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続:大企業にはリスクマネージャーが必要である理由

明日12月5日(木)には金融審損保WG第5回の開催が予定されており、一部新聞報道によればWGの報告書として企業保険市場への中小規模の損保参入促進、ブローカーの活用、企業代理店への規制強化、過度な便宜供与の禁止などが盛り込まれる予定である旨報じられております。前回参加した有識者会議の流れに沿えば、第5回のWGで報告書ドラフトを議論し、大きな異論がなければ、事務局と委員の方々で最終報告書を纏めて月内に公表といったスケジュールとみております。

記事内容通りであれば、有識者会議にて提言したリスクマネージャーの在籍する大企業のプロ契約者化、同会議においては「適格保険契約者」としておりましたが、こちらは残念ながら損保WG報告書への盛り込みは見送られた模様です。しかしながら、ブローカーの活用促進、企業代理店の規制強化(高度な専門性を持つ代理店の育成)があったとしても、特に規模の大きな大企業には本体コーポレートにリスクマネージャー在籍が必須であると考えます。

グローバルなネットワークを持つ保険ブローカーは、企業がリスクアセスメント、分析、またグローバル保険プログラムを組成、運営する際などにサービスプロバイダとして重要な存在ですが、リスクの認識とそれに対する移転と保有の意思決定は各契約者企業が行う必要があります。また、意思決定後の実施フェーズにおいても、(一部はアウトソース可能だとしても)社内ガイドラインの作成、説明、照会応答対応などプロセスオーナーとして企業自身が行わねばならぬことも多くあります。

これまでの本邦のプラクティスに鑑みれば、「企業代理店がその役割を本体企業に代わって実行している」会社も多くあると思います。この点に関して有識者会議や金融審損保WGでの議論を踏まえれば、リスクの保有と移転の意思決定は各企業の経営判断そのものであり、本来は企業自身が自ら主体的・自律的に行うべきものであると言えます。勿論、コーポレート機能の一部を外部アウトソースするとの考え方もあり得ますが、それならば保険会社の代理店として保険料に対する手数料を受領する立場ではなく、本体企業からの業務請負としてリスクマネジメント業務に対するアウトソーシングフィーでなければ、構造上利益相反を避けられません。

損害保険は企業にとって非常に有効なリスクマネジメントのツールでありますが、企業の直面するリスクは保険化可能なものばかりではなく、むしろ保険化が出来ないビジネスリスク(=企業としては利益の源泉として取らねばならないリスク)の方が遥かに大きく、本邦におけるリスクマネジメントとは上場企業のディスクロージャー等を参照するとこちらがメインとなっています。しかしながら、昨今激甚化する自然災害や賠償リスクの高まり加えて、保険マーケットにおける大企業セクターのキャパシティ不足を踏まえれば、保険リスクマネジメントの巧拙が企業業績に与える影響が増えてきています。繰り返しになりますが、企業の規模の大きな大企業にはリスクマネージャー必要であると思います。

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