【Story of Life 私の人生】 第64話:実習生活
こんにちは、木原啓子です。
Story of Life 私の人生
前回は、 第63話:試行錯誤の日々 をお送りしました。
今日は、2年生の実習についてお話ししようと思います。
4月から2年生に進級し、毎日臨床検査センターで引き受けている検体を扱って、実際の検査をすることになりました。
今までは、朝ごはんを食べると「教室で授業」だったのが、実習とはいえども「実戦の場」に入ることになり、基礎実習とは違い、失敗は絶対に許されなくなる事を考えると、かなり緊張しました。
でも、ここまで来たらからには、もう「やるしかない!」
そんな思いを抱きながら、新しいチャレンジのスタートを切りました。
朝早く検査室に行き、当日使用する検査用の試薬や培地を作る当番もありました。
そんな日は、朝6時半に検査室に集合して、朝ご飯の前に作業を終わらせることになります。
先輩と組んで、手順を教えてもらいながら作業するから、そういう意味での不安はないけれど、不器用で自信がないから「足手まといにならないかな」といつも心配で…
実際に色々な失敗をやらかしました。
以前お話ししたことがありますが、メスピペットで「ヒツジの血」を吸いすぎて、飲んでしまうという大失態をやらかしたのはこの頃です(汗)
沢山小さな失敗をしながらも、先生や先輩に色々助けてもらい、教わりながら、毎日新しい事を学ぶことが多くて、刺激的な日々。
緊張しながらも、楽しい毎日を送っていました。
そんな日々を過ごし、数ヶ月が経ったある日のこと。
実は、かなり大きな失態をやらかしてしまいました(汗)
先生から、コレステロール検査用の試薬(ズルコウスキーという、とてもインパクトが強い名前だったから、今でも鮮明に覚えています)を作るように言われました。
この試薬は「硫酸」を使います。
「硫酸」と「塩酸」は危険な薬品だから、棚の位置が180度反対方向に離れていました。
私は、当然「硫酸棚」から、薬品の瓶を1本持ってきて、チャンバーの中に大きなフラスコを入れて、色々な薬品を入れて混ぜ始めたのですが…
その頃は、毎日同じ試薬を作っていたから、試薬を入れる順番や手順は絶対に間違っていないはずなのに、その日は何かがおかしい…
フラスコの中に、大きな気泡と煙が出てきたと思って眺めていたら、気泡のボコボコがどんどん大きく速くなっていき、数秒後にチャンバーの中で「ドカン!」と大きな音を立てて爆発してしまいました(驚)
私は、咄嗟にチャンバーの前から逃げたのですが、近くにいた割と高齢の女性の先生が、爆発音に驚いて転んでしまい、腰を強打してしまいました。
先生は自力で起き上がることが出来ず、結局は救急車を呼ぶ羽目になってしまいました(泣)
私は呆然とするだけの状態で、先生が救急隊員の方に運ばれているのをただただ眺めているだけでした。
余談ですが、先生は数日入院され、翌週コルセットをして現場に復帰されました。
話を元に戻します。
検査室の他の場所にいた皆さんも驚いて、私の周りに集まって来ました。
センター長の先生が「何が原因なのかを調べよう」とおっしゃり、私が持ってきて使った薬品などを点検しました。
「硫酸」を持ってきた筈なのに、実は「塩酸」だったのでした!
先生から「間違って塩酸棚に行ったのでははないか?」と疑われたのですが、「硫酸棚と塩酸棚は反対方向だから、絶対に間違っていない筈だ」と主張しました。
幸い、硫酸棚で瓶を持っていった時にいた先輩がいて、先生に説明して下さったので、私が棚を間違えたという疑いは晴れたのですが(汗)
が、そうなると、誰かが間違って「塩酸」を「硫酸棚」に置いてしまったことになります。
それが何時だったのか、誰がやったのかというような「犯人探し」まではしませんでしたが、検査室の教訓として「薬品を持ってくる時は、どの棚にあっても必ずラベルの確認する」ということになりました。
私は確かに「硫酸棚にあるから、絶対に硫酸だ」と信じ込んでいたから、「ラベルの再確認はしなかった」訳で、その部分については大いに反省しました。
爆発だけではなく、毒ガスの発生など、人命に関わる危険もありますから、その時から「何事も信用せず、しっかり確認しなくては」と、肝に銘じました。
当然ですが、翌日からは、最低3度はラベルを確認するようになった事は、言うまでもありません。
その日以降、私は、学校だけではなく、寮全体で「検査室で爆発起こして、先生を病院送りにした人」ということで、かなり有名人になりました(汗)
あれから40年経ちますが、もしかすると後にも先にも、こんな事件は起きていないだろうなぁと思います。
こんな事件があったからこそ、尚更「ズルコウスキー」という名前を、一生忘れることが出来ません。
一方、楽しい実習生活とは裏腹に、体調不良はどんどん進んでいきました。
夏休み少し前のある日、突然扁桃腺が腫れて、高熱が出ました。
身に覚えがある「症状の再発」に、正直なところかなり怯えました。
今回は、最初から副作用の再発を疑っていたから、まず病院に連絡してから、入院することを想定して、念の為必要なものを全て準備して、電車で病院に行くことにしました。
寮と学校の先生にお話しし、親にも連絡して、病院に向かいました。
薬を変えてから8ヶ月目のことでしたが、検査の結果は、案の定「無顆粒球症」の再発で、今回も個室の無菌室に入院することになりました。
覚悟はしていたものの、こんな形で2度目の無菌室生活がスタートしたのでした。
〜続く
今日はここまでです。
次回は、第65話:2度目の試行錯誤 に続きます。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
またお会いしましょう♪