見出し画像

リスクプロファイルとは

リスクを取り扱う上で必ず認識をしないといけないリスクプロファイルは、当該リスクの発生頻度と損害の大きさの関係を示す確率密度関数です。当然ながらリスクの種類によってカーブの形は様々ですが、概ね下図のような形状となり、各区間における面積の大きさが純保険料の大きさに対応します。また、各区間の面積を四角形にならした高さがRate on Line(ROL)であり、損害額の大きな上層レイヤーほどROLは低くなる事が分かるかと思います。

リスクプロファイル

0からYまでの区間は、「高頻度低損害」であり、言わばほぼ毎年あるいは10年に一度程度の頻度で起きる「珍しくない事象」です。保険会社の損害サービスやロスプリといった他の動機のない純粋なファイナンス視点では、本来付加保険料を払ってリスク移転の不要な自家保有されることの多い損害と言えます。

YからXまでの区間は「低頻度大損害」であり、数十年から数百年に一度の「珍しく事象」であり、分散効果が働く典型的な保険移転可能リスクであれば、保険移転される事の多い損害と言えます。

Xから上の区間は「極低頻度超大損害」であり、千年に一度、もしくはそれ以上に稀な事象であり、そのインパクトの大きさから保険レベルの話ではなく、株主や国家あるいは地球全体といったステークホルダー全体の負うレベルの損害と言えます。

リスクプロファイルは真の形状は誰にも分かりませんが、扱うリスクにより上図のような平均的なカーブ形状に比して0→Yの面積が大きいのか、Y→X→∞の面積が大きい(Fat tailとも呼ばれます)のかは、リスクシナリオや過去の実績を踏まえれば、そこまで議論は割れないところかと思います。

リスクは動的に変化していきますので、リスクプロファイルもその形状が変化します。例えば物価上昇は同一の事故でも損害額が一律上昇しますので、カーブ全体に影響が及びます。一方で、製品事故を考えた場合に製品の出荷数量の増加は事故頻度の増加として0→Yにはより大きく影響するが、Y→X→∞にはさほど影響を及ぼさないという事もあります。

保険リスクマネジメントの実務において支払保険料の折衝や、社内の保険料配賦を考える時には必ずリスクプロファイルを踏まえて行う必要があります。もちろん被保険者の支払保険料は純保険料だけでなく、引受リスク量に対する資本コスト、安全率、付加保険料が加味されますので、ここまで単純化は出来ませんが、保険料の設定はリスクプロファイルと一体不可分で事に変わりはありません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?