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企業にとっての賠償責任保険

営利企業はリスクを取って利益を株主に還元する事を目的とした組織ですので、とったリスクのうち、残念ながらそれらが発現してしまう事があります。特に事故に伴う金銭的な損失の場合には保険ヘッジの検討をする事になりますが、大きく分ければ自らの所有物を守る物保険と、他人への賠償責任を守る賠償責任保険に分けられます。

賠償責任保険は企業にとって、事故発生時の第三者に対する賠償をカバーする最後の砦となりますので、非常に重要です。企業の保険見直し、グローバルプログラム化を目指すならば、まずは賠償責任保険から手をつけるべきと考えます。自分でValueの分かっている物保険と異なり、賠償責任保険は理論上上限はありません。企業保険では自動車保険のように対人対物無制限のような契約は出来ませんので、適正なてん補限度額設定が必要になります。

まず一つ目の難しさはこのてん補限度額設定ですが、シナリオベース、ベンチマークなど手法がありますが、最終的には自社の事業内容やリスク管理体制を勘案して判断をする他ありません。また、契約内容によっては一事故/年間支払限度額(Annual Aggregate Limit)を付される場合もありますので、万が一の事故の際に限度額費消した場合の対応(Reinstatement)を考えておく事も必要になろうと思います。

次に約款構成ですが、日本語約款の列挙責任主義(施設賠、受託賠、生産物賠など)に比べると、CGL(Commercial General Liability)の包括責任主義のほうが、漏れダブりなく企業にとっては望ましいですが、難解な英文約款に抵抗のある被保険者も多いと思いますので、この辺りは特にリスクマネージャー不在の企業にとっては仲介者の役割が大きいと思います。

昔保険会社の企業営業において、「賠償責任保険を制するものは、その会社の保険リスクマネジメントを制す」と言われていたようですが、リスクマネージャーの立場でもその通りだと思います。事業部門からの相談事項や保険事故の対応を通じて、社内で起きている事が可視化され、リスクマネジメントレベルを映し出す鏡のような存在となります。

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