![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/152625937/rectangle_large_type_2_4256587a1f356443736e1a0b88152887.jpeg?width=1200)
記憶を辿る墓参り
今年のお盆休みは土日祝日を含め6連休。
オットはカレンダー通り平日は仕事だったので3日ほどは1人で過ごす休みとなった。
そんな長期休みであるにも関わらず何をしていたかも思い出せないくらい、
特に何もしていない。
それでもお盆休み中には墓参りにはいこうと思っていた。
私の実家のお墓はつい最近母が仲間に入って、アッチの世界ではさぞかし賑やかであろう。
私が生まれる前、赤ちゃんの時代に亡くなったすぐ上の姉が、やっと母に甘えられているだろうか。
実家のお墓は、千葉にある大きな霊園の中にあり、
子供の頃から父の運転する車で行っていたのでお墓の場所はなんとなくでしか覚えていない。
そもそもそんな昔の車にはナビなどないので父自身もぼやっと覚えていたのかもしれない。
大人になり、車を所有する頃になって姉と一緒に行ったことはある。
姉がいたので、なんとなくの道もお互い「そうだよね」で進んでいけた。
その後、1人で行ったことが1、2回あったかもしれない。
しかしながら着いた後の安心感で、場所の正確な位置がスッと記憶から消えてしまっていたのも事実。
そんな私が、1人で久しぶりのお墓参りをするのである。
今の住居に移ってから行く機会もなかったので、始まりからして不穏である。
お盆期間中の幹線道路の混雑には飽き飽きしていたのでGoogle先生に頼って、
なるべく裏道を通って行くことにした。
馴染みの道から知らぬ道を経て、徐々に見知った風景となる。
若い頃、千葉にあるオートバックスで6年ほどアルバイトしたことがあった。
そこで知り合った友達は、やはり千葉県に住む人が多く、どこかへ遊びに行くとなると
千葉県のどこそこ、が候補に上がってくるのだった。
もちろん通る道も地元スペシャル…
聞いたことのない県道、細いけどかなりショートカットになる道を教えてもらい
私自身も千葉に詳しくなっていく。
今回通った道はその時の道路がいくつか出てきた。
ものすごく懐かしく、楽しかった。
っていうか、生まれる前から建ってたお墓にたどり着くまでに
生まれて青春を過ごした道を使うなんて、なんだか人生って不思議だなあと実感したのであった。
時期的には、梨の季節。
通る道は梨街道で、農家さんの直売梨を家の前で売っているのを何軒も目撃しながら向かう。
「帰りはどこかで買っていこう」と思いながら、まずはお墓参りへ。
とうとう霊園に続く一本道となり、そこがまた自分の不遇な時期をやり過ごす為に通っていた道であったことに気づいてしまった。
仕事を辞め、彼氏とも別れ、ただの生きる塊であった時期。
実家に住んでいたので単発のバイトで食いつなぎ、バイトに行く時以外は家に引きこもりネット三昧。
土日は特に息苦しくなる。
昼過ぎまで寝て、午後起きても夕方までネットをしているだけの日々。
空っぽのハリボテの気分だった。
夜になるとお腹が空いて動き始める。
とはいえ、やはり外に出たくて目的もなく車で出かけるのだった。
そんな時も向かう先は千葉の方で、スタバの独立店舗なら当時夜の11時頃まで開いていたところがあった。
携帯ゲーム機を持って行って、スタバに入ってコーヒーを飲みながらのんびり過ごす。
夜のスタバにはいろんな人がいた。
それぞれ干渉し合わず静かに同じ空間にいて、ただそれだけだったけど、それでよかった。
当時は孤独感を埋める為に行っていたような気もする。
郊外のスタバのせいか、帰りに見上げる空は真っ暗で、目の悪い私でもはっきりと星が見えるほどだった。
店を出て空を見上げると押し寄せる孤独と、この後自分はどうなるんだろうと漠然とした不安が自分を震わせていた。
そんな時の思い出を、こうして思い出すと今はなんて幸せなんだろうと実感する。
歳はとったが一応正社員で働いているし、車も相変わらず傍にあって、結婚もし家も買えた。
あの時の自分を「不遇な時代」と揶揄したが、それがあっての今。
もう一度やり直すか?と言われてもNOと言いたい。あの時の私よ、ありがとう。
…と郷愁に浸って道を脱しました。
とにかく子供時代からの、父の運転する車の後部座席から見ていた風景を思い出しながら
「ああここだった」と文字の通り記憶を辿り、無事に到着したのは昼前くらいだったと思う。
仏花はスーパーで手に入れた貧弱な花であったのは申し訳なかったなあと思いつつ。
![](https://assets.st-note.com/img/1725093530442-B7MJqCu4DF.jpg?width=1200)
墓石を目前とすると、自然と声をかけてしまう。
「暑いね、そっちはどう?」なんてちょっと側から見るとアレではあるが。
先に父がきた痕跡があり、少し枯れかけているが立派な仏花の横に私の買ってきた貧弱な仏花をねじ込む。
簡単に墓掃除をして、サクッと拝んで、「じゃまたね」と告げて帰路に着いた。
お墓参りって、意外と気分変わるんだなあと最近気づく。
![](https://assets.st-note.com/img/1725093768832-gPQ9N96BIl.jpg?width=1200)
オットのお墓の方が近いのでよく行くのだが、花を買うのも仏花とはいえ嬉しい。
スッキリした気持ちで、出口に向かう。
流石に大きな霊園のため混み合う時期は一方通行としており、出口は農道のような細い道を通される。
この農道、落ちそうで怖い。そしてここはどこだろう?と思うほどかけ離れた風景なのだ。
昼を過ぎた頃だったので昼食にスタバでも行くかと、ナビをセットするがどうも変な道に出てしまい、かけ離れた場所へ来てしまった。
更に渋滞になり悩んでいるとふと看板が見えた。聞いたことのないカフェであった。
そこに入ってメニューを見るととんでもなく北海道系のカフェであることを知る。
カフェとは思えないほどのボリュームだった豚丼を食す。
![](https://assets.st-note.com/img/1725093589573-9tmDGeseed.jpg?width=1200)
また行きたいなあと思いつつ、多分もういけないだろう。
いくら若い頃に見知った千葉であっても、あの土地勘のない場所、もうたどり着くことはないであろう。
そして行きで決意していた梨を買うので梨街道へ出て、色々な農家さんの入口を探りながら行くのだが
こういうのはここと決めて行かねばいけないのだと痛感する。
しかもすでに売り切れと張り紙がなされている場所もあった。
あそこ良さそうと思うと入るには進み過ぎているのだ。輪をかけて決断力のない私である。
とうとう入ることができたのはコンビニが隣にあった大きな間口の梨農家さん。
車の入り口がフラットで間口が広いのは、私の車にとってありがたい場所である。
小ぶりながら6個ほど入った梨の袋を1200円で購入。
![](https://assets.st-note.com/img/1725093628786-Arde6A3iOr.jpg?width=1200)
満足して、帰宅し夕飯後にオットと戴いた。
思い返せば、母は人に借りを作りたくないタイプの人だった。
何かをプレゼントすればすぐにお返しを渡そうとする。
今回のカフェも梨も、母の墓参りのお礼返しだったのかもしれない、と思ったら笑えてきた。
また同じ道を辿って思い出を思い返しながら、ついでにお墓参りができればと思った。