賠責プログラムにおけるClaims madeとOccurrence
賠償責任保険は通常第三者の身体障害または財物損壊に伴う法律上の賠償責任をカバーしており、原因事象たる事故の発生と、被害者(あるいはその代位求償者)からの賠償請求に時間的なズレがあります。
よって、賠償責任保険では以下二通りの形態があります。
①Claims made basis: 損害請求ベース、被害者からの損害請求日を事故日として同日に有効な保険証券が適用。原因事象となる事故は証券に定められた遡及日(通常は初めて賠償責任保険を買った日)以降に発生したものに限られます。
②Occurrence basis: 事故発生ベース、原因事象となる事故発生日に有効な保険証券が適用。
①Claims madeの場合には、保険期間内に被害者からの請求行為が無ければ当該証券がその先使われる事はなく、成績管理や保険会社の引受責任も保険期間で明確です。一方で、将来的に訴訟事案になりうる大事故の発生時にはその後の保険引受に慎重となる保険会社が出てくる事が想定される事から、被保険者と保険者の関係ではやや被保険者不利とも言えます。
②Occurrenceの場合には、物保険や人保険と同様に、原因事故発生日の保険証券が適用されるため、被保険者と保険者の間での恣意性は働きませんが、賠償請求には事故日と請求日の間に大きな開きが生じるケースも多く、すでに保険期間の終了した保険証券でも成績を締めることが出来ず、保険会社の引受責任も終わりません。てん補限度額の管理も保険証券毎に必要となりますので、成績管理のシステム対応負荷もかかります。
賠償請求事案は係争が長引くと事故日から最終決着までに数年〜、現在は免責となっていますがアスベストなどの係争事案は数十年に及ぶものがあります。また、被害者からの直接請求だけでなく、その保険会社からの代位求償もあり得る事を考えると、被保険者としても常に保険期間の終了した古い証券のてん補限度額の残高管理が必要となります。
そのため、保険者としては①Claims madeでの引受を好む傾向にあり、特殊な賠償責任保険(航空や船舶、専門職業人など)においては、そもそもOccurrenceで引受を行う保険会社が無いというものもあります。
賠償責任保険プログラムは、物保険と異なり理論上上限値はありません。特に会社規模が大きくなれば商品、サービスを利用する顧客の数や地理的な分布も広がり、様々な請求事案に巻き込まれる事、たとえ小さな事故でも報道により周知の事実になる事がありうる事も勘案の上、会社を守る砦としてその契約内容を精査し、必要なカバーや契約形態を考えていく必要があると思います。
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