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すべての体験はおもしろおかしく笑い話のタネとなる

今、この記事をドミニカン リパブリックのプンタ カナにあるホテルのプールサイドで書いている。プンタ カナに到着して今日で8日目。プールサイドで見るホテル滞在客の顔ぶれが毎日少しずつ変わっていく。何日か続けて見かけた小さな男の子を二人連れた若い夫婦の家族連れの姿が今日はいない。見事に大きい立派なお尻を持ったヒスパニック系の女性と連れの男性の姿もなくなった。サンタの帽子と赤いT-シャツをお揃いで着ていたアメリカ人のグループもホテルをチェックアウトしたようだ。私達夫婦のように2週間の滞在は長い方になるのか、新しい顔ぶれが来たかと思えば、見慣れた顔馴染みの顔がいなくなっていく。

1週間前も、3日前も、昨日も、今日も晴天で毎日が摂氏28度とほとんど天候が変わらない。日によって数分から15分間シャワーのような雨が降るが、あとは果てしなく真っ青な空が広がっている。いつもの習慣で毎朝起きたらニューヨーク市とニューヨーク州アップステートにあるキャツキルの天気を両方チェックするのだが、昨日の朝のキャツキルの山の天気は1日中雪が降り、温度は摂氏マイナス7度だった。「雪かきしなきゃ」「ストーブにもっと薪を足さないと」とか、主人と冗談を言い合いながら、実際は雪かきの心配も薪をガレージから運んでくる必要もないのにホッとする。もう直ぐクリスマスだというのにまるでクリスマスの気分になれない温かいプンタ カナの天候を楽しんでいる。ニューヨークは、通常11月第4木曜日の感謝祭が終わるとその翌日の金曜日からクリスマス ツリーが街のあちこちで売られ始めクリスマス商戦が開始し、街がクリスマス一色となる。

私達が滞在しているこのホテルには、ロビーにクリスマスツリーも飾ってなければクリスマスイルミネーションもない。全くクリスマス シーズンの雰囲気が微塵も感じられないのである。そして何よりの衝撃は、誰もマスクをしていない!
ニュースでは、この2週間のあいだでニューヨークのコロナウィルス感染率と入院患者数が激増したとのことであるがまるで別世界の話のようである。コロナと言えば、中国本土の「ゼロコロナ」政策の規制の緩和が発表されたばかりだが、過去10年、ヨーロッパやメキシコを旅行してどこに行っても中国人の観光客が際立って多かったが、今回のこの旅行で中国人を見たことは一度もなかったのはやはりコロナの影響によるものであろうか。

今回のホテル選びは正直に言って間違った。これは、私達の愚かさと怠慢さに責任がある。リサーチをもっと念入りにするべきだったのに、ドリームズ リゾート&スパというホテルのチェーンの名前だけで判断して詳しくホテルの場所も調べもしないでホテルに来てみたらまるで期待していたのとは違った。私達は、メキシコに過去10年にわたりバケーションに出かけていて、そのうちの9回をTulum(タルム)にあるドリームズ リゾート&スパ に滞在しておりその都度素晴らしい体験をしているので、プンタ カナも同じグレードを期待していたのだった。今回は値段の安さも影響してか、客層もメキシコのタルンとは違っていた。持ってきた何着ものドレスは、着る機会がないままである。皆が非常にカジュアルな服装なので、レストランでもドレスアップすると返って場にそぐわず浮き上がってしまうので、長いドレスを着るのをやめた。「郷に入っては郷に従え」の教えの通りにしている。

一番の期待はずれだったのは、ここはカリブ海ではなく大西洋に面していて海が全く違うのである。毎日赤い旗がビーチに掲げられていて海に入るのを禁止されている。どこの世界にも規則を守らない連中はいるもので、何人かが無視して海に入って行ったら早速ライフガードに呼び止められて連れ戻されたのを目撃した。海で泳ぐのが一番の楽しみだった主人は大いに失望して毎日をまるで大きなトドのようにプールサイドで寝そべって過ごしている。プールも底の深さが1メートル弱で1メートル90センチ近い長身の主人は膝が底について泳ぎの得意な人が満足に泳げるような深さではない。一方泳ぐのも興味がなく、得意でもない私はホテルのゲストの英国人の男性から譲ってもらった大きな浮き輪がとても気にいって珍しく毎日、といっても1日1時間ぐらいなのだが主人に浮き輪を押してもらいながらプールにぷかぷか浮かんで満足している。

プールサイドに寝そべっては本を読んで、飽きたら周りの人たちの観察をするのが私達の目下の日課だ。特に聴こうと耳を傾けなくても色々な言語が自然に聞こえてくるので、ヨーロッパからの人達が多いのがわかる。英国の英語、ドイツ語、フランス語、あとは何語かわからないが東欧のどこかの国であろうと思われる。

