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保険リスクマネージャーが増えている理由

企業に保険リスクマネージャーが徐々に増えて来ていますが、日本の上場企業の中ではまだまだ数は少なくマイノリティですので、実際にリスクマネージャーが着任すると何が起きるのかはよく知られておらず、特に既存の保険ビジネスを扱う保険会社や仲介者の皆様からは「黒船来襲」のように捉えられることもあります。

確かに新たに創設される役割、着任する人に期待される事は、前例を踏襲する事ではなく、企業の置かれた状況、経営者の目指すものを理解して、現状を分析して改革案を立案、実行する役割ですので、内容はともかく改革には反対という保守派の方から見れば黒船来襲に見えるかもしれません。

しかし、社会全体に目を向ければ、気候変動による自然災害の激甚化、サイバーリスクなどの新たなリスクの出現、ステークホルダーからのリスク情報開示要請の強化など、世の中の複雑性やリスクボラティリティは増していく一方であり、何より日本企業の所有者たる株主構成はここ30年あまりで伝統的な日本企業の持ち合いから、外国人株主比率が大きく増加しています。

このような環境変化の中で、保険リスクマネジメントについても、株主である保険会社にお任せ、という時代から、自ら主体的に考え、改革を行っていく必要性が増してきている一方で、企業の直面するリスクを評価し、保険移転可能なリスクについて最適に移転を考える事のできる専門家に対する要請も高まっています。

こうした機能は、リスクを取って利益を出す事を求められるどんな企業にも求められるものですが、非常にニッチな分野であり、社内のOJTで人材を育てていく事は難しく、社外の専門家リソースの活用とともに、同様の役割を持つ他社人材との情報交換も有効です。

リスクマネジメントのフレームワークは企業の競争力源泉ではなく、ある意味では基礎体力のようなものです。各社の基礎体力が向上することはリスクテイカーである株主や保険会社にとっても、マーケットに参加している企業自身にとってもメリットのある話です。従って、良い取り組みはどんどんシェアして、全体の底上げをしていく事が求められていると思います。

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