認識される時代

本日も日経新聞に企業保険のカルテル問題に関する記事が掲載されました。国内大手損保に公正取引委員会の立ち入り検査があったとの事でした。いくつもの事例の報告があった背景として、損保の寡占化、企業保険収支悪化、過剰な営業協力、トップライン思考などの指摘があります。

本来は保険付保の意思決定は、①リスクを把握して分析する、②企業の戦略と保険マーケットのアペタイトを考慮してストラクチャーを決める、③マーケティングを行って市場から最適な保険を調達する、という大まかな流れで進められる事になります。

企業保険がリスクマネージャーやプロの仲介者無く、片手間で手配されてきた時代には、保険会社が①〜③を主導的に行ってきた、という時代が長く続いたのだと思います。筆者も損保企業営業時代は自分自身が担当企業のリスクマネージャーだと思って仕事をする事を教えられてきました。

本来はこれらの業務は非常に高度であり、事業規模の大きな大企業となれば、保険の付保意思決定一つにも大きなレバレッジがかかっており、会社業績を左右し、場合によっては多くの従業員や取引先を路頭に迷わす可能性もある重要な意思決定であり、専門性のない担当者が片手間でやるような仕事ではありません。

それにも関わらず、これまで日系損保は企業保険を喜んで引き受けしてきましたので、契約者である日本企業はこれまで保険調達にそれほど苦労をせず、事故があっても手厚いカバーがあり、その後の更新でも引受を断られる事なく、ある意味では損保の過剰サービスの恩恵に浴してきたとの見方も出来ます。

ここ最近は状況が一変しました。米国リスクの高まりや金利の上昇を主要因として、主に再保険マーケットから資本が減少して価格が急上昇、特に再保険に負荷の高い企業保険に対して保険会社の引受姿勢が大きく変わっています。これまでのような巨大なキャパシティを長期安定的に調達する事は難しくなり、細切れのキャパシティを多くの保険会社からかき集めねばなりません。

この先、多くの日本企業でこうした保険調達の難しさが再認識される筈です。①〜③を実践して、企業に必要な保険についての意思決定と調達を行う事について、自らが必要なリソース、つまりリスクマネージャーや専門性のある仲介者を使いこなせなければ、今ある保険証券を維持することすら難しくなるでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?