カナダからの50歳代の男性4人、女性2人の計6人のグループも何日か滞在していた。会話から兄弟、親戚の関係だと察する。このカナダ人になぜ注目がいったかというと、彼らの大声で話している英語の言葉使いが恐ろしく下品で話している内容も耳を疑うほどおよそ教養のかけらもないものであったからだ。公の場で皆に聞こえることなどお構いなしで、これほど大声で品のない会話をするのはもちろんお国柄ではなく個人の育ちと環境からくるものであろう。

毎日のプールサイドでのビーチチェアの場所が大体決まっている。私達の場所から2つ離れたチェアに陣取っていたドイツ人の60歳代の夫婦は今日はもう見かけなかった。このご主人は、いつもプールから上がってきて自分のチェアに戻ると隠すこともなく濡れた海水パンツを脱いで乾いた下着に着替えるのである。又プールに戻るときも惜しげもなく真っ裸になって海水パンツに着替える。こちらの方が目のやり場に困ってしまう。奥さんは、それを見ても何にも言わないところをみるといつもの事なのだろう。私達が、プールに来る前から帰るまでずっといたので、日中レストランに行く以外は最低8時間はプールで寝そべっていたのではないかと思われる。

レストランに行かないで、食事とドリンクをプールサイドに持ってきて飲み食いする輩も数多くいる。全ての食事、アルコール、飲料込みなので朝7時から1日中限りなくアルコールを飲めるせいかプールサイドは常にアルコールを片手にしている人達でいっぱいだ。中には、プールの中でも片時もドリンクを離さず飲んでいる人もいる。我が主人は、アルコールは一滴も飲まないし、酒の好きな私でも朝から飲む習慣はない。ランチの時間でもほとんど飲まない。それが飲み放題のバケーションであっても習慣を変えることはまずない。せめてプールの中には飲み物、食べ物を持ち込まないようにお願いしたいのだが、これがバケーションの醍醐味だと言われれば黙って眺めているしかないだろう。

バケーションの間、一歩もホテルの外に出ないので食べるのが大好きな私達には、レストランでだされる食事が楽しみであるのだが、これも少々期待はずれに終わってしまった。メキシコでの同じ系列のホテルは、どのレストランでもほとんどの料理が満足できるもので、毎日の食事が楽しみだったが、ここではどの料理も味がOFFというか何かが根本的に欠けている。それは、私達がニューヨークでいつも美味しいものを食べて舌が肥えているからということでは全くなくて、基本的な料理の味付けが出来ていないだけでなく、使われている材料のチグハグな組み合わせや料理の温度などすべてのチェックポイントが標準に達していないのだ。

昨夜出された料理の一つは、どう見ても食べてみてもハムなのに、レストランのシェフはポーク テンダーロインだと言い張る。まあどちらでも構わないけれど。寿司が出された日もあったが、砂糖の味が強過ぎてシャリがやたら甘い。一口食べてみた巻き寿司の中身は食感といい味といいマヨネーズで和えたマカロニサラダのようで最後まで何かわからずしまいだった。ある時は、ワンタンスープとメニューには書いてあったが、ワンタンは一切入っていなかった。スープを一口啜ってみたところ、お湯に醤油が混ざっているだけのような味付けだった。一応ホテルのレストランなので、どうしたらこのような味になるのか不思議だ。

夕食時には必ずワインを飲むのが楽しみである私は、ホテルのレストランでの最初の夜、ハウスワインの白ワインを頼んだがこれ以上まずいワインは今まで飲んだことがないような代物がでてきた。気分を変えて赤ワインを頼んだところ、よく冷えた赤ワインを持ってきた。白ワインは勿論のこと赤ワインも全部冷えていると自慢げにウェイターは言った。特別にワイン代を払いたくないケチな私はそれ以来毎日よく冷えたハウスワインの赤を飲んでいる。1週間も経つとそんなにまずく感じないようになってきた。慣れとは良いものだ。

これらの出来事を不平不満として受け取っているのではない。私達夫婦は、この後一生この体験を面白おかしく、ことあるごとに笑い話の種にして懐かしく思い出すであろう。どんな体験でも良き思い出に変えることができるのは、ありがたいことだ。このホテルに戻ってくることはないだろうが、プンタ カナの果てしなく続く青い空、フレンドリーでいつも「オラ!」と挨拶を交わすホテルのスタッフ、池に住んでいる三匹の綺麗な淡いピンク色のフラミンゴと数十匹もの大きな鯉。楽しい思い出がまたいっぱいできた。これらの思い出は、どんな高級な料理よりも人生を味わい深く贅沢なものにしてくれる。





